遥か遠く

桜舞う広場にて
凛とした佇まいで居る君を見つけたのは
いつの事だろうか
大学に入学して間もない頃か
確かそれくらいだった気がする

暇そうに本を読んでいたから声をかけた
君は一向に見向きもしない
返事が来るまで10分かかった

「逆ナンはよしてくれ」
君が放った言葉に否定はしなかった
確かに「逆ナン」だが、私は君と一緒に居たかった

そんな私を「ストーカー」とも言わずに無言で受け入れてくれた
毎日休み時間を一緒に過ごし、週に3回は君の住む部屋で寝泊まりした

ある日、君は私の2つ上の階級である事がわかった
しかもストレートに進級している
「そろそろ就活に集中したいから、君とは居られなくなる」と君

仕方ない、君のためなら

話しかけるのも、電話するのも、LINEを送るのも自粛しようと心に決めた
君の部屋に置いてた着替えも下着も、ドライヤーとかも、私物全部まとめて持ち帰った

君のためだから、君の邪魔は出来ないから

ある日、君の住むアパートの前をたまたま通りかかった
ふと気になって、君の住む部屋の方を見た

洗濯物がぶら下がっている
中にはブラジャーが

そうか、そうだよな

私たちはまだ付き合ってなかったんだ

舞い上がってた自分が恥ずかしくなった

なんとも言えない、
言い表せないグチャグチャした真っ暗な感情が
押し寄せてくる

一瞬だけ、浮気をされたようなショックを受けたが違う

いつか伝えようと思って用意していた言葉が
一瞬にして灰になり塵となって風に紛れた

私が好きだった君は、今そこに確実にいるのに
いくら追いかけても追いつけない
手を伸ばしても指先すら触れることが出来ないくらい遠くにいる


一体、なんだったんだろう

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