ひとくち日記:私と油彩
もう二度とやることはないだろうとまで思っていた油彩をやり始めている。
なぜ、もう二度とやることはないだろうとまで思い詰めたかといえば、油絵が大好きだったから。好きで好きで、でも好きだからこそ至らないことばかりが目に入って、結局やめてしまった。
なぜ今やる気になったのか。私にもわからない。もしかしたら、先日行った美術館から刺激を受けたからなのかもしれない。たまたまどこかで見た何かが、きっかけなのかもしれない。
きっかけを積み重ねて、絵を描きたいと改めて思ったとき、私はアクリルでも、水彩でもなく、版画でもなく、油絵をやりたいと思った。
時間がかかるのも承知で、それでもやりたいと思った。
まるで、別れた恋人を思い返すように、油彩をやりたいと思い身体を起こす。
案の定、やりはじめたら時間や画材の準備、汚れなど、気がかりなことは多い。でも、久しぶりに埃だらけの油彩道具を引っ張り出したときのドキドキ感とか、筆を持って色を塗りたくる感触、絵の具を混ぜるときのわくわく感が、あの日遠ざけてしまった感覚を刺激してくれている感じがする。
純粋に、今は「うまくいかないこと」も楽しい。うまくいかないならどうしたらいい?と考えるのが、楽しい。絵の具の乾燥を待つ時間すら、今は愛おしく思う。まだかまだかと待っている自分が子供のようで、少しおかしいくらい。
何度投げ出しても再び「やってみたい」とか「愛してみたい」と思うものは、死ぬまで共に歩むのかもしれない。
私は、死ぬまで油絵と歩むのか。それはまだわからないけれど、きっと、また嫌いになっても好きになるんだろう。
そうして今日もまたキャンバスに向かって、私は愛や恋の感情を絵の具に乗せていく。
完成に向けて一歩一歩、着実に。