118B40
正解:c
解説
本症例は、妊娠32週の初産婦に発症した重症妊娠高血圧腎症(preeclampsia)が疑われます。重症妊娠高血圧腎症は、以下の特徴を有します。
妊娠20週以降に発症する高血圧(収縮期血圧≧160mmHg または 拡張期血圧≧110mmHg)
蛋白尿(2+以上)
全身症状(頭痛、視覚異常、上腹部痛、肝機能障害、血小板減少など)
本症例では、収縮期血圧156mmHg、拡張期血圧102mmHgと高血圧を認め、頭痛、眼のちかちかする感じ(眼華閃発)、上腹部痛、浮腫、尿量減少などの全身症状を伴っています。
重症妊娠高血圧腎症では、血小板減少が特徴的な所見の一つです。これは、血管内皮障害により血小板が活性化・消費されるためと考えられています。
各選択肢について:
a. LD(乳酸脱水素酵素): 重症妊娠高血圧腎症では上昇することがありますが、特徴的な所見ではありません。
b. AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ): 重症妊娠高血圧腎症に伴う肝機能障害で上昇することがありますが、特徴的な所見ではありません。
c. 血小板数: 重症妊娠高血圧腎症では血小板減少が特徴的な所見です。血管内皮障害により血小板が活性化・消費されるため低下します。
d. ヘマトクリット値: 重症妊娠高血圧腎症では血液濃縮により上昇することがあります。
e. 尿蛋白/クレアチニン比: 重症妊娠高血圧腎症では蛋白尿を認めるため上昇します。
考察
重症妊娠高血圧腎症は、母体と胎児の両方に重大な影響を及ぼす可能性のある疾患です。早期発見と適切な管理が重要となります。重症妊娠高血圧腎症が疑われる場合、血圧コントロール、子癇予防(硫酸マグネシウム投与)、胎児モニタリングを行いながら、適切な時期に分娩を誘導する必要があります。また、分娩後も高血圧や臓器障害が遷延・増悪することがあるため、慎重な経過観察が必要です。重症妊娠高血圧腎症の管理には、産科医、新生児科医、麻酔科医などの多職種によるチーム医療が求められます。
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