118A25
正解:e
解説
a. 水痘は妊娠初期の感染で先天性水痘症候群を引き起こすが、本症例では妊娠15週の感染であり、胎児発育不全の原因としては考えにくい。
b. 梅毒は妊婦検診で RPR、TPHA ともに陰性であり、否定的である。
c. 風疹は妊婦検診で風疹 HI 抗体価が128倍と高値であり、既感染を示唆する。急性感染は否定的である。
d. B型肝炎は妊婦検診で HBs 抗原陰性であり、否定的である。
e. サイトメガロウイルス感染症は妊娠中の初感染や再活性化により、胎児発育不全、腹水、石灰化などを引き起こす。本症例では妊娠15週の感冒様症状がサイトメガロウイルス感染を示唆しており、胎児所見と合わせて先天性サイトメガロウイルス感染症が最も考えられる。
考察
妊娠中の感染症は、母体への影響だけでなく、胎児への垂直感染により先天異常や発育障害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。特に風疹、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、梅毒などは先天感染の原因として重要である。
サイトメガロウイルスは妊娠中の初感染率が高く、先天感染を引き起こす最も頻度の高いウイルスである。多くは不顕性感染であるが、重症例では胎児発育不全、腹水、脳室拡大、石灰化などを認める。出生後は難聴、発達遅滞、視力障害などの後遺症を残すことがある。
妊娠中のサイトメガロウイルス感染が疑われる場合は、母体血清中のウイルス抗体価測定や PCR 法によるウイルス DNA 検出などで診断を確定する。胎児感染が疑われる場合は、羊水検査や脳室周囲石灰化の有無などを評価する。
現時点では、サイトメガロウイルス感染に対する予防法や治療法は確立されていない。ワクチンの開発が進められているが、実用化には至っていない。妊娠中は、手洗いの励行や濃厚接触の回避など、感染予防に努めることが重要である。
先天性サイトメガロウイルス感染症は、早期発見・早期介入により、聴力障害などの後遺症を最小限に抑えることが可能である。新生児聴覚スクリーニングなどを活用し、慎重なフォローアップを行うことが肝要と考えられる。
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