新幹線のぞみで
前の座席の人が「あのー座席を少し倒してもいいですか?」
50すぎ、銀縁眼鏡、坊主頭
律儀さを絵に描いたような人だ。
「どうぞ、どうぞ」とこちらも丁寧になってしまう。
しばらくして富士山が見え始めた頃、その人は席をたった。
チラリと黒いロングスカートを履いているのが見えた。
かなり個性的な人だ・・・。
京都を過ぎ新大阪駅に止まったところで目が覚めた。
もうそろそろ出発かと思ったところで、前の座席の人が
「あーっ、おーっ!」と騒ぎ始めた。
熱いコーヒでもこぼしたような動きだったので、
ハンカチでも貸そうかと思ったが違った。
自分の荷物をかき集めて飛び降りて行った。
間一髪でドアは閉まって、走り出した新幹線からホームで安堵する
前の席に座っていた人の姿が見えた。
その時わかったのだが、その人は神父さんだったのだ。
慌てん坊の神父さん、神様の前でも慌てん坊なのだろうか。
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