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読書日記-4 久米絵美里「3倍速ドッペルゲンガー」

2025年2月16日、日曜日、くもり

今年4冊目の本は久米絵美里さんの「3倍速ドッペルゲンガー」©️アリス館だ。

久米絵美里さんの「3倍速ドッペルゲンガー」©️アリス館
裏側

 この本は朝日中高生新聞に連載されていたものを書籍化した本になる。この本は本屋でタイトルに惹かれて手に取った。ドッペルゲンガーで3倍速?なんだそれ? 普通はそう思いますよね。ボクも何のことか全くわからなかったので、見てみたくなった。その意味ではなかなかタイトル強い。我が家は朝日新聞はとっていないし、中高生の子供もいない。なので本屋に行くまでこの本のことは全く知らなかった。

 あらすじは「ドッペル再生」という技術がコアになる物語だ。ドッペル再生とは、アプリで頭脳から体までくまなくスキャンすると、その瞬間の自分が原子レベルまでデータ化されて、その時の自分の思考や体調を完全に再現可能な形で、まるで自分の分身(ドッペルゲンガー)の状態でアプリに登録される。それをその時の社会情勢や周囲の状況と組み合わせることにより、この後に起こることを動画を再生する形で自分の未来の行動とその与える影響を見ることができる。最大で3倍速で予測される未来の動画を見ることができるので、世界中の多くの人がまずはドッペル再生で未来を見て、その結果を元に今の自分の行動を修正したり、未来を予測するようになった。もちろん、その未来を見て行動を変えるので、厳密にはそのスキャンした瞬間の自分の未来からはズレが生じるが、大きくは変わらないと考えられている。例えば、作品の冒頭に出てくるように、高校生が小テストの前の日にドッペル再生をして、自分のテストの予測をしながら追加で効率的に勉強をしたり、何かの行動をする前に、その評判をまずは見てからやるかどうか判断の基準とすることもできる。ただし全てが見えるわけではなく、自分の目を通して見えるものに限られる、また、1回のみの再生だけで、巻き戻しやもう一度見ることはできないという縛りがある。だからあたりの宝くじが見えるとかいうわけではない。(多分)

 そんなわけで、自分が傷つきたくない、失敗したくないの思いから、今ではドッペル再生で未来を見てから、行動を決定するのが誰しもが必須の世界となっている。

 今回の話の舞台は、ある高校1年生で同じクラスメイト、クラスのお調子者の男子(矢野)、SNSでフォロワーがたくさんいるインフルエンサーの女子(有空:ありあ)、SNSやドッペル再生にちょっと斜に構えている女子(琴子)、大学入試のために効率的な勉強をするためにドッペル再生を使用している合理主義者の男子(六反田)、そして何事にもかかわらずに平穏に暮らしてるこの話の主人公(明人:めいと)の5人があるとき、「ドッペル再生禁止(ドッ禁)」してみようと思いつき、夏休みの始まる時期に合わせて、誰が最後までドッ禁できるか競い合うことになる。果たしてどこまで自分の未来を見ないで自分らしく行動できるのか、彼らの試みが始まった・・・

話は夏休みに琴子の家に集まってドッペルについて語り合う会の時に大きく動く。
途中からは少しミステリ風に話は展開し、最後は急展開、主人公、明人により謎解きが行われる。

2時間ほどで読み終えた。

 感想だけど、まず、ドッペル再生。なんか新しい概念だなぁと思った。未来を予測できるといっても、見ても実力以上のことはそうそうできないし、テストのカンニングができるわけでもないけど、あれば見たくなっちゃうよなぁ、単純にそう思う。ボクも多分見るだろうし、頻繁にスキャンして細かく予測してしまうかも。でも最大で3倍速、というのがミソで、3日先の未来を予測するにも再生に1日は時間がかかる。1年先までみるのだったら4ヶ月見ないとならない。10年先だったら4年見なきゃならない。だからわりとすぐ目先の未来に使うんだろうな。えー、何を見たいかな。明日のお弁当の予測とか、それじゃつまんないか。スポーツの結果とかも実際のプレイヤーじゃないから厳密な予測とかできないだろうし。長時間見るのもしんどいしなぁ、せいぜい3時間くらいで飽きちゃうだろうし、二度見れない縛りがあるからなぁ。めんどくさくなっちゃうだろうなぁ。

うん、やっぱり興味はあるけど使わないかもしれない。自分らしく生きるのには必要ないかもしれない。でも面白そうではあるけどね。迷うところだ。

文体は若い人向けで少しついていけない略語とかもあって、オジサンにはきついところがしばしばあるけど、若い人にはハマるんだろうなぁ。でも話自体は考えさせられる内容だし、面白かったと思います。

ということで、今回は「3倍速ドッペルゲンガー」でした。またね!

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