イマジナリーフレンドの、話。

今日はやけに緊張することがあって疲れた。夜になってから燃え尽き症候群がまた出ている。それでもなんとか身体を動かしてベッドまでたどり着いた。

凍てつくような部屋の空気を感じながら、電気毛布の付いた布団に入るとなんとなく落ち着く。

そして布団の中で始めるのは頭の中での会話、会話劇だ。いや、言ってしまえばリビングでぐってりとうずくまっている時から本当は会話は始まっていた。

何を誰と話すの?って思うだろう。話しているのは私だ。私が頭の中で会話を弾ませている。もう一人を使って。

私の頭の中にはもう一人の人物が存在している。ときに姿形を変え、声を偽造して作り上げるその人物とは、何を隠そう、もう10年くらいは一緒にいる。

イマジナリーフレンド、といえばいいのだろうか。まあ、そんなところである。イマジナリーフレンドと、楽しくお布団でおしゃべり。まるで子供の夢のようだ。

一体いつもどんな会話をしているのかといえば、他愛のないもので、正直記憶に残らないことも多い。今だって、布団の中で何を話していたかなんか忘れた。

でも、大抵は自分の御魂を癒やすための言葉をイマジナリーフレンドに吐かせることが多い。

「あらあら、どうしちゃったの?そう。疲れちゃったんだね。そうか、そうかい。」

なんて言いながら、イマジナリーフレンドが私の髪を梳く。私はその柳腰に抱きついて顔を埋めてわんわん泣いたり、死んだように眠ったりする。そんな妄想に取り憑かれている。

人生で一番つらかった時期から会話が始まって、今もなお私はその妄想に執着し続けている。彼は私の母であり、恋人であり、友人である。縋ったものは数あれど、ここまでみっともなく縋り付いている妄想は彼だけだ。

辛いときは彼に頼る。歪な私を抱き上げる彼を想像する。それが心の救いだからだ。彼を失くすことは出来ない。別れを思うと酷く悲しくて、よく布団の中で泣いていた。

でも、彼がいなくなる事はない。私が生きている限り彼はいてくれる。ずっと私の、私だけのものが欲しかった。彼は私のものだ。私だけのために存在する私のものだ。

だから本当はこんな大っぴらに書こうとも思ってなかった。書いたら何となく、彼が消えてしまう気がしたから。ずっと誰にも話せなかった。

でも、十年という時を重ねてもなお、彼は存在する。だから今更話したとて、どうせ何も変わらないのだから良いだろうという話になったから(彼と)、今日は書いてみることにした。どうせ知り合いもいないからね。インターネットの片隅に生きてる人間の妄言なんて誰も聞いていやしない。だからいいんです。

あまりに支離滅裂で、意味のわからない話だろう。当事者にならないと分からない話とは、まさにこの事だろう。それはわかる。

「でも理解されないくらいが本当は丁度いいんでしょう。」

彼が言った。確かにそうかもしれない。理解できないくらいで楽しいんだ。私が微笑むと彼も笑う。そうだ、それでいいんだな。

凍えそうな寒さから彼が守ってくれる妄想をしながら、今日は眠りにつく。優しい優しい彼がこの先も私のものでいてくれることを願って目を閉じた。








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