アパレル生産のコストを下げる その2
「アパレル生産のコストを下げる」を
その1に引き続き検証してみたいと思います。
繰り返しますが、飽くまで以下の内容も
当社の独断と偏見であり、今までお取引があったブランドさんの
傾向と経緯の集計に基づき、特に中小規模のブランドや
個人ブランド、スタートアップのブランド
または小ロットが中心のブランドを対象に
記載していますのでご了承下さい
その1でも記載いたしましたが、外注に業務委託する業務と
内製化する業務とで適切に分析して
可能な限り自分(の会社)でやってみてコストを抑える
方法がありますよというのが「その1」でした
「その2」も少々あたり前の内容ですが、
少しだけ専門的な内容も含まれます
原材料費(仕入れ)を下げる
かなり当たり前の内容で、製造業であれば永遠のテーマです
昨今の物価高の状況ではなかなか下げにくいところ
ではどの様にして原材料費を下げていくのか?
生地商から生地を購入する場合、単純に値引き交渉をしても
まず単価は下がりません
余程定期的に大量に何十反も購入していれば
そのうち単価を下げてくれる生地商もあるかもしれませんが
中小規模以下のブランドの場合、まず難しいかと思います
同じような生地を求め安売りしてる小売店などを探しても
売り切り在庫の為、量産で使えなかったり、
目的の生地と微妙に品質や色などが異なっていたり
などでデメリットは多いのが現実です
たまたま掘り出し物みたいな生地が見つかればいいですが
ビジネスなので、そんな宝くじみたいなビジネスは
続かないでしょう
ではどの様に原材料費を抑えるのか・・・
まずは幅広く生地を探せるように
自分のブランドに合う生地商や生地問屋、
資材問屋を見つけるところが始めることが良いと思います。
小売店や手芸店でもいいのですが、他のブランドで残った生地を流して
販売していたりする小売店もあるので確認が必要になると思います
また当然生地代に店舗などの販売経費が乗せられるケースが多い為
元々の市場卸価格より割高なケースが多い様です
もちろん掘り出し物があったり、サンプルや小ロットだけなら
小売店や手芸店の在庫でも手早く簡単に対応できたり、
最近では手芸店でも生地見本帳などを揃えて
生地問屋の様な事業を展開している小売店などもあります。
もちろん小売店は実物が大量においてあり、見ていて楽しいし
選びやすいので、使用される生地によって使い分けるのが適切でしょう
稀に小売店や手芸店の生地はプロの生地ではないので
品質がいいプロの生地を買うなら生地商や生地問屋だ!
とか言う人も未だにいますが、生地にプロ用とか素人用とか
そんな区別は無いのでご安心ください。
ただしビジネスとしてある程度の量を生産する場合や
またそれが見込まれる場合、生地問屋や生地商社、
資材商から購入する方が色々を安心かと思います
もちろん小売店が生地商の事業をされているのであれば、
そちらを利用しても問題無いと思います。
また生地商や生地問屋は取引量や頻度によっては営業が付いて、
色々アドバイスをくれたり
ショールームや展示会で選べたり、見本帳をもらえたり
新作の生地などの提案を受けたりなど
ビジネスとして商品を生産するには生地問屋や生地商社、資材商と
取引をする方が確実でスムーズでしょう
最近ではネットで問い合わせて、
前払いなら取引してくれる生地商も増えております
また当社に生産をご依頼の場合は、生地商を営業担当者ごと紹介して
直接お取引してもらうように手配するケースもあります。
その後はブランドが直接生地商に発注してもらい
当社に生地を生地商から送ってもらうので
その方が生産業者の中間手数料がかからないし、
ブランドから当社への原材料の生地商から直送なので
配送料もかかりません
生地の純粋な卸値も確認する事も出来ます
さらに生地商でも購入は1m単位だったり
生地商によっては小売店と同じように10cm単位でも
無駄なく購入ができます。
それらもコストダウンのひとつ
ただし生地商からの購入は
1反(50メーター)以下の少量での注文は
生地代以外に発注毎に生地品番毎•各色毎に
カット代と言う生地商の手数料を取られます
生地商の小口手数料みたいなものです
生地商によりますが、かなり馬鹿にならない金額です
そちらも念頭に発注を調節する必要があります
ただし生地の反物に不良などがある場合、
該当箇所を避けて裁断する場合などもあります
もちろん元々不良箇所と判断されている場合、そこに印が付いていて
生地商側も発注メーター数よりも余分に投入されますが
生地商側で認識が無い不良箇所は、裁断後の場合生地商も
原則補償はしてくれません
その為量産の場合は、余分に発注して増産傾向で生産するか
ギリギリで発注して減産傾向で発注するかなど
事前に生地不良があった際を見越して計画して
生産すると効率的と言えるでしょう
そんな訳で、もちろん、ご心配な場合は当社に生地手配を
依頼する事もできますのでご安心ください
ここまではスタートアップのブランド用のお話
用尺で調節する
アパレル生産の原材料費の落とす
その要素はいくつもあるので
どこから手につけていいか分かりにくいかもしれません
当社はパターンメーカーでもあるので
パターンメイキングの分野での原材料のコストダウンを一つ紹介します。
ここから少しアパレル生産の専門的分野になりますが、
全く分からない方でもなるべく分かりやすく説明してみます
洋服は複数のパーツで構成され、平らな生地をいくつかの
パーツに分けて裁断し、各パーツを接ぐように縫製して
立体的に形成します。
生地の事前処理の後、
まずは長い生地の反物に対して洋服のパーツを配置して
どの様に裁断するかを設定するのが型入れ
それを事前にデータ上で設定するのがマーキングといいます
上の画像の様にアイテムの各パーツを生地に対して
地の目(生地の経糸の方向)に合わせて配置を指示する図です
上の図で見ると横が生地の縦なので右に行けば行くほど
1着あたり生地を長く要することになります。
なのでこの図のアイテムは生地の幅が128cmの生地を使用した場合、
1着あたりに要する長さは127.9cm必要という事を表しています
この1着あたりに必要なメーター数を
用尺と言います
計算すると生地代が1Mあたり1000円だとすると
このアイテムのこの生地の原材料品は
1.279×1000円=¥1279となるという計算
この用尺の理論だと生地の幅が、これよりも広い生地で同じパターンの
アイテムを裁断する場合、横にパーツを広げて配置できるので
必要メーター数、要は用尺が縮まります
ただし生地の幅が広くなれば同じ生地の場合、
その分生地の単価は割高になる傾向にあります
(同じ生地でも幅が狭いものと広いものの
2種類の展開の生地もメーカーによりあります)
このマーキング図で言うとパーツの外側の部分は
必要ない部分であり使用できない部分なので
この部分が多ければ多いほど、使用される生地に対して
効率が悪い事になります。
もちろん生地代はこの使用しない箇所も計算上含まれますので
この使用しない箇所(ロス分)が多ければ多いほど
原材料の費用が割高になるという事
用尺の基本的な考え方は、おおよそで上記の通りです。
パーツの配置については多いもので何万とか何億通りもあるそうで
マーキングのPCソフトは、それを一瞬で算出してくれます。
それで算出して設定されたのが上の画像のマーキング表です。
このマーキング表を元に再度裁断現場で実際の生地で
パーツを配置してみて最終的な用尺を設定するのが
型入れと言うことになります。
また用尺は生産量が増えれば増えるほど、
また高単価の生地であればあるほど
コストに影響します
1メーター1000円の生地で
10センチ用尺が縮まるだけで
一着あたり100円もコスト下がります
2メートルの用尺なら生地代が
5%も下がると言うことになります。
さらにそれを20着以上生産した場合、
生地だけで言えばもう1着生産できてしまう量となります。
この様に衣料品の原材料も源である生地は
用尺を減らしたり調節することで
この様にコストダウンができると言うことです
ただし実際の生地は不良箇所がよくあります
実際にその様な訳で
ギリギリの生地量の発注の場合、
減産を前提とするコスト計算も必要となります
また逆に上記に記載した通り、これらも見越して増産傾向に
多めに発注したりするケースもあります
このようにどうしても無駄になってしまう部分(ロス分)が発生します
だからこそ適切にマーキング・型入れを行い
きめ細かく用尺を事前に設定をすることで、
可能な限りロス分を減らして余分に生地を余らせないで
効率よく原材料を使用してコストを減らしましょうという事です
その他にも、サイズで用尺は異なりますので、サイズ展開の場合は
サイズ別で用尺を出してもらい無駄なく生地を使用できるように
パターンメーカーや縫製工場に相談してみましょう。
また現場で型入れしてもらってから用尺を確認して
生地発注してみたり、幅の広いパーツなどがギリギリ生地幅に
効率よく入らなかったりしたら、目立たぬ様に少しだけパターンの大きさを
調節するなど、きめ細かくパターンやマーキングを調節するなど
工夫してみるのも良いでしょう
ただしこの用尺や生地の効率はあまり優先しすぎると
イメージしたデザインや寸法と合わなくなってしまったり
生地幅の関係で希望の生地が使用でかなかったりしていまいます
その様な無理筋の製品はまず売れないでしょう
また上記の通りで生地が不足してしまった場合など
不足分を小口で発注すると生地商の
小口手数料(カット代)がかかってしまったり
生産が一旦ストップして納期遅れを起こしたり
折角のコストダウンが台無しになるケースもあります
それでは本末転倒
その為デザインや寸法を維持しつつ
上手く生地とパターンと用尺のバランスをとることが重要です
これらの調整や検証はなるべくサンプル生産のうちに処理しておいた方が
望ましいと思います
その為のサンプル(試作)でもあり
量産時や展示会時および受注会の時には上代を決定する必要が
あると思いますので、なるべく事前に処理した方がスムーズです。
ただしサンプル自体の生地用尺はあまり調節できませんので
寧ろ少し多めに発注された方が補修などに使えたり
ゆくゆく効率がいい場合もありますので確認しておいた方が適切でしょう
この様にマーキングや型入れは意外と奥が深いので
ここでは詳しいやり方の説明はできませんが
まずは以下の内容を気にかけて生地選びと用尺の調節を
してはいかがでしょうか。
まとめ
1,なるべく生地幅の広い生地から検討してみる
生地幅の広い生地は同じ生地の生地幅の狭いよりも
単価は割高になりますが、用尺は生地幅が広い方が効率が良くなり
用尺が縮まり最終的には単価が押さえられるケースが多いです。
ただしデザインやパターンによっては生地幅にら関わらず、あまり変わらない場合もありますので、パターンメーカーや生地商と十分に相談してください
2,細かく用尺設定・検証してみる
上記の通りきめ細かく用尺やパターンの調整と検証を行ってみましょう。
特に量産の場合は遅くとも仕掛かる前までに注意深く設定してみましょう
ただし生地の不足やデザイン性などの商品精度の低下も招かぬ様に
注意しましょう
3,パターンと用尺とマーキングを相談できる生産業者と取引する
これが1番大切かもしれません。
パターンの技術や知識が無い場合、確認・閲覧はできても
マーキングとか用尺を調節する事はできないと思います。
その為それらを相談したり確認したり調節したりが可能な専門業者と取引する事が重要です。パターンメーカーに何度も用尺を
出し直しさせるのは問題ですが、そもそもパターンメーカーや生産業者が
その様なコストや原材料に関するパターン調整の相談が可能かどうかは
事前に確認しておいた方が適切と思います
当社はその様な調節や確認も通常通りお受けしています。
以上となります。
以上はアパレル生産のパターンメイキングにおける原材料費による
コストダウンの一つの考え方にすぎません
何度も書きますが、コストダウンは簡単にはできません
細かいコストダウンを積み重ねて、バランスを取りながら
すこしづつコストを削ることで
やっと全体のコストを削ることができます
他にもパターンで用尺を調節する方法があり、
何着分かでいっぺんに裁断するとか(2人裁ち・3人裁ち・・)、
差し込みか一方裁断かとか
柄合わせはどうするとか・・・
このブログでその全てを今回紹介する事は出来ませんので
今回は上記の通り入口と考え方くらいにしておきます
その先はぜひ生産業者の方にご相談して検討してみてください
またこのコストダウンのブログに乗じて
当社にご注文をお薦めしている事に関しても
お許しください 笑
当社にご注文の際は、上記の様なコストのご相談も
生産進行時などでも承っておりますので
お気兼ねなくご相談ください!