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トランヴェールに乗って

「トランヴェール」とは、
フランス語で「緑の列車」という意味らしい。
JR東日本のこの旅情を誘う車内誌は気に入っている。

東京から北へ行く新幹線は年に何回も乗る訳ではないけれど、トランヴェールの巻頭は、沢木耕太郎が旅に纏わるエッセイを寄稿してるので、必ず読むようにしている。

沢木耕太郎と言えば、深夜特急。
バックパッカーと言えば、沢木耕太郎。

高校生の頃は、沢木耕太郎の文庫を読んでは旅への思いを馳せた。大学生になったらアルバイトをしてお金を貯めて彼のように世界を旅してみたい!というのが十代の頃の夢だった。

今月号は彼が子供の頃に房総の岩井海岸に臨海学校へ行った事、今までに感じた事がない高揚に包まれ、とってもワクワクした事、半世紀以上経って訪ねた今もその場所は少なからず面影を残していた事など、微笑ましくも素朴なエピソードで心が和んだ。

何処かへ行って、何かを感じたり、知らない土地の料理を食べたりという、取り留めのない事が実はとても愛おしく、かけがえのない経験であって、大切な思い出になる。

70歳を越えた沢木耕太郎が、半世紀以上前の出来事を昨日の様に書き起こせるのは、記憶力と文才に他ならないが、「旅で感動した事を伝えたい」というシンプルな信念がずっと続いている事に感動した。

新庄からはレンタカーを借りた。

今回は有り難い事に運転は友達任せ。
先ずは今宵の酒の共、馬刺しを専門店で買う。
渋いけど、とても粋な食旅の始まり。

ランチは金山餃子園の塩もつラーメン。
あっさりスープに鳥もつとうずらの卵煮、
メンマに蒲鉾というシンプルな具材。
自家製の麺が少し縒れていて美味い。
スープも塩味の素朴な風味が味わい深い。
幸先が良い。

まだ観光地化されていない幻想の森。
山形に屋久島のような古代杉があった。
悪路なので行くまでにちょっと難ありだけど、
寄り道して良かったと思える場所だった。

先月の大雨ではかなり増水したらしいが、
穏やかさを取り戻した最上川。
滔々とした川の流れと紅葉を眺る。

今宵の宿は肘折温泉の西本屋旅館。
三連休なのに湯治宿は一泊二食付きで5,900円。なんて良心的なのでしょう。
昼に買った馬刺しも追加して、お腹いっぱい。
宿内に温泉が二つあって、
朝は違うお湯に入れた♪

去年行った四万温泉は少し寂れてしまっていたけど、肘折温泉は案外賑わっている印象。酒屋がなど素敵な場所もあった。温泉に地酒、good night.

宿に戻ったらすぐ寝入ってしまった。
翌朝は早起きして朝市へ。

朝市で食用菊を買っている人が多くいた。
旅館の朝食でもお浸しが出された。
美しい金色の御菜は味もピカイチ。

地野菜の漬物も美味しそう。

こじんまりとした温泉街であるが、
とても楽しめた。

肘折温泉を後にして、寒河江市の古澤酒造へ。
創業天保七年という事は江戸時代。

日本は素晴らしい。
全国津々浦々の生活の中にこういう
世界遺産みたいな会社が地道な努力で
経営を続けている。
お土産で買った冷やおろしをpaypayで支払い。
やはり、生き残る会社は時代の変化に
柔軟に対応しているのだ。

山形一寸亭という蕎麦屋でランチ。
とても有名なお店らしく、かなり並んだ。
冷たいラーメンは知ってたけど、
冷たい肉そばは初体験。

見た目は地味で、
普通の田舎蕎麦みたいな感じ。
しかし、これはかなり旨かった。
膜のように張った鶏の脂が
スープの上でギラギラと輝く。
東京では食べられない味に出会えて嬉しい!

山形駅前は特筆すべきものはなし。
駅前の再開発は中途半端に都会の要素を盛り込んで、便利になったように見せかけ、見事に失敗しているように感じた。
取り壊したビルの跡地はそのまま空き地や駐車場になってしまい、駅舎だけは綺麗になったけど活気を感じない。

かつて沢木耕太郎が旅した風景の殆どは時を経て失われてしまった。

自分が見てきた風景もきっと同じ運命を辿るのであろう。昔、山形駅を訪ねた時より駅前の賑わいは失われてしまっているように感じた。

やっぱり駅前は人が集まる場所であってほしい。土地の個性を感じる事ができる場所であってほしい。
そう願わずにはいられない旅であった。

#トランヴェール
#山形駅

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