読書日記-1 雪舟えま「地球の恋人たちの朝食」
2025年1月5日、日曜日、くもり、読書日記、1回目の本は雪舟えま「地球の恋人たちの朝食」(ハードカバー、左右社、3000円)だ。タイトル絵は雪舟えまさんのサインだ。
読み終わった感想は、詩とは言うけど小説的で型破りでポップで、あっという間に見たことのない世界に連れて行ってくれる、”愛の”文だと思った。本当に別世界に行けるよ。
この本に出会ったのは年末迫る12月14日。たまたま寄った本屋にサイン本と帯にあり目に留まった。帯には、”歌人・雪舟えまによる伝説の最初期作品集、20年の時を経てついに刊行” とある。さらに、<<あたしは地球の数倍重力の強い星からきた女だ 地球人の数倍重い夢に耐えられるようにできているはず>>と紹介があり、解説の穂村弘氏によれば、「これはもう言葉の超常現象ではないか。そして、未来の誰かのための聖書」とある。サイン本のため中身は見れなかったけど、ポップな装画(タカノ綾)に惹かれた。
本の裏の装丁にはこの本の出だし部分が抜き出されている
詩はそんなに読むわけじゃないけど、全く寄せ付けないかんじもないので、買ってみたのが大正解。全編を通して形と時代と人物を変えて囁かれているのは。愛そのものだった。それは愛しいあの人だったり、この星地球だったり、黒うさぎだったりする。
この作品はWEBで2001年から2008年まで書かれた日記というべきもので、実に16年の歳月が過ぎて書籍化された。その当時から読んでいた人も待っていたと思うし、初めて読むボクのような人間にも、作品の斬新さが驚きである。
半ば小説風に進むが、登場人物は多い。宇宙人ヴァニラウエハーの案内で、全てを捨てて小さなリュック一つで地球を後にする”まみ”と黒ウサギ。実はこれは冒頭の話だけど、この脱出は全体の最後の話でもある。他にも同じく脱出した別の女子高生バスキアの話や、とにかく登場人物は多い。そして小説かつ詩でもあるので文体が自由だ。宇宙に行くと言う話と、愛と、独特の文体。これは間違いなく非日常の世界に連れて行かれる。
雪舟えまさんは74年生まれだから、ボクより少し若い。その人となりはこの本でしか知り得ないが、その才能には憧れでしかない。ボクもこういうセンスを身につけたかったな。
ボクが心に残った文がある。(2004/04/06 「モンシロチョウの卵色の液」)
宇宙からきた惑星脱出の仕事をするヴァニラウエハーが、まみにこう言った。
自分の状況に重ね合わせてしまう。
ボクの元にもヴァニラウエハーが現れたら、どう決断するだろう?
ボクごときではこの本の素晴らしい点をアピールするには役不足だろう。もっと知りたい人は、いろいろ調べてほしい。ただ、いまの2025年のボクに、この本は刺さった、ということだけ伝えたい。
というわけで第1回の読書日記。こんなボクの文など読む価値などないかもしれないけど、紹介した本に少しでも興味を持ってもらえれば、それが幸せです。
じゃあまたね