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舞台袖のオーケストラ

もう初夏に近いけれど、今年は朝晩もまだ寒いし、晴れている昼間でも少々ピリッとした冷たさが残る。

 そんな寒さの上に激しい雨が降った翌日、ジュニアオーケストラが町の芸術祭の参加した。まだどんよりしていて出かける気分にはなかなかならない天気の日。こうなると気になるのがお客様がどのくらいいらっしゃるか、ということである。舞台の袖のカーテンの隙間から客席を除いてどのくらい座っていらっしゃるかを見る時はもっと入るかな、という心配半分、こんなに来てくださっている、という嬉しさ半分である。

 この芸術祭はさまざまなジャンルの出し物があるのが楽しい。私たちが参加した日は尺八あり、日舞あり、吟詠あり、琴あり、フラダンスあり、で年齢層も高め。出演する子ども達は普段気心の知れた団員とばかりでやっているので色々な人が出入りするイベントでは楽屋の使い方や舞台袖での過ごし方も気を遣わなくてはいけない。子どもたちはお互いに「しーっ!」「しーっ!」とやって静かにしようと頑張っていた。

 それでもフラダンスなどはみんな見たい。首を伸ばして頭を左右に揺らしてみている子がいたり、お友達とフラの真似をしている子がいたりする。やりすぎて大きな音を立てたりすると「しーっ!」発動。

 みんながだんだん飽きてきた頃、ガタン、ガタン、と音がするので「誰だっ!」と言わんばかりに目を向けると、大きな尺八を片づけている紳士と目が合ってしまった。あちらも私も薄暗い中、気まずく会釈をしたりして順番を待った。

 明るい舞台とは正反対の狭く薄暗いこの場所で人がモゾモゾと動いたりじっと次の出番を待っていたりするのが私にはおもしろく、居心地がいい。特に舞台監督の周りにいるとワクワクする。インカムから流れてくる声を聞いていると、バラバラのピースを一度に動かして舞台を作ることは神様が世界を作った時の様子と似ているんじゃないかと思う。

 舞台の上はもちろん楽しいが舞台袖はもっと楽しい。いつか私もここでインカムをつけて神様になってみたくなる。だが神の領域は簡単なものじゃないことは重々承知。袖で舞台が作られていく様子を見る喜びで十分だ。

ではまた。ごきげんよう。