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日本は階級社会なのか②(ガソリンスタンド閉店の危機)

 いま、かつては里山と言われたような、農業で栄えた町は、人口が減り続けている。
  林業や漁業の町もそうなんじゃないかと思う。
 まれに人口が増えているところもあるけれど、それは周りの町から若い人が移住するからだ。子どもを生み育てるならばこの町で、と選ばれる所は若い人が増える、流出してしまう町は減る。
 人口の減る地域はどんどん人口が減り、だから産業も行政サービスも行き届かなくなっていく。
 前回の記事を書いたあと、実は途中まで文章を書いていたのだが、義務教育学校よりある意味大きな問題が持ち上がって、文章を消してしまった。
 私たちの住む地域唯一のガソリンスタンドが来年、廃業するらしいのだ。
 車が無くては何も始まらない里山ではガソリンスタンドは最重要インフラだ。
 ガソリンスタンドを経営しているご家族にはご家族の事情があるので仕方がないのだが、この事態に対して、市は直ぐには動く様子はない。市長からは積極的に関わっていくという発言が有ったようだけれど、具体的な案はないし、市からは「武儀地区(私たちの地域)の人だって病院の時は街に出るのだし、買い物にだって行くだろう」など、ガソリンスタンドが無くても、車に乗れる人は自力でなんとか出来る。   公費をそこに充てる必要は無いのでは、という意見があるようだ。
 確かに、毎日仕事で市街地に出る人はさほど困らないかもしれない。だけど、私の夫は地元で仕事をしているから、ガソリンスタンドが無くなったら、ガソリンスタンドのために車を走らせなければならないし、近所で田畑をやっているおじさん達もしかりだと思う。
 ガソリンの調達のために車を20分以上走らせるなんて、本末転倒としか言いようがない。
 閉店するガソリンスタンドは、灯油や軽油の配達もしているので、車に乗れないお年寄りにとっても重大な問題だろう。
 学校のことも、ガソリンスタンドのことも、一繋がりだ。住んでいる人が少なく、声が小さい。
 平成の大合併で、この地域は大きな市に含まれた。だから、税金を自分達の采配で使うことは出来ない。
 市はよりムダがなく、大勢の市民のためになるようにお金を使いたいと考えるだろう。
 だけど、私たちも同じだけの税金を払っていて、同じように住民としての権利を持っているはずだ。
 私たちの地域はこれからもっと人が減るだろう。そうすると、私たちの声はもっと小さいものになる。ますます住みづらい地域になってしまう。
 地域格差の問題について、自分が当事者になってみて初めて、私はマイノリティの気持ちが少しだけ分かった気がしている。
 市は、住民からの声が上がったら対応を協議する、という考えのようだ。だけど、声をあげる勇気や、不安を言葉にする事の出来る人ばかりではない。
 高齢者が圧倒的に多く、周囲は知り合いばかりといった土地に住んでいて、どれだけの人が「ガソリンスタンドが無くなるのは困る!」と声をあげられるだろうか。声をあげる勇気や、不安を言葉にして発信できるスキルのある人は限られると思う。
 これまでの私は、原発処理水の問題や、入管法改定、沖縄の基地問題など、気になるニュースについてSNSで書き込むことに何のためらいも無かった。そんな私ですら、いざ我が子にも関わる学校規模の改定や、自分の足に直結するガソリンスタンド廃業の知らせには、「どう発言すれば、自分の事ばかり、と思われずにすむだろう」と考えてしまった。
 だから、沖縄の海で座り込みをされている方や、優生保護法下に不妊手術を受け、被害を訴えてこられた方々の苦しみは相当なものだろうと思う。
 当事者であればあるほど、なりふり構わず声をあげることが難しい。だって、黙っている人もいるから。黙っている人がどう考えているのかは分からないから。異を唱えているのは自分一人なのではないか、という孤独感はきつい。
 でも、私たちは等しく幸福を追及する権利を持っているはずだ。幸福であることを求めるためには、最低限度平穏に暮らせるだけの条件は揃っていなくてはならない。
 そのためには、不合意に性的な行為をされたり暴行を受けた上に、相手が正当な罰を受けないようなことは有ってはならないし、障害者だからといって、差別を受けたり権利を剥奪されてはならない。
 ならば、今、私が直面している不安も、やはり訴える権利があるんじゃないかと思うのだ。今まで存在するのが当たり前だと感じていた小中学校の形態が大きく変わってしまうこと、家から数キロの距離にあるガソリンスタンドが閉店してしまうこと。これは、私たちにとって、当たり前の生活が出来なくなる危機だ。
 どうして、悪いことをしているわけでもない、ただ、人口の少ない地域に住んでいるだけの側が声を上げなければならないのかは分からない。だけど、沈黙していては了承していることになってしまうのであれば、私は「絶対に反対」と叫びたい。
 時間は掛かってしまいますが、また書こうと思います。
 
 
 
 
 

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