【今さら】私を構成する9枚のアルバム
・前書き
1〜2年ほど前に、「私を構成する9枚」なるハッシュタグが流行っていたことを、皆さんはご存知でしょうか?
私は、その存在自体は知っていたものの、音楽をアルバム単位で聴くということにあまり馴染みがなかったため、特にこれといった興味も持っていませんでした。
しかし、今年の春頃、なにかのきっかけでゆらゆら帝国の「空洞です」を聴いてみたところ、これが大ハマり。今では、邦楽、洋楽に限らず、色々な音楽アルバムを聴くことが、人生の一つの楽しみとなっています。
その過程で、私は自己顕示欲が拗れ、「自分の好きなアルバムをどこかの誰かに共有したい!あわよくばいいねが欲しい!」と思うようになりました。
そこで、「私を構成する9枚」に、私は大きな期待を抱き始めるように。
ですが、既に時は2024年、紅葉の季節。
旬がとうの昔にすぎたそのコンテンツに、今頃集まるような人はごく僅か。
それでも、私は誰かが共感してくれることを願い、この文章を書くに至りました。
拙筆ですが、最後まで読んでくだされば、大変幸いです。
是非、紹介したアルバムも聴いてみて下さい。
1.ゆらゆら帝国 空洞です
・日本のオルタナティブロックシーンを代表するスリーピースバンド、「ゆらゆら帝国」のラストアルバムであり、最高傑作と名高い、邦楽史にのこる傑作。
前述した、私が音楽にハマったきっかけとなったアルバムです。
他のメジャーデビュー以降6枚(インディー時代のアルバムはサブスク未解禁なのでまだ聴けていません…)も全て名盤なのですが、やっぱり、これが私の中では一番ですね。
アルバム名の通り、ぽっかり穴が空いてしまったような、それでいて重厚感も併せ持った、正に、「バンドが完成してしまった」音。
本当に、何度聴いても色褪せません。
私が特に好きな部分は、3曲目「あえて抵抗しない」という曲の最初にある、「ポゥ!」という叫び?声。このアルバムの特異性を象徴する、名フレーズの一つだと思います。
無気力さを保持したままゆっくりと狂気を孕ませていき、最後には、不思議なキャッチーさを持った、ゆらゆら帝国の総決算的表題曲、「空洞です」が訪れる構成。完璧という他ありません。
もしまだ聴いたことがなければ、ぜひ聴いてみてください。ピンとこなければ、最初のアルバム(3×3×3)から順々に聴いてみるのがおすすめ。
2.ゆうらん船 MY GENERATION
・フィッシュマンズなどのオルタナティブサウンドを受け継いだ日本のフォークロックバンド、「ゆうらん船」の1stアルバム。
私の中で1、2を争うぐらい好きなアルバム。
このアルバムは、YouTubeの音楽紹介動画で初めて知ったのですが、その時から今まで(3ヶ月)、ずっと聴いています。
音もそうですが、何より、歌詞が普遍的な良さを持っていると感じました。
例えば、2曲目「鉛の飛行船」の、「畑の真ん中で急に満ち足りて」という部分。退廃的な雰囲気の中で、合成音声から発されるこのフレーズに、訳もなく涙腺を刺激された人は多いでしょう。僕もそのうちの1人です。
また、このバンドの良さが詰まった楽曲として、7曲目「summer2」を、私は推したいです。
バンドのファーストEP「ゆうらん船」の2曲目「summer」に水の音をサンプリングし、ヒップホップのようなリズム感を追加した、実験性と、フォーク的な優しさを兼ね備える音。
この曲があることで、一気にこのアルバムの非凡さが拡張されていると思います。
私自身、純粋なヒップホップにまだ慣れていない部分があるので、こういうのがありがたいというのもありますしね。
夕方に聴くと、どんなに最悪な日でも、生きててよかったと感じられます。ぜひ、聴いてみてください。
3.加藤千晶 四つ角のメロディー
・Eテレの教育番組などで活躍しているシンガーソングライター、「加藤千晶」のオリジナルアルバム。
彼女の楽曲を知らず知らずのうちに耳にしたことがある人は、想像以上に多いのではないでしょうか。
小さい頃、親にポンキッキーズやみんなのうたの名曲をひたすら聴かされていたので、その楽曲群は自分の中で、「懐かしい」思い出となっています。
しかしその中でも、加藤千晶の一部楽曲は未だ自分の中で、音楽的に重要な位置を占めている。もっというと、自分の音楽の好みの軸は、このアルバムで構成されていると言っても過言ではないほどです。
音楽性としては、ジャズチックな感じとでもいいましょうか。それでいて、すごく聴きやすい。子供が音楽を好きになる、いいきっかけになると思います。
ちょくちょく挟まるギターソロの程よいゆるさも、可愛くてクセになる。
アルバムの合計時間も、最後のカラオケバージョンを除けばたった15分ほどなので、気軽に心を満たせます。
私の思い出補正もあるかもしれませんが、ぜひ、一回聴いてみてほしいですね。ハマれば、小さい心の拠り所となってくれること間違いなしです。
いつか音楽好きの方がレコメンドしてくれることを祈ります🙏。
4.青葉市子 0
・シンガーソングライター、「青葉市子」の4thアルバム。神秘性と、時々顔を覗かせる生々しさを特徴とする、弾き語りの傑作。
これも、大名盤ですね。
気持ちが落ち込んだ時に聴くと、ギターが出す音色が、心のかけた部分をひとつひとつ埋め直すように、深く、響きます。
アコースティックギター1本(自然音も含まれていますが)という、至極簡潔なスタイルなのに、随所にプログレッシブロックの空気を感じさせるほど、重厚で、実験的な要素を感じさせる、すごく不思議な音楽性。現在YouTubeでもよく耳にする、一曲目「いきのこり●ぼくら」に、その要素は顕著に表れています。
人類の滅亡を感じさせる歌詞(実際は、東日本大震災を元にしているそうです。)に、二転三転するテンポ。
オリジナリティの一言で済ませてはならない、彼女の独自世界が、そこにはあります。
最初歌詞を見た時は、「血」などのワードがすごくナチュラルに出てくるので少しギョッとしたのですが、今では、それ含め大好きな曲となっています。
あと、なんとな〜く自分の中で、彼女の音楽を聴くたび、漫画家の、市川春子の漫画世界と結びつく感じがするんですよ。それが、勝手に自分の中でプラスになっている気がします。
…ハイ、それはさておき、他の楽曲群も名曲だらけなので、ぜひ、一回聴いてみてください。
5.スライ&ザ・ファミリー・ストーン FRESH
・伝説のファンクバンド、「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」の6thアルバム。前作「暴動」の密室感を引き継ぎながら、更に分かりやすいメロディーラインを作り出した傑作。
ここにきて洋楽です。最近聴き始めたアルバムなのですが、これも好きですね。
今まで聴いた音楽の中でも、最初に聴いたときの衝撃度合いは1番かもしれません。
ズブの素人の私にも、ひとつひとつの音が計算づくで作られているのだとわかりました。
なんというか、脳が欲している要素が見事に全て詰まっていたんです。音はもちろんのこと、ジャケットデザイン、声、更にはバンド名も。「ファミリー・ストーン」ってなんだか知らないけれど、滅茶苦茶格好よくないですか?
私は元々、ノイ!なんかの、グルーヴ感に振り切ったスカスカした音像のアルバムが大の好物だったんですが、これで一気に塗り替えられた感じがありましたね。それこそ、「空洞です」以来の感覚だったかもしれません。
いかんせん、英語がちんぷんかんぷんな上、音楽理論なんかも全く分からないので、細かなことは書けませんでしたが、もし聴いたことがなければ、強くお勧めしたいです。
6.カネコアヤノ 祝祭ひとりでに
・現在の日本の音楽シーンを代表するフォークロックシンガー「カネコアヤノ」の3rdアルバム「祝祭」の弾き語りバージョン。
「燦々」と迷いましたが、こちらにしました。
やっぱり大好きなアルバムです。
前まではオリジナルバージョンを聴いていたんですが、こっちを再生した途端、「これだ!」と確信する感覚があって、それからはこのバージョンをよく聴いています。
基本的にガッシリしたロックをやる人なんですが、このアルバムに関しては、ドラムやベース無しの、より内省的な感じのするこちらの方が個人的には気に入っています。勿論、オリジナルも名盤なんですけどね。
特に、4曲目「ジェットコースター」。
即興性の強いこのアルバムの中でも、この曲のアレンジが一番好きです。聴くたび、涙が出そうになる。
「夜を迎える」というワンフレーズで、人の感情を強く揺さぶらせる彼女の歌声は、まさに唯一無二。
歌詞から微かに香る、憂鬱なイメージにも、つい共感してしまいます。
そして、最後の曲「祝日」。恋愛経験が皆無の私でもなにか近しいものを覚える、哀しく、温かい愛の形。文句なしの名曲ですね。最高です。
…私カネコアヤノめちゃくちゃ好きですね。自分で書いててなんですが、少し気持ち悪さをおぼえました。
とりあえず、聴いたことが無い人は聴いてみてください。多分泣くと思います。いや、絶対。
7.ノイ! NEU!
・クラウトロックの伝説的バンド、「NEU!」の1stアルバム。ミニマルで実験的なサウンドが特徴の傑作。
何回聴いても良いアルバム。全く飽きが来ないです。
同じリフの繰り返し、かと思えば唐突に暴走するバンド隊、4分弱続くノイズ・・・
これぞドイツ!といわんばかりの、奇妙奇天烈音楽。
でも、必要以上に不気味にならないよう、うまく調整されている感じもするんですよね。デヴィットボウイが影響を受けたというのも、なんとなく納得できるところがあります。
あと、カンやクラフトワークにしてもそうなんですが、大御所のクラウトロックバンドって、基本リズムだとかに重きを置いているので、ドイツプログレという別称以上に、難解ではないように感じるんですよ。(私自身あまりクラウトロックに造詣深くないので、例外もたくさんあるとは思いますが)
なので、「Hallogallo」や「Negativland」などの、比較的ドラムが多い曲だと、
普通にノれる箇所もいくつかありますしね。
結構浅〜い紹介にはなってしまいましたが、まず間違いない名盤だと思うので、是非。
8.たま しょぼたま2
・バブル期のバンドブームを代表すると同時に、現在もカルト的な人気を博す日本のバンド「たま」のラストアルバム。鍵盤ハーモニカなどを用いたチープな演奏にも関わらず、クラシカルな雰囲気と極上の技術を楽しむことができる。
たまは全アルバム好きなんですが、今回はとりあえずこれにしました。
たまの中では1番実験的なアルバムなんじゃないですかね。ポップな面を支えていた柳原さんが抜けたあたりからは、大体実験的な作風ですが。
大半がインスト曲なので、上述したように演奏そのものを楽しみやすい内容となっています。
その象徴的なところとしては、3曲目の「BMV1065」が挙げられるでしょう。
というのも、実はこの曲、あの誰もが知るバッハのコピーナンバー。
なので作曲部分はもちろんいいのですが、今回特筆すべきはたまによる、バンドサウンドとしての落とし込み方。
このバンド、ドラムの代わりに風呂桶などを用いたパーカッションを使っているのですが、これがやはり大きい。プログレのELPが既にバンドサウンドとクラシック音楽の融合を試みていますが、それと比べても、たまはかなり独自的な解釈をしています。表現が難しいので強いて言うと、日本のアングラ文化を踏襲した感じですね。
他にも、歌詞の秀逸さはこのバンドを語る上で外せないでしょう。
例えば、10曲目「電車かもしれない」。たまのコンセプトの部分として、バブル最盛の社会から見放されたものを描くという部分が大きいと思っているのですが、この曲はまさにその典型。
おそらく、堕胎によって生まれなかった子供についてのテーマだと思うのですが、「物理の成績の悪い子どもたちが空中を歩き回る時刻」と言う歌詞のように、シュルレアリスティックと哀愁が入り混じった歌詞によって、その様子がつらつらと歌われています。YouTubeにて公開されている、近藤聡乃さんによるMVと併せて見ると、なんとなくその世界観がわかると思います。
長くなりましたが、これでもたまは、まだまだ語る部分だらけです。
このアルバム含めいくつかのアルバムは未だサブスクで解禁されていませんが、「地球レコード」という自主レーベルで大体のアルバムは買えるので、聴く際はそちらへ。是非。
9.いよわ ねむるピンクノイズ
・ボーカロイドプロデューサーの中でもかなりの知名度を誇る、「いよわ」の1stアルバム。凸凹とした音の集合を奇跡的なバランス感覚で符合させたサウンドを特徴とする。
9枚目が中々決まらなかったので、今日の気分に合わせてこのアルバムにしました。ボカロは小学生の頃から聴いていましたしね。
この人の存在は有名な、「きゅうくらりん」で知ったのですが、その時はよくあるボカロ曲の中のひとつだと断定して、あまり音の珍しさには注目していませんでした。
ですが、最近になっていくつか楽曲を聴き返してみると、その縦横無尽に走る楽器の演奏方法や、そこから形作られるポップなメロディーに衝撃を受けました。
例えば4曲目「IMAWANOKIWA」。軽やかなギターのカッティングの後にくる優しいピアノ。かと思えば、耳残りのいいBメロにはピアノが極端に音を低くして姿を見せ、くどさを感じない作りにしています。他にも、変則的に現れるキーボードの音や、サビ終りで狂ったような挙動を見せる楽器群。
非常に情報量が多いにも関わらず、初音ミクのボーカルによって統率されたそれらがひとつのメロディーを作り出すさまは圧巻です。
ボカロカルチャーは、音楽評論の場から外されやすいところがあると個人的に感じていますが、wowaka(ヒトリエ)にせよ、米津玄師のハチの時期にせよ、現代の邦楽メインシーンに与えた影響は計り知れないものがあるでしょう。このアルバムも、誰もが認めるような、名盤の位置に入る時が来て欲しいですね。
・・・あ、ぜひ聴いてみてください。
・後書き
以上が私を構成する(?)9枚でした。
極端に文量が少なかったり、多かったり、読みにくい部分などもありましたが、書ききれて良かったです!あと、単純に楽しい!
適当な時にまたこういう記事書きたいですね。
それと、超どうでもいい話なんですが、私、昨日から熱こじらせて中学校休んでるんですよ。今元気になったからこの後書かいてるんですけど、上のアルバムまとめ画像作るためにtopsters3ってサイト行ったら、文字の色が新しくオレンジ色になってたんです。それで妙にテンションが上がったって、それだけの話なんですけど、熱酷かったときの気分の落ちようが酷かったので、こんなことに一喜一憂できるのが、なんだか嬉しかったんです。
それはさておき、最後まで読んで下さり、本当に、ありがとうございました!
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