118A50
正解: c
日本語訳
解説
本症例は85歳女性の左大腿骨頸部骨折後に生じた左足関節の運動低下と感覚障害である。左下肢が外旋位であることから、大腿骨頸部骨折による腓骨神経の障害が最も考えられる。
a. 脳梗塞:急性発症の片麻痺を呈することがあるが、感覚障害は生じにくい。また、大腿骨頚部骨折との関連性は乏しい。
b. 腰椎椎間板ヘルニア:腰部神経根の圧迫により下肢の疼痛や筋力低下を生じるが、足関節の背屈障害は非典型的である。
c. 腓骨神経麻痺:腓骨頭部での圧迫により生じ、足関節の背屈障害と足背部の感覚低下を呈する。大腿骨頸部骨折に伴う下肢の外旋により腓骨神経が牽引され、麻痺を生じたと考えられる。
d. 深部静脈血栓症:下肢の腫脹と疼痛を主徴とし、足関節の運動障害は生じない。
e. アキレス腱断裂:足関節底屈の障害を呈するが、足背部の感覚は保たれる。外傷の既往が無い本症例では考えにくい。
以上より、本症例で最も考えられる左足関節運動低下の原因は、腓骨神経麻痺である。
考察
大腿骨頸部骨折は高齢者に多い骨折であり、転倒などの軽微な外傷を契機に発症することが多い。骨折により下肢が外旋位となることで、腓骨神経が牽引され麻痺を生じることがある。
腓骨神経は脛骨神経と共に坐骨神経から分岐し、腓骨頭の後方を回り込んで下腿外側を下行する。腓骨頭部は解剖学的に骨性の隆起であるため、牽引や圧迫を受けやすい。腓骨神経麻痺では、足関節の背屈障害と足背部の感覚低下を生じる。
大腿骨頸部骨折に伴う腓骨神経麻痺は、骨折の整復により改善することが多い。しかし、高齢者では筋力の回復が遅延することがあり、歩行能力の低下につながる恐れがある。リハビリテーションにおいては、足関節の他動運動や筋力増強訓練などを行い、歩行能力の維持・向上を図ることが重要である。
大腿骨頸部骨折は、高齢者の生活の質を大きく損ねる疾患である。早期の手術療法とリハビリテーションにより、合併症を予防し、歩行能力を維持することが肝要である。腓骨神経麻痺などの合併症にも注意を払い、適切に対応することが求められる。
高齢者医療においては、整形外科、リハビリテーション科、神経内科など多職種の連携が不可欠である。患者の全身状態や社会的背景を考慮しつつ、最善の治療方針を立てることが重要と考えられる。
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