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地方自治体や観光団体のデジタルマーケティング

小坂です。

2000年からデジタルマーケティング業界で仕事をし、会社経営・フリーランス・会社員と立場を変えながら続けてきました。
専門はウェブ解析で、SNSマーケティングやデジタル広告運用、ウェブディレクション、コンサルティングなどを行ってきました。

2018年に東京から札幌へ拠点を移し、多くのDMOや観光協会、自治体のマーケティングに関する仕事をしてきました。
その経験から地方自治体や観光団体のマーケティングを担う担当者やその上司に役立つ内容をピックアップしてまとめています。

例を画像で紹介しているところもあります。


1.事業分析

SWOT分析

敵を知り己を知れば百戦危うからずといいますが、特に地元に愛着があると特徴を見失いがちで、「なりたい姿」先行になる傾向があります。
そうなると適切でない施策になりがちです。
SWOT分析に限りませんが、分析や施策立案、検証を行う際には「MECE」に考える癖をつけてください。
MECEというのは漏れなくダブりなくという意味で、バランスよく洗い出したうえで決めていくために必要な考えです。
思い込みや願望は分析の敵です。

クロスSWOT分析はSWOT分析の交わるところで方針を考えるものです 2019年にある地域を想定して書いたクロスSWOT分析です。

4C分析

4C分析は「Customer Value」「Cost」「Convenience」「Communication」の4つを分析します。
これは顧客(利用者)目線で価値やコスト(お金以外も含む)、利便性、コミュニケーション手段を分析するものです。
4P分析が企業視点であるのに対して、利用者視点で考えます。

観光であれば、コストには交通や宿泊、アクティビティ費用以外に、調べる時間なども含まれます。
コミュニケーション手段にはチャットなどデジタル手段も含まれます。
こういったものはデジタルマーケティングにも関連します。
それらの負担を減らすことが重要だからです。

2.事業計画

マーケティング計画書

マーケティング計画書は必ず作ってください。
目的は二つです。
一つ目は将来の目安を立てることで予算編成や行動計画につなげること、
二つ目は検証するためです。計画書がないとうまくいっているのかどうかもわかりませんし、傾向もつかめません。

マーケティング計画書はビジネスモデルに合わせて内容を変えましょう。

私がデジタルマーケティングの支援をする際に最初に作成することが多いのがマーケティング計画書です。
関係者の目標や施策との関連性が明確になります。

SNS運用企画書

SNS運用企画書は関係者で運用の目的ややり方を共有し、運用をスムーズにするためのものです。
項目は下記です。

  1. 運用目的

  2. ターゲット

  3. 利用するSNSと目的との関係

  4. 指標

  5. 集客手段

  6. 運用方針・投稿頻度

  7. ベンチマークすべき参考アカウント

  8. 緊急時の対応

  9. 運用担当者・運用責任者

  10. 運行開始後の投稿案(2週間)

運用企画書は定期的に見直します。

私がSNSの運用コンサルティングをする際は最初にSNS運用企画書を一緒に作成します。

3.ウェブサイトの作り方

コンテンツ IS KING

Content is King,
Design is Queen,
But Don’t Forget the Marketing Prince

Aidan Huang

デジタルマーケティングの世界では上記のように言われています。
最初にContent is Kingを言い出したのはビル・ゲイツです。
そこにAidan Huang氏が付け足したものです。

この3行に対する私の解釈は下記です。
コンテンツが重要。質や頻度が保たれないと人は定着しない。
しかしデザインに課題があると見てくれない。デザインはコンテンツを手助けする
しかし、それだけでは不十分でマーケティングがないと人が来ない

お店で例えると
品揃え・接客=King
レイアウト・看板=Queen
広告・チラシ=Prince
となります。

コンテンツを先に考え、それに合わせてデザインやマーケティングをすることが大切です。
DMOや観光協会であれば、最新情報、イベント情報、アクセス情報、地域産業などの情報がコンテンツです。これらのコンテンツをまずしっかり作り、更新し続けることが最も大事です。
デザインはそれらが読まれやすくするためのものです。
マーケティングもコンテンツと連動して考える必要があります。

しかし実際にはデザインが先行しコンテンツが伴っていなかったり、更新性を落としているケースを多々見ます。

デザインはしてページも形式的には作ったものの、comming soonが多かったり、更新頻度が低かったり、更新する都度デザインが崩れていったり、デザインが目立ちすぎているウェブサイトを多々見ますが、失敗例が多いです。
成功(=目的を達成)するためにはまずコンテンツです
これを最初だけではなく更新し続ける体制も含めて最初に考えてください。
SNSの運用もコンテンツありきです。

コンテンツの作り方

前段のSWOT分析、4C分析、マーケティング企画書等から導き出します。
観光に限りませんが、人が共感したり感動する要因に「ギャップ」があります。
想像以上に良かった、いい意味で違ったなどがギャップです。
地元の人にはさほど評判が良いわけではないのに、観光客に受けているものはそのギャップがあるからです。

分析の中で、自分たちの特徴をまず洗い出しましょう。
コンテンツを考える際に有効な方法に「ロジックツリー」があります。

なんらかの軸でMECEに分解することでニーズをとらえたコンテンツを作成できる

ページの構成

ページの構成は人の目、AIの目で考えるようにしましょう。
人の目はページを読んでいき共感や理解するために必要なことですが、AIの目も大事です。
検索結果にどのように表示されるか、SNSで画像がどのように出るかなどページに来る前に対する影響もありますし、評価(=順位)にもつながります。
サイト構成(どのようなページを作るか)だけではなく、各ページの構成イメージも先に考えてページを作ってください。
大事なのはページの冒頭にそのページを示すサマリ文とイメージ画像を入れることです。

上に大事なこと

更新を考えてサイトを作る

更新しやすさは最優先事項の一つです
新着情報だけではありません。

  • 時期によってレイアウト(配置)を変える必要はあるか

  • トップページなどに掲載する数の変更

  • メイン画像などの変更

  • 緊急情報の掲載

  • 定期的に変わるもの

このように様々な更新があり、それらをどのように更新し表示するかを考えながら作ってください。
そのため、制作会社に全部丸投げすることはせず、一部のページ登録は自分達でも制作時に一部やってみる、原稿はある程度自分たちで書いて専門家に直してもらうなどすることをお勧めします。

そうすると、更新の方法を議論できたり、慣れることができスムーズに更新に移行できます。
例えば制作会社(プロ)が全部画像を作った結果、自分たちが更新画像を作れないということも起きる場合があります
ウェブには納品がありません。校了はないのです。
納品なきウェブサイト運営と言います。

例えば、画像作成ツールをCANVAやAdobeExpressのような比較的容易に使えるツールで作成するなど自分たちが更新することを前提に要望を出すことも検討してください。
内容が変わっていくことを前提に機能を決めてください。
例えば新着情報一つとっても、数の制約をするのか、表示件数を何件にするのか、表示の優先順位をどうするのか。こういうことはウェブサイトの作り方にも影響しますので、早めに提示してください。

ドメイン

何かイベントをしたり、新規サイトを作るたびに新規ドメインを取得する組織がありますが、やみくもにドメインを増やすことはお勧めしません

定期的に話題になりますが、一過性のサイトでドメインをとってその後更新しなかった結果、他社が新たに取得して問題になることが多々あります。

以前より独自ドメインは取らないように助言することはありましたが、手続きが面倒だからなのか、取るように仕様書に書かれていたり担当者が強く主張する案件が多かったです。
2022年あたりから風潮が変わり始め、サブドメイン等の利用を仕様書に書く案件も増えています。

担当者にお願いしたいのは「過去そうだったから」と思考停止にならず、ドメインに限らないですがどれがいいのか考える、もし自分が考えられないのであれば委託先にアドバイスを求める姿勢を期待します。

そしてドメインが第三者に利用された場合は、自分事としてとらえ、組織としても責任を持ってください。悪いのは安易に独自ドメインでやろうとした組織です。
またドメインやサーバーは外部に丸投げせず、自治体やDMO、観光協会など運営主体が自分たちで取得して管理することをお勧めします。
最近では請求書払いできるドメイン管理組織もあります。

ユーザーファースト

ウェブサイトを作成しているとついつい組織目線で作ってしまい、ユーザーニーズと合わなくなることがあります。
主観や好みが入りすぎると特にそうなります。

そこで組織側(観光系で言えばDMO・観光協会、自治体、観光業界関係者などの身内含む)だけで作るのではなく、使う側の視点に立つことが大事です。
そのためには、使う側が使い状況を考えましょう。
今の時代スマートフォンで見る人が最も多いです。
そのため、検証はスマートフォンで行いましょう。
デザインやコンテンツ作成もモバイルファーストです。
極論、パソコンでの見え方は気にしなくていいです。

デザインだけではなく、情報の過不足や量も大事です。
観光地に対する理解がどの程度あるかにより、どこから書くかは変わってきます。
例えば都道府県名を書かずに市町村からコンテンツ内に書かれている場合がありますが、それでは伝わらないこともあります。
ユーザーはトップページから入ってくるわけではなく、どこへでも入ってきますから、全てのページが最初のページになってもいいようにしましょう。

この項目は確認しましょう

4.SNSの運用方法

SNSの選び方

前述のSNS運用企画書作成時に、利用するSNSを選定します。
ここではSNSの選び方について捕捉します。

  • 対象(国、年代、関心など)

    • まず対象にあうかどうか考えましょう。

    • インバウンド向けのSNSはその国の利用状況を調査して決めてください。利用状況調査にはDataReportal(英語)が役立ちます。

      • 東南アジア諸国はFacebook、YouTubeが強いです。

      • 台湾、香港も同様ですが、InstagramやXもある程度有効です。

      • 韓国、中国、ロシアは独自のSNSが盛んですが、韓国はYouTubeやFacebookも一定のシェアがあります。

      • 欧州や豪州などもFacebookやYouTubeは無難です。

      • 米国はInstagramやXもシェアが大きいですが、日本同様ずぬけたシェアを持つSNSはありません。

      • 日本はYouTube、X、Instagram、Facebookがよいでしょう。

    • 年代に関しては中年層はどれでも大丈夫ですが、若者はInstagramやXの利用率が高く、10代はTikTokとXです。

    • 関心に関してはメディアの特性を理解しましょう。動画コンテンツはどれでもいけますが、YouTubeショートやTikTok、Instagramストーリーズのような縦型動画が有効なプラットフォームに関しては携帯で撮影するのがよいです。

相性

更新方針などとの相性も大事です。
例えば、タイムリーな情報を頻繁に配信するのであればXは重要です。
詳しく知ってもらうのにはYouTubeが向いていますし、写真や動画が揃うのであればInstagamが有効です。Facebookはやや年代が高いですが、一定の層には刺さります。

更新が命

そうはいっても自分が好きなSNSがいいです。
何故ならSNSは更新が命。慣れずに更新されないのが一番よくありません。
ただし担当者依存は避けてください。決めたらスタッフはみな慣れてください。少なくとも個人アカウントを作って情報を見る習慣は付けた方がいいです。
俗人的運用をできるだけ避けるためにも、運用を決めたら組織のメンバーが個人でもSNSを使ってみましょう。

適切な広告予算を確保

  • 定期的な予算

    • SNSをやる場合、少額でもいいので、いつでも使える予算を少額で確保しましょう。

    • 年30万円ぐらいは担当者が自由にいつでも使えることが望ましいです。

    • 投稿で露出を増やしたい場合、ピークで集客を増やしたい場合などに使います。

  • 広告は誰が運用するか

    • 広告を内部で運用するか、外部に委託する場合の判断に迷う方もいます。

    • キャンペーン的にやる場合は、企画やLPの作成、素材の作成、撮影などと合わせて外部に委託するのはありです。

      • 特にデジタル広告はどんどん変わっていきますので、外部との連携がないと知識が遅れます。

    • 数十万円以上の広告予算を使う場合は外部に委託するとよいでしょう。

    • 広告予算が100万円以上でないと運用を受けない広告代理店も多いですが、その場合は広告運用費の割合をあげましょう。

    • 私も広告費実費50万円、運用費50万円でやることがあります。

    • 運用のノウハウやかける時間が重要な場合が多いですので、広告費実費の割合にはこだわらない方がよいです。

    • 実費が半分になっても、運用が倍以上うまくいけばOKですから。

5.デジタル広告

マーケティング計画書(再)

マーケティング計画書を確認しましょう。
広告には様々な目的があります。
クリックしてもらう、動画再生してもらう、拡散してもらうなど。そこも確認しましょう。
SNS広告の場合はSNS運用企画書も確認しましょう。

デジタル広告実施時の注意点

  • 予算消化で効果が低い時期に実施するのは止めましょう。もし予算消化次第であれば、最低金額と最高金額を最初に決めて、最低金額分は最も効果があるであろう時期にやり、予算が見えた段階で予算が余ればその後にやりましょう。一度に実施するのは得策ではありません。

  • 検証は必ず行いましょう。良し悪しだけではなく、傾向・向き不向きもつかみましょう。

  • 適切なランディングページがない場合は作りましょう。

KPI

KPIはマーケティング計画書に基づきますが、大事なのは目的です。
目的につながるKPI(=それが良くなれば成果につながる)を見つけましょう。

予算

目標から逆算して決めましょう。

  • 対象が狭いと単価はあがりやすくなります。

  • 予算が多すぎるとフリークエンシー(同じ人に何度も広告が出る)が高くなります。そのような場合は複数の広告を用意しましょう。

  • 予算が少なすぎると学習に時間がかかったり、効率が落ちる場合があります。

  • 検索広告の場合、CPCを下げることばかりこだわると運用がうまくいきません。

6.ウェブ解析

最初が肝心

とりあえずGoogleアナリティクスをやっておこうという人がいますが、それでは不十分です。

データを取っていないと解析はできません。
設定内容として下記を確認してください。
(専門的になりますので、不明な点はウェブ解析士などに依頼して実施してください)

  • 対象となる範囲はどこか:クロスドメイン設定が必要か。

  • データの保持期間:2か月か14か月か。

  • Googleシグナルを使うか:属性情報がわかる反面、デメリットもあります。

  • 拡張計測をどこまで行うか。

  • 基本設定で取れる情報以外にどのような情報が欲しいのか:GTMも用いて設定が必要です。

  • コンバージョン設定をするか:する場合は何をコンバージョンとみなすか。

  • GoogleSearchConsoleは設定したか:サイトマップを設定するかは要検討です。

  • 基本レポート以外に何を分析したいか:必要に応じて探索レポートを作りましょう。

権限管理も大切です。
管理者権限、閲覧権限など大事な情報ですので誰がどこまでできるか権限を決めましょう。

レポートは不要?

レポートが必要かどうかも考えてください。
画面で見ればいいのであればレポートは不要です。
レポートを作成する時間・費用も考慮の上決めましょう。

仮説をもって分析する

なんとなく見ても何もわかりません。
マーケティング計画書やKPI、各施策の目的などを元に「データを見る前におそらくこうだろう」という仮説を立てた上で、分析しましょう。

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