小さな恋の行方 フォークダンス作戦 【 いにしえの高校時代 6 】
カップルが多いと言われる高校だった。
「小さな恋のものがたり」(みつはしちかこ著) のようなホンワカしたカップルである。
だが、私の周辺では、ほとんどが片思いでカップルはまれだった。私たちは、可愛いカップルに憧れたり、まだカップルではない生徒たちを応援しようとお節介をやいたりしていた。
廊下ですれ違うとき、いつも熱い視線で見つめあう二人がいた。同じクラスの女子 (A子ちゃん) と他組の男子 (B男くん) である。両想いがバレバレだ。どちらもシャイで言葉を交わしたことは無かった。
そこで、A子ちゃんの同級生の女子たちは考えた。
まもなく体育祭の練習でフォークダンスがある。各クラスごとに輪になって踊るのだ。
その時、A子ちゃんをB男くんのクラスの女子の輪に紛れ込ませる作戦だ。二人が手を取り合って踊ることができるようにである。
決行の日、A子ちゃんを、B男くんのクラスの女子のところへ連れて行った。
バッチリだ。やっと恋する二人が近づける。恋が成就するかもしれない。とりあえず一歩前進だ。
A子ちゃんの同級生は、フォークダンスが始まるのをドキドキワクワクしながら待った。
音楽が鳴り始めた。
B男くんとA子ちゃんはいつ頃めぐり合うだろう。
B男くんのクラスの輪をちらっと見た。
えっ?
B男くんがいない…
なんで?
まさかと思い近くを見ると、A子ちゃんのクラスの男子の輪の中に混じって、B男くんがしょんぼり立っていた。
なんてこと…
B男くんのクラスの男子も、二人のじれったい恋心に気が付いて手を貸そうとしたのだ。全く同じ作戦を考えるなんて…
作戦は失敗して、この日も二人は遠くから見つめあうだけだった。
「報 連 相」
これが大事なのは、社会人だけではなかったのだ。