みんなで授業を抜け出した日 【 いにしえの高校時代 2 】
一週間に一度、ロングホームルームという話し合いの時間があった。
退屈である。
そこで、私たちのクラスでは、「裏山に登って遊ぼう」とか「池にボートに乗りに行こう」という案が出るのだが、すぐに賛成多数で実行に移されていた。
担任は、余計な口出しをせず、生徒の意見を尊重して自由にさせてくれる教師だった。
高校は、新興住宅街の上にあった。住宅街の先の山を切り拓いた場所である。
周りには何もない。
高校と住宅街は数百メートル離れていて、その間にあるのは、水の流れていない雑草だらけの河原とゴルフ場だけだった。
校内で振り返れば裏山だ。
ある日の授業中、教師が窓の外をジッと見ているので視線を追ってみると、裏山のすそにチョコンと座って、何かを熱心に読んでいる男子生徒が見えた。
本人はうまく隠れているつもりである。
彼は落語研究会所属で、まもなくある文化祭に向けて落語を覚えているところだった。
教室に座っているべき生徒が裏山に座っているのだが、教師は事情を察して見なかったことにした。
さて、ロングホームルームである。
裏山は高校のすぐ裏なので一時間遊んでも余裕だったが、池は遠く離れた場所にあった。
高校よりさらに山の上にある池まで、ゆるい坂道をみんなで遠足のようにトコトコのぼって行った。
そして、ボートに乗った後、真面目な女子は急いで教室に戻ることにした。一時間でちゃんと行って戻って来たのだ。
でも、男子はそのまま夢中で遊んでいて戻って来なかった。
男子全員が次の授業を欠席である。
女子しかいない教室は、さながら女子高のようだった。
次の授業の教師は、教室の扉をガラッと開けて、入り口で呆然と立ち尽くした。
「…えっ?……男子は?………」