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72 歳の女性。右膝痛を主訴に来院した。3 か月前から右膝関節の痛みを自覚した。安静時痛はないが、歩行開始時や階段昇降時に右膝痛が強くなる。身長 152 cm、体重 67 kg。体温 36.3℃。右膝関節に軽度の腫脹を認めるが、熱感や発赤はない。右膝内側に圧痛を認める。右膝エックス線写真を別に示す。
保存療法で適切なのはどれか。3 つ選べ。
a  運動療法
b  減量指導
c  ギプス固定
d  装具の作成
e  グルココルチコイド内服

第118回医師国家試験

正解:a,b,d

解説

a. 運動療法:変形性膝関節症の保存療法において、運動療法は重要な役割を果たします。適度な運動は、関節可動域の維持・改善、筋力の強化、痛みの軽減などに有効とされています。本症例でも、運動療法は適切な治療選択肢の一つと考えられます。

b. 減量指導:変形性膝関節症では、肥満が重要な危険因子の一つとされています。体重増加により膝関節にかかる負荷が増大し、関節軟骨の変性や炎症が促進されます。本症例でもBMI 29.0 kg/m² と肥満があり、減量指導は適切な治療選択肢の一つと考えられます。

c. ギプス固定:変形性膝関節症の急性増悪期には、安静が必要な場合がありますが、長期のギプス固定は関節拘縮や筋萎縮を招く可能性があるため、適切とはいえません。本症例では安静時痛がなく、ギプス固定の適応はないと考えられます。

d. 装具の作成:変形性膝関節症では、内側型や外側型の関節裂隙の狭小化に伴う内反・外反変形が生じることがあります。このような場合、装具療法により膝関節への負荷を軽減し、痛みの改善や変形の進行抑制が期待できます。本症例でも、内側型の変形性膝関節症が疑われ、装具の作成は適切な治療選択肢の一つと考えられます。

e. グルココルチコイド内服:変形性関節症の治療において、グルココルチコイド内服の有効性は限定的であり、長期使用による副作用のリスクも懸念されます。変形性膝関節症の急性増悪期には関節内注射が考慮されることがありますが、全身投与は一般的ではありません。本症例では、グルココルチコイド内服は適切な治療選択肢とはいえません。

以上より、本症例で保存療法として適切なのは、a.運動療法、b.減量指導、d.装具の作成の3つであると考えられます。

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