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「女心の歌」攻略 01

テノールの有名なアリアの中に
「女心の歌」
という曲がある。

ヴェルディのオペラ
『リゴレット』の挿入歌で
ヒロイン・ジルダの
恋人(?)役である
マントヴァ公爵によって歌われる。

さて、この曲の攻略法だが、
まず最初に頭に入れておかねばならぬことは
以下の3点となる。

1.歌っているのは貴族、ノービルであること。
2.歌う場面では、身分を偽り将校に変装していること。
 (勿論、その目的は身分の低い庶民の女=マッダレーナを口説くため)
3.マッダレーナは表れていないが、既にゲームの場に立っていること。

1の「貴族」というのは、
歌唱スタイルそのものに影響する。

どれだけ身分を偽ろうと、
身につけた貴族の振る舞いというものは
簡単に崩れたりはしない。

オペラの舞台において
変装が「衣装」と「しぐさ」で
表すものであるなら、
その役の本質である「貴族性」は
「声」と「歌唱スタイル」で
表すことになるのだ。

バレエダンサーに
「王子タイプ」がいるように、
オペラ歌手にも
「王子の声」を持つ歌手がいる。

ドミンゴ、カレーラス、パヴァロッティの
「3大テノール」で例えるなら、
王子タイプの声の持ち主は
パヴァロッティに代表されるだろう。

ドミンゴは、迫力はあるのだけれど
「声」そのものは超のつく美声ではない。

それゆえ彼は
「性格(キャラクター)」の作り込みによって、
その演奏を聴かせるタイプとなる。

カレーラスはどうか?

カレーラスは十分に美声であると言えるが
「王子タイプであるか否か」と問われるならば
「否」と答えるしかないだろう。

どちらかというと彼は
「王様・王子様」タイプではなく
一段下の「悩める貴族」「悩める若者」が
一番似合うタイプではなかろうか。

「マントヴァ公爵」よりは
田舎貴族の「アルフレード」の方が、
「悩める若者」を前面に出すことで
「ドン・カルロ」もキャラが合致することになる。

「仮面舞踏会」のリッカルドは・・・
・・・パヴァロッティに軍配が上がりそうだな・・・

このように
「王子」タイプの声を持っているなら
その声の特質を最大限活かす歌い方を、
別タイプの声の持ち主であるならば、
声質ではなく「歌唱スタイル」で
公爵であり領主であるマントヴァ公の
キャラを表現する必要が出てくる。

これは似ているようで全く違うもの。

両者を混同させて
「こんなものだろう」と大雑把に扱うなら
演奏もそれに見合った程度の
大雑把なものに成り下がるだけ。

ゆめゆめお忘れなきように・・・


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