修学旅行でバスガイドさんが泣いた理由(わけ) 【 いにしえの高校時代 5 】
高2の秋、修学旅行に出発した。
観光地をバスで巡る旅だ。
現地のバスガイドさんは、若くて初々しい女性だった。名所の説明をしたり歌ったり一生懸命である。
しかし、反抗期の男子たちはバスの後ろ半分に陣取って、勝手に騒いでいた。バスガイドさんを完全無視である。
バスガイドさんは、泣きそうになりながらも必死でガイドの仕事を頑張っていた。
女子たちはまじめなので、バスの前半分に座り、男子の分まで前のめりになりながら、熱心に説明を聞き、一緒に歌い、精一杯バスガイドさんを盛り立てた。
バスガイドさんに案内され訪れる観光地は、どこも楽しかった。
また、同級生たちと旅館で過ごす時間は格別であった。
そして、瞬く間にやってきた旅行の最終日、バスはお土産物屋さんの前にとまった。家族や友人たちへのお土産を買う楽しいひと時だ。それぞれ相手の顔を思い浮かべながら予算内であれこれ買い物をした。
お土産を手に集合場所に戻ってみると、
バスガイドさんが泣いている!
大変だ!
男子が何かしでかしたんだろうか。
女子たちはバスガイドさんに駆け寄った。
バスガイドさんは、泣き笑いしながら話してくれた。
なんと、男子たちがお金を出し合って、バスガイドさんにプレゼントを買ったそうだ。
バスガイドさんは、ここ数日とのあまりのギャップに驚くと同時に嬉しくて感涙してしまったらしい。
年上の女性を泣かす男子たち、恐るべき弱冠17歳。
こうして熱心に協力した女子たちよりもはるかに強い印象をバスガイドさんに残して、一行は帰路についたのだった。