元カレと三丁目の夕日
どうしてかどうしても忘れられない思い出がある。
彼のことは、彼、つまり元彼のことなのだけど、
もうだいぶ忘れてきているし、何より嫌いになってきている。
私のことを好きだと言いながら、大切にしてくれなかった彼のことを、努力してくれなかった彼のことを。
最近ではだいぶ嫌いになっていて、
前ほど甘酸っぱい思い出に浸ることはなくなってきた。
それなのにどうしても忘れられないことがある。
彼は本当に子供みたいな人で、というかもはや本当にお子ちゃまで、でもそんなところが愛おしくてたまらなかった。
彼は、『レイトン教授と最後の時間旅行』のエンディングを見ると、必ず泣いてしまう人だった。
映画の話ではなくて、DSのゲームの話だ。
彼は、三丁目の夕日シリーズを見ても必ず泣いてしまうと言っていた。
この前、2ヶ月ほど前、BSで放映されていたのでなんとなく見てみた。
彼が「お母さんがね、息子のために服を繕ってあげるんだけど、その時にお金を入れておくんだ。そうして何かあった時に開けてねって言って渡すんだ」と言っていたことを思い出した。今考えると最大のネタバレである。
私も今してしまったけれど。
彼はでも、三丁目の夕日ではどこのシーンで必ず泣くんだろう。
私は、小説家崩れの吉岡秀隆が、小さいスナックを切り盛りしてる小雪に恋をして、きっと幸せにするから結婚してくれと、買えなかった結婚指輪を、エアで小雪の指にはめてあげる、あのシーンでぽろぽろと泣きました。
君はあそこで泣くかい?
たぶんだけど、泣かないんじゃないかなと思う。
たぶんだけど、いいシーンだな、と思うだけなんじゃないかなと思う。
どうしてあそこで小雪が泣くのか、分かる?
いつか分かってね。
そうしたら、もしかしたら
私がなんで泣いたのかも、分かるかもしれないから。