【麻酔】アナフィラキシーと心停止、アドレナリン投与法の違いとは
116C-17 アナフィラキシーと心停止、アドレナリン投与法の違いとは
筋肉内?静脈内? 心停止の患者さんにアドレナリンを投与。適切な経路はどれでしょうか?
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正解は、d. 静脈内です。
では、なぜ静脈内投与が正解なのか、他の選択肢はどうして違うのか、一緒に詳しく見ていきましょう。
心停止時のアドレナリン投与について
心停止の現場では、アドレナリンの静脈内投与が基本となります。アドレナリンは、強力な血管収縮作用と心収縮力増強作用を持ち、心臓の機能回復を促すために用いられます。
しかし、心停止時には全身の血流が著しく低下しています。そのため、皮下や筋肉内への投与では薬剤の吸収が遅れ、効果的な治療になりません。迅速に効果を得るためには、静脈路を確保して直接投与することが重要です。
各選択肢の解説
a. 皮下投与
皮下投与は、皮膚の下の脂肪組織に薬剤を注射する方法です。一般的に、ゆっくりと薬剤を吸収させたいときに用います。しかし、心停止の緊急時には効果発現が遅れるため適していません。
b. 皮内投与
皮内投与は、皮膚の表皮と真皮の間にごく少量の薬剤を注射する方法です。主にアレルギー検査や一部のワクチン接種で使われます。心停止時の薬剤投与には不適切です。
c. 筋肉内投与
筋肉内投与は、筋肉の中に薬剤を注射する方法です。アナフィラキシーショックの初期対応でアドレナリンを投与する際に用いられます。しかし、心停止時には筋肉への血流も低下しており、十分な薬剤吸収が期待できません。
d. 静脈内投与(正解)
静脈内投与は、薬剤を直接血管内に入れる方法で、即効性があります。心停止時のアドレナリン投与では、この方法が最も適しています。
e. 動脈内投与
動脈内投与は、動脈に直接薬剤を注入する方法ですが、技術的に困難であり、動脈損傷などのリスクも高いです。心停止時の緊急対応としては現実的ではありません。
心停止の種類と対応策
心停止には、以下の4つのリズムがあります。
無脈性電気活動(PEA)
心静止
無脈性心室頻拍(pulseless VT)
心室細動(VF)
無脈性電気活動と心静止の場合、アドレナリンの静脈内投与が中心的な治療となります。
一方、無脈性心室頻拍と心室細動では、電気的除細動(AED)が最優先されます。この場合も、必要に応じてアドレナリンの静脈内投与が行われます。
アナフィラキシーショック時との違い
ここで混同しやすいのが、アナフィラキシーショック時のアドレナリン投与です。
アナフィラキシーショック:筋肉内投与が基本
心停止:静脈内投与が基本
アナフィラキシーショックでは、筋肉内投与でも十分な薬剤吸収が期待できるため、この方法が選ばれます。しかし、心停止時には全身の血流が低下しているため、筋肉内投与では効果が不十分です。
国家試験のポイント
心停止時のアドレナリン投与は、静脈内投与が原則です。
AED適応リズム(心室細動、無脈性心室頻拍)では、電気的除細動が優先されます。
アナフィラキシーショックと心停止でのアドレナリン投与経路の違いを明確に理解しましょう。
まとめ
心停止の緊急対応では、静脈路を確保してアドレナリンを静脈内投与することが重要です。他の投与経路では、薬剤の効果発現が遅れるため適していません。
また、心停止の種類によって対応が異なること、アナフィラキシーショック時のアドレナリン投与経路との違いも押さえておきましょう。