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やさしく解説 【応力ひずみ曲線】

なぜ材料試験が必要なのか?

歯医者の世界には、意外と過酷な環境があるんだ。例えば、クラウンやブリッジといった歯の修復物。これらは、毎日何度も噛むたびに圧力を受ける。義歯のクラスプなんて、着けたり外したりするたびに力がかかる。だから、口の中で使う材料には、相当な強さが求められるんだ。

じゃあ、どんな材料を選べばいいのか?それを見極めるには、材料試験のことをよく知る必要がある。そして、その試験で分かる「機械的性質」というやつを、材料ごとに比べてみなきゃいけない。

応力とひずみ

さて、材料に力を加えると、中に「内力」というのが生まれる。これは外からの力に抵抗しようとする力だ。例えば、棒の両端を引っ張ったとする。このとき、棒の断面積あたりにかかる力のことを「応力」っていうんだ。単位は「N/m²」か「Pa」を使う。

今度は、その棒がどれだけ伸びたかを見てみよう。これを「ひずみ」っていうんだ。元の長さに対して、どれだけ長さが変わったか。その比率。引っ張ると正の値、押すと負の値になる。普通はパーセントで表すことが多いな。

応力ひずみ曲線

さて、ここからが本題だ。物体に力を加えると、どうなると思う?そう、変形するんだ。でも、力が小さければ、力を取り除けば元に戻る。これを「弾性変形」っていう。

ところが、ある限界を超えると、もう元には戻らない。これが「塑性変形」だ。さらに力を加え続けると、ついには壊れちゃう。

この関係を調べるのが「引張試験」ってやつ。棒の両端を引っ張って、どれだけ伸びるか測る。そして、「応力」と「ひずみ」の関係をグラフにするんだ。これを「応力-ひずみ曲線」っていう。

歯科で使う合金の典型的な曲線を見てみよう。

最初のうちは、応力とひずみが比例関係にある。これを「フックの法則」っていうんだ。で、この法則が成り立つ最大の応力が「比例限」。

そして、この比例関係の傾きが「弾性係数」。特に、引っ張りや圧縮の場合は「ヤング率」って呼ぶんだ。この値が大きいほど、材料は弾性変形に強いってわけ。​​​​​​​​​​​​​​​​

弾性限って知ってる?これは、物体にどれだけ力を加えても、力を取り除けば元に戻る最大の力のことだ。比例限より大きいんだが、正確に測るのは難しい。

で、この弾性限までに物体が吸収できるエネルギーを「弾性エネルギー」っていうんだ。「レジリエンス」とも呼ばれる。グラフで見ると、弾性限までの面積がこれに当たる。

ピンク色の部分=レジリエンス

さて、弾性限を超えて力を加えると、力を取っても完全には戻らなくなる。この残った変形を「永久ひずみ」っていう。

次は「降伏点」と「耐力」だ。軟鋼なんかだと、ある点で急に応力が下がって、そのあとはひずみだけが増える。(軟鋼は比較的やわかい金属のこと)
これが「降伏」っていう現象だ。でも、歯科で使う合金じゃ、こんな現象はあまり見られない。だから「耐力」っていう指標を使う。これは、0.2%の永久ひずみが残る時の応力のこと

耐力は0.2%永久ひずみが残るときの応力

さらに力を加えていくと、最大の応力に達する。これを「引張強さ」っていう。そのあと、くびれができて破断する。破断までの伸びを「破断点」って呼ぶんだ。

その他の性質

靭性」っていうのもある。これは、材料が破断するまでに蓄えられるエネルギーのことだ。粘り強さを表す指標だね。

延性」と「展性」っていう言葉も覚えておこう。延性は引っ張られて伸びる性質、展性は薄く広がる性質だ。金属の中じゃ、金が両方とも一番優れてる。

逆に、ほとんど変形せずに壊れる性質を「脆性」っていう。石膏や陶材がその代表だ。

こうやって、応力-ひずみ曲線を見ると、材料の性質がよく分かるんだ。弾性係数が大きいのか、脆いのか、強いのか、柔らかいのか。

最後に面白い合金を紹介しよう。「形状記憶合金」っていうのがある。これは、どんなに変形しても、温めると元の形に戻るんだ。

超弾性合金」っていうのもある。NiTiワイヤーがこれだね。これは、大きく変形しても、力を取り除くとすぐに元に戻る。

斜線の弾性エネルギーを使用して、歯の矯正をおこなう


こんな風に、材料にはそれぞれ個性があるんだ。その個性を知って、うまく使いこなすのが腕の見せどころってわけ。​​​​​​​​​​​​​​​​

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