パドルブリューに込めた思い

すみません、あれこれ日記を1年前まで付けていましたが、続けることがあまりも苦手なもので、止まってしまっていました。

あっという間に一年がすぎ、6月に酒類製造免許も取得し、ついにクラフトビールの製造の段階まで来ました。

1年間全く更新できていなかった分、まとめてみたいな形になりますが、ここでパドルブリューに込めた思いを書かせていただければと思います。

パドルブリューは、山の上から川の河口まで、自然の中で遊び尽くして得られる感性でクラフトビールを生み出すためにつくられたブランドです。

自然の中に身を置き、味、香り、肌に感じる感覚、それらを全て研ぎ澄まして、最高の1杯を生み出します。

でもなぜ自然なのか、ビールなのか、私のことを知る人も、知らない人も、疑問に思うかもしれません。

ここではなぜパドルブリューがクラフトビールを生み出し、それが社会に必要だと考えているのか、ご説明します。

私は幼少期から、自然の中で育ってきました。
家族が山小屋を経営していたので、週末には山に登ってお手伝い、という生活をしていました。
夕方、剣山ではよく雲海ができました。薄明かりが世界を包み込む一瞬のマジックアワーに自分の目の前を雲が流れていく。そんな光景に心が揺さぶられました。

だけれど、私は日本の自然がイマイチ美しくないとも感じていました。
植物を近くで見ると美しいし、遠くから景色を見ると雄大です。でもその真ん中あたりから景色を見ると、なんだかがっかりさせられるのです。

コンクリートで固められた川、杉ばかりで真っ暗な森、自然の中に現れる不自然な人工物など、なんでもっと美しいはずの景観をもっと美しく見せられないのかと疑問に思ってきました。

そんな風に感じていた中学生の時、私は2人の人物に出会います。一人が作家でカヌーイストの野田知佑さん、もう一人が市民活動家の姫野雅義さんです。

野田さんは自由気ままに世界中を旅して壮大な景色を味わい、魚を捕っては食べる。まさに自然で体ができているような人物でした。そして誰にも縛られず、日本の自然を破壊する行政に対して立ち向かう。かっこいい人物でした。

そんな野田さんの魅力に目を付けたのが、国のダム事業を住民投票で中止に追いやった策士・姫野さん。野田さんを校長に「川の学校」というプログラムを作り上げます。川の学校は年に5回、吉野川でキャンプをするのですが、キャンプ中は何をやっても自由。カヌー、釣り、魚突き、焚き火、なんでも好きなようにやります。

結果的に、否が応でも、子どもたちは川のことを好きになります。そう、姫野さんが狙っていたのは、川で自由に遊ばせることで川のことを好きになってもらう。そして、川が自分たちのものであると自覚させ、積極的に河川の問題に関わる人を増やそうとしたのでした。

「『遊び』が人と自然を近づける。そしてそれが美しい自然を取り戻す原動力になる」ということです。

目論見は大成功だったと思います。
私を含むパドルブリューのメンバーは川の学校出身ですが、大人になっても子ども向けのキャンプのスタッフをしたり、河川整備に関わる問題を勉強したりと、川づくりに携わってきました。そうやって集まっている中で、大人になって欠かせなくなったもの。それがビールです。

川で泳いだ後、夕方に飲む一杯、焚き火を囲んで飲む一杯、一度でも経験して、この世界観あらがえるでしょうか?そして、既存のビールも美味しいですが、もっと意味のある一杯ならば、より自然が楽しくなるのではないかと考えたのです。

「自然」と「クラフトビール」に「遊び心」を加えた一杯で大人たちにアプローチする。そして、人と自然を近づけて、胸を揺さぶるような自然の光景を守ったり、復活させたりしていく。それが私たちのビジョンです。

日本、そして世界には、たくさんの優秀な醸造家さんがいて、その頂点は限りなく高い。もちろんそこを目指していますが、簡単な道ではありません。でも私たちの経験や感性をフル動員すれば、少なくとも自然の中で飲むビールや、飲んで自然を感じられるビール部門では、一番になれるんじゃないかと思っています。

まだコンセプトが主導で、未熟な醸造所だと思っています。
でもいつか、人と自然をつなぐビールの象徴であるブランドに育てられるように頑張ります。

みなさんに支えていただくだけでなく、ぜひこのビジョンに参加して、私たちの一員になってほしい。そう願っております。

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