118F29
正解:c
解説
インスリンは、血糖降下作用を有する重要なホルモンである。インスリンの主な作用は、肝臓、骨格筋、脂肪組織における糖代謝の調節である。選択肢の中で、インスリンの作用として誤っているのは、「脂肪細胞での中性脂肪分解促進」である。
a. 肝臓での糖新生抑制:インスリンは、肝臓における糖新生を抑制し、血糖の上昇を防ぐ。
b. 肝臓でのグリコーゲン合成促進:インスリンは、肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、血糖を貯蔵する。
c. 脂肪細胞での中性脂肪分解促進:インスリンは、脂肪細胞における中性脂肪の分解を抑制し、脂肪の蓄積を促進する。
d. 骨格筋でのアミノ酸取り込み促進:インスリンは、骨格筋におけるアミノ酸の取り込みを促進し、タンパク質合成を促す。
e. 骨格筋でのグルコース取り込み促進:インスリンは、骨格筋におけるグルコースの取り込みを促進し、血糖の低下を促す。
以上より、インスリンの作用で誤っているのは、「脂肪細胞での中性脂肪分解促進」である。
考察
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されるペプチドホルモンである。インスリンの分泌は、血糖値の上昇により促進される。インスリンは、肝臓、骨格筋、脂肪組織に作用し、血糖の恒常性維持に重要な役割を果たしている。
インスリンの主な作用は、以下の通りである。
肝臓での糖新生の抑制とグリコーゲン合成の促進
骨格筋でのグルコース取り込みの促進とグリコーゲン合成の促進
脂肪細胞でのグルコース取り込みの促進と中性脂肪合成の促進
タンパク質分解の抑制とアミノ酸の細胞内取り込みの促進
これらの作用により、インスリンは血糖値を低下させ、エネルギー基質を貯蔵に導く。
インスリンの作用不足や感受性の低下は、糖尿病の病態の中心をなす。1型糖尿病では、自己免疫機序によるβ細胞の破壊により、インスリン分泌が枯渇する。2型糖尿病では、インスリン抵抗性とインスリン分泌不全が併存する。いずれの病態でも、高血糖と代謝異常を引き起こす。
糖尿病の治療の基本は、インスリン作用の補充と増強である。1型糖尿病では、インスリン補充療法が必須である。2型糖尿病では、生活習慣の改善とともに、インスリン抵抗性を改善する薬剤(ビグアナイド、チアゾリジン薬など)やインスリン分泌を促進する薬剤(SU薬、グリニド薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)が用いられる。病状の進行に伴い、インスリン療法が導入される。
インスリン療法では、生理的なインスリン分泌パターンを再現することを目指す。持効型インスリンと超速効型インスリンを組み合わせた頻回注射療法や、インスリンポンプによる持続皮下インスリン注入療法(CSII)などが行われる。血糖自己測定に基づく適切なインスリン用量の調整が重要である。
インスリンは、生命維持に不可欠なホルモンである。インスリンの作用機序を理解し、病態に応じた適切なインスリン療法を提供することが、糖尿病診療に携わる医療者に求められる。同時に、患者教育を通じて、患者自身のセルフケア能力の向上を図ることも重要である。インスリンの発見は、糖尿病患者の予後を劇的に改善した。今日では、様々な病態に対応した インスリン製剤や投与法が開発されている。医療者は、常に最新の知見を学び、evidence に基づいた質の高いインスリン療法を実践していくことが求められる。
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