【放射】MRIから脂肪を判断する

116A-47 MRIから脂肪を判断する


最近の歯科医師国家試験では、見た目と画像検査の結果が一致しないような問題が出題されます。

117A-47も、口の中の写真だけを見るとラヌーラっぽいんです。
でも、MRIの結果を見ると...?

117A-47の問題文を要約すると口の中に異変を感じて病院に行った患者さんのお話です。どんな症状だったのでしょうか? そう、舌の下がはれていたんです。

歯医者は患者さんの口の中を写真に撮りました。それだけでなく、MRIという特殊な機械で頭の断面図も撮影しました。MRIには2種類あって、「T1強調像」と「脂肪抑制T2強調像」というものです。

ここで補足しますね。
T1強調・T2強調・脂肪抑制、この3つの違いについて解説します。

MRIには2つの主役がいます。
T1強調画像とT2強調画像です。
この2つ、何が違うのか気になりませんか?

まずはT1強調画像。これは脂肪を白く、水を黒く映し出します。
体の構造をくっきり見せるのが得意なんです。骨や筋肉の様子がよくわかります。

一方、T2強調画像。こちらは水を白く、脂肪を灰色っぽく映します。
異常を見つけるのが得意です。腫瘍や炎症、怪我した部分。そういったものが白く光って見えるんです。

でも、脂肪が邪魔して見えにくいことってないでしょうか?

そこで登場するのが、脂肪抑制T2強調像です。
これは、T2強調画像から脂肪の信号を消し去る魔法のような技術。脂肪の多い部分の異常も、くっきり見えるようになるんです。

さて、ここで問題を確認してみましょう。

116A-47 口底部の腫脹を主訴として来院した思者の口腔内写真、MRIT1強調横断像及び脂肪抑制T2強調横断像を別に示す。

最も考えられるのはどれか。1つ選べ。
a 脂肪腫
b 神経鞘腫
c ラヌーラ
d 類表皮囊胞
e 甲状舌管囊胞

出典:厚生労働省

まず、口の中の写真を見ると、舌の下の片側だけがはれています。

次に、MRIの画像を見てみましょう。
T1強調像では白く映っている部分があります。

これが面白いことに、
脂肪抑制T2強調像では黒く映っているんです。


この変化は何を意味しているのでしょうか?
そう、脂肪の存在を示しているんです。脂肪は、T1強調像では白く、脂肪抑制T2強調像では黒く映るという特徴があるんです。

ということは、舌の下のはれものの正体は「脂肪」だと考えられます。つまり、正解は a) 脂肪腫 なんです。

他の選択肢はどうでしょうか?

b) 神経鞘腫は、MRIでまだらに映るので、今回の症例とは違います。

c) ラヌーラは確かに舌の下にできるのですが、中身が液体なので、T2強調像で白く映るはずです。今回は黒いので違いますね。

d) 類表皮嚢胞は、舌の下の真ん中にできるもので、今回のように片側だけというのは珍しいです。

e) 甲状舌管嚢胞も、舌の下の片側だけにできるのは珍しいですし、中身が液体なのでT2強調像で白く映るはずです。

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