【補綴】複製義歯と他の義歯の違い
116A-88,89 複製義歯と他の義歯の違い
116A-88,89 85歳の女性。下顎義歯の咀嚼困難を主訴として来院した。使用中の義歯は約8年前に製作したという。適合試験の結果。義歯を預かりリラインを行うこととした。現義歯しか所持していなかったので、義歯預かり中の機能を維持するためにある補装置を製作した。
製作中の写真と装着時の写真を別に示す。
85歳の女性患者さんの下顎義歯リラインについて考えてみましょう。この患者さん、義歯が合わなくなってきたと訴えてこられました。そこで、リラインをすることにしたんです。でも、ここで問題が。リラインのために義歯を預かっている間、患者さんはどうやって過ごせばいいのでしょうか?
そこで登場するのが、今回の主役。義歯預かり中の機能維持のために作った補綴装置です。写真を見てください。アルジネート印象材の中に既存の義歯が埋まっていますね。これ、何を作っているんでしょうか?
![](https://assets.st-note.com/img/1723498363825-YkfaqVK1as.png?width=1200)
a. 移行義歯
b. 最終義歯
c. 即時義歯
d. 複製義歯
e. 診断用義歯
正解は d. 複製義歯 です。なぜでしょうか?それぞれの選択肢を1つずつ細かくみていきましょう。
まず
a.の移行義歯って聞いたことありますか?
簡単に言うと、「将来、総入れ歯になることを見越して作る義歯」のこと。でも、それだけじゃないんです。もっと深掘りしてみましょう。
まず、移行義歯が必要になる状況を想像してください。患者さんの口の中に、まだ数本の歯が残っている。でも、その歯も長くはもたなそう。こういう時、いきなり全部の歯を抜いて総入れ歯にするのは、患者さんにとってはかなりのショックです。そこで登場するのが移行義歯なんです。
移行義歯の特徴と利点、いくつかあります。
段階的な治療ができる
歯を一本ずつ抜きながら、その都度義歯を調整していく。患者さんにとっては、急激な変化がないので安心感があります。噛む機能を維持できる
特に高齢の患者さんや病気を抱えている方にとって、食事ができなくなるのは大問題。移行義歯なら、歯を失っても噛む機能を保てます。義歯に慣れる時間がある
いきなり総入れ歯だと、違和感がすごいんです。でも移行義歯なら、少しずつ義歯の部分が増えていくので、徐々に慣れていけます。
移行義歯の重要なポイントは、「将来を見据えた設計」です。今の状態だけでなく、これから起こる変化も考えて作るんです。そうすることで、患者さんの口の中の変化にも柔軟に対応できるわけです。
で、今回の問題では、作成しているものは移行義歯ではありませんね。よってこれは誤りです。
b.の最終義歯を選ぶ人はいないと思います。ここは説明は割愛しますね。
c.の即時義歯はどうでしょうか?
即時義歯、これ、歯を抜いてすぐに入れる義歯のことです。普通の義歯だと、歯を抜いてから入れるまでに時間がかかりますよね。でも、即時義歯なら、その待ち時間をグッと短くできるんです。
即時義歯の特徴って何でしょうか?
まず、歯を抜いたその日に装着できるんです。それを可能にするのが、歯を抜く前に型を取って、あらかじめ義歯を作っておくという方法なんです。
さて、即時義歯のいいところをいくつか挙げてみましょう。
見た目がすぐに良くなります。特に前歯の場合は効果絶大ですね。
食事や会話がスムーズにできます。歯がない状態で苦労する必要がありません。
心理的な不安が減ります。「歯がない」という状態に悩まなくて済むんです。
お財布に優しいです。健康保険が使えるので。
でも、もちろん課題もあります。
調整が必要になることがあります。歯を抜いた後、歯ぐきの形が変わっていくので、それに合わせて義歯を調整する必要があるんです。
作り直しが必要になる可能性があります。1〜2か月後に、ぴったり合わなくなることがあるんです。
保険の制限があります。6か月以内に2回目の義歯を作ると、保険が使えなくなってしまいます。
即時義歯は、歯を抜いた直後から見た目も機能もバッチリ維持できるという大きなメリットがあります。でも、その後の調整や作り直しが必要になる可能性もあるんです。だから、患者さんの状況をよく考えて、メリットとデメリットをしっかり比較検討することが大切なんです。
いずれにせよ、即時義歯も今回のケースには当てはまりませんので、この選択肢も誤りですね。
では、e.の診断用義歯とはなんでしょうか?
簡単に言えば、本番の義歯を作る前の"お試し版"みたいなものです。でも、ただの練習用ではありません。これがあるからこそ、患者さんにぴったりの義歯ができるんです。
では、具体的に何をするのでしょうか? 主に3つの役割があると言われています。
観察と評価|診断用義歯を装着してもらって、患者さんの口の中の様子を細かくチェックします。咬み合わせはどうか、ちゃんと噛めているか、発音に問題はないか。こういった情報を集めて、本番の義歯づくりに活かすんです。
患者さんの反応を見る| 義歯を入れてみて、患者さんがどんな感想を持つか。違和感はないか、痛くないか。こういった生の声を聞くことで、より快適な義歯を作るヒントが得られます。
リハビリテーション| 初めて義歯を使う人にとっては、慣れるまでが大変です。診断用義歯は、いわば"練習用"としても使えます。本番の義歯を入れる前に、少しずつ慣れていってもらうわけです。
こうして得られた情報をもとに、最終的な義歯を設計していきます。だから診断用義歯は、良い義歯を作るための重要なステップなんですね。
覚えておいてほしいのは、診断用義歯はあくまで一時的なものだということです。でも、この"お試し期間"があるからこそ、患者さんにとってベストな義歯ができるんです。最終的な義歯の適合性や機能性、そして装着感を高めるための、大切な過程なんですね。
正解の d. 複製義歯 について
複製義歯(コピーデンチャー)とは、既存の義歯を基にして新しい義歯を作成する方法です。この手法は、現在使用している義歯の良い点を活かしつつ、不具合を改善することを目的としています。以下に複製義歯の特徴とメリットを詳しく説明します。
複製義歯は、既存の義歯をそのまま複製したもの。患者さんの口腔内に合っているし、短時間で作れる。リライン中の機能維持にぴったりですね。
さて、この複製義歯。装着する時に何か処置をしたようです。写真を見てください。義歯床の内面に何か材料が盛られていますね。これは何でしょうか?
![](https://assets.st-note.com/img/1723498363858-Ns4IB28PzH.png)
a. 概形印象
b. 筋圧形成
c. 咬座印象
d. リリーフ
e. 暫間リライン
正解は e. 暫間リライン です。なぜでしょうか?
まず他の選択肢について。
a.概形印象は大まかな印象採得ですね。既成トレーとアルジネートを用いて口腔内を印象採得するので違いますね。
b.筋圧形成は義歯床辺縁を形作る処置。個人トレーにモデリングコンパウンドをもって患者さんに口を動かしてもらう処置でしたね。なので違います。
c.咬座印象は、つまずきやすい項目なので解説しますね。
咬座印象は、義歯製作の精度を高めるための重要なステップであり、主にろう義歯を用いてより精密な印象を取る方法です。
![](https://assets.st-note.com/img/1723498363863-41tAz8o1zN.png?width=1200)
咬座印象の目的は、製作中に生じる歪みを修正することです。これにより、最終的な義歯のフィット感が向上し、患者さんの快適性が増します。
具体的な方法としては、人工歯の排列が終わったろう義歯を使用し、義歯の内面にシリコン印象材を塗布して口腔内で咬合させて印象を採得します。また、義歯を口腔内に挿入し、軽く咬合させて適合を確認しながら印象を採取します。
この方法により、義歯の粘膜適合精度が向上し、咬合時の圧力を再現することで、より自然なフィット感を得られるんですね。
d.リリーフは粘膜への圧力を軽減する処置。これは全然違いますよね。
e.暫間リラインは、一時的に義歯の適合性を改善する処置。複製義歯を装着する際、口腔内にぴったり合うようにするために行うわけですね。
で、暫間リラインって、どんな処置なのでしょうか?
簡単に言うと、義歯をより快適に使えるようにするための一時的な調整方法です。今回は、複製義歯に対して行なっていますから、複製義歯を快適に使えるために行なっているわけです。
具体的には、義歯の粘膜に触れる面に新しい材料を付け加えて、口の中にぴったりフィットするように調整します。
暫間リラインでは、特に軟らかい材料がよく使われます。シリコーンや粘膜調整材ですね。今回の問題では、おそらく粘膜調整材が使用されています。