【生理】静止膜電位のなりたちを徹底解説


01. 細胞膜と輸送

私たちの体は、たくさんの細胞(約60兆)でできています。その細胞を包んでいるのが細胞膜なんです。でも、ただ包んでいるだけじゃないんですよ。細胞膜は、細胞の中と外をつなぐ重要な役割を果たしているんです。

どんな役割かって?簡単に言えば、「物質の出入りを管理する門番」みたいなものです。

細胞膜の構造って?

細胞膜の主な成分は脂質です。特に、リン脂質というものが多いんです。これって面白い特徴を持っています。水が好きな部分(親水性)と水が嫌いな部分(疎水性)の両方を持っているんです。

で、細胞膜はリン脂質二重膜って教わったことあると思います。ここがちょっとややこしいんですよね。

リン脂質二重膜ってどんな構造なの?

リン脂質という分子が2層に重なった構造なんです。この分子、面白い特徴があって、頭の部分は水を好む(親水性)けど、尾っぽの部分は水を嫌う(疎水性)んです。
だから、この分子が2層に並ぶと、水を好む頭の部分が外側と内側を向いて、水を嫌う尾っぽの部分が中央に集まるんです。まるで、サンドイッチみたいな構造ですね。

ちなみに、この膜、どのくらい薄いと思いますか?
なんと、約7.5ナノメートル(nm)なんです。髪の毛の太さの約1万分の1くらいですよ。すごく薄いです。

でも、細胞膜は脂質だけじゃありません。そこにタンパク質がはめ込まれているんです。まるでモザイク画のように。だから「流動モザイクモデル」なんて呼ばれたりもします。

物質の出入りはどうやって?

細胞膜は、ある物質は通すけど、他の物質は通さない。これを「選択的透過性」と言います。でも、どうやって物質を通すんでしょうか?

大きく分けて2つの方法があります。

1. 受動輸送:エネルギーを使わずに物質を通す方法

単純拡散:小さな分子が膜を直接通り抜ける
促通拡散:特殊なタンパク質(チャネルやキャリア)を使って通す

2. 能動輸送:エネルギーを使って物質を通す方法

一次性能動輸送:ATPという物質のエネルギーを直接使う
二次性能動輸送:ATPのエネルギーを間接的に利用する

面白いのは、これらの輸送方法にはそれぞれ専門の「道具」があることです。

受動輸送の代表格はイオンチャネルとキャリアタンパクですが、

例えば、イオンチャネルというのは、特定のイオンだけを通す穴みたいなものです。電圧で開閉するものや、特定の物質が結合すると開くものなどがあります。

また、キャリアタンパク質は、まるでエレベーターのように物質を運びます。グルコース(ブドウ糖)を運ぶグルコーストランスポーターなんかがその一例です。

能動輸送の代表格は、ナトリウム-カリウムポンプです。これは、細胞の中と外でナトリウムとカリウムの濃度を調整する重要な役割を果たしています。

こうした仕組みのおかげで、細胞は必要な物質を取り込み、不要な物質を排出できるんです。まさに、細胞の生存に欠かせない「門番」なんですね。


02. 細胞膜を介したイオンの動き

じゃあ細胞膜を介したイオンの動きについて説明していきますね。ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、ここは生理学を理解する上で非常に重要になります。

まず、イオンって何?

イオンというのは、電気を帯びた粒子のことです。例えば、ナトリウムイオン(Na+)やカリウムイオン(K+)などがあります。これらのイオンが細胞の中と外を行き来することで、いろんな生命活動が起こるんです。

イオンはどう動く?

イオンは基本的に、濃度の高いところから低いところへ移動しようとします。これを「拡散」と呼びます。でも、イオンには電気の性質もあるので、単純に濃度差だけで動くわけではありません。

細胞膜にはイオンチャネルという「穴」があって、特定のイオンだけを通します。例えば、カリウムチャネルはカリウムイオンだけを通すんです。

面白いのは、イオンが移動すると電気的な力が生まれることです。この力と拡散の力がバランスを取ると、イオンの動きが止まります。これを「平衡状態」と呼びます。

平衡電位って何?

平衡状態になったときの電位差を「平衡電位」と言います。これは、細胞の中と外でのイオンの濃度差から計算できるんです。

例えば、細胞の外にカリウムイオンが5ミリモル、中に100ミリモルあるとします。このとき、カリウムの平衡電位は約-75ミリボルトになります。マイナスの値になるのは、細胞の内側が外側に比べて電気的に負の状態になるからです。

ナトリウムイオンの場合は逆で、細胞の外に150ミリモル、中に15ミリモルあると、平衡電位は約+58ミリボルトになります。プラスの値になるのは、細胞の内側が外側に比べて電気的に正の状態になるからです。

これらの計算には「ネルンストの式」という数式を使います。難しそうに見えますが、要するに「イオンの濃度差と電気的な力のバランス」を表しているんです。
(ネルンストの式はたぶん出題されないので覚えなくていいです。)

なぜこれが大切なの?

この仕組みは、神経細胞が信号を伝える仕組みの基礎になっています。また、心臓の鼓動や筋肉の収縮など、体のさまざまな機能にも関わっているんです。

つまり、細胞膜を介したイオンの動きは、私たちの体の中で起こっている「小さな電気現象」なんです。これがあるからこそ、私たちは生きていられるし、考えたり動いたりできるんですね。


03. 静止膜電位とは?


細胞の電気的な性質について、もう少し詳しく見ていきましょう。

静止電位って何?

まず、「静止電位」という言葉をよく聞きますよね?
これは、細胞が何もしていない「静止状態」のときの電位差のことです。普通、細胞の中は外に比べて電気的にマイナスになっています。典型的な神経細胞では約-65ミリボルトくらいです。

でも、なんで細胞の中がマイナスなの?

これには、主に3つのイオンが関係しています。カリウムイオン(K+)ナトリウムイオン(Na+)塩化物イオン(Cl-)です。

細胞膜には、これらのイオンを通す「チャネル」があります。でも、全てのイオンを同じように通すわけじゃないんです。カリウムイオンを最も通しやすく、ナトリウムイオンはあまり通しません。

この「通しやすさの違い」が、静止電位を作り出す鍵なんです。

どうやって計算するの?

静止電位を計算するには、「ゴールドマン・ホジキン・カッツの式」というのを使います。難しそうな名前ですが、要するに「それぞれのイオンの濃度と通しやすさを考慮して電位を計算する」という意味です。

例えば、細胞の外と中でのイオン濃度と、イオンの通しやすさ(透過性)が分かっていれば、静止電位を計算できます。

イオンの濃度差はどうやって作られる?

面白いのは、細胞の中と外でイオンの濃度が全然違うことです。例えば、カリウムイオンは細胞の中に多く、ナトリウムイオンは外に多いんです。

この濃度差を作り出しているのが、「ナトリウム-カリウムポンプ」です。

さっき、

能動輸送の代表格は、ナトリウム-カリウムポンプです。これは、細胞の中と外でナトリウムとカリウムの濃度を調整する重要な役割を果たしています。

と説明しましたね。能動輸送とはエネルギーを使って物質を通す方法でしたね。

で、このナトリウム-カリウムポンプ。これは、細胞膜にある特殊なタンパク質で、ナトリウムを外に出し、カリウムを中に入れる働きをしています。

カリウムイオンは細胞の中に多く、ナトリウムイオンは外に多いんでしたね。

てことは、つまり、ナトリウム-カリウムポンプはエネルギーを使って、濃度差に逆らってイオンを運ぶんです。

なぜこれが大切なの?

この仕組みは、神経細胞が信号を伝える基礎になっています。静止電位があるからこそ、神経細胞は素早く反応して信号を伝えられるんです。

また、この仕組みは体のほかの部分でも重要です。例えば、心臓の鼓動や筋肉の動きにも関わっています。

つまり、私たちの体の中では、常にイオンが動き回り、電気的な状態が保たれているんです。これが「生きている」ということの一部なんですね。

難しい数式や専門用語が出てきましたが、要するに「細胞は賢くイオンを管理して、自分の電気的な状態を調整している」ということです。


04. 結局なんなの? 活動電位と興奮伝導

では次に、神経細胞の興奮伝導について、少し詳しく見ていきましょう。

神経細胞はどうやって信号を伝えるの?

神経細胞は、電気信号を使って情報を伝えます。でも、電話線とは少し違うんです。

電話線は銅線でできていて、電子がすーっと流れていきます。でも神経細胞の中では、イオンという荷電した粒子が信号を運びます。これが「活動電位」という電気的な波を作り出すんです。

ケーブル理論って何?

神経細胞の軸索(細長い突起)は、電気ケーブルみたいな性質を持っています。これを理解するのに「ケーブル理論」というのを使います。

簡単に言うと、軸索は電気を通す管のようなもので、中には電気を通しやすい液体(細胞質)が入っています。そして、その周りを囲む膜には電気を通しにくい性質があります。

この構造のおかげで、電気信号がある程度遠くまで伝わることができるんです。でも、完璧じゃありません。距離が離れるほど、信号は弱くなっていきます。

じゃあ、どうやって遠くまで信号を送るの?

ここで登場するのが「活動電位」です。これは、神経細胞が作り出す電気的な波のようなものです。

活動電位のすごいところは、自分で自分を増幅できること。

ある場所で活動電位が起こると、その隣の場所も刺激されて新しい活動電位を作り出すんです。これが連鎖反応のように次々と起こって、遠くまで信号が伝わっていきます。

この仕組みを「興奮伝導」と呼びます。まるで、ドミノ倒しのように次々と活動電位が起こっていくイメージです。

なぜこれが大切なの?

この仕組みがあるからこそ、私たちの脳は体のすみずみまで素早く指令を送れるんです。例えば、目で見た情報を脳に送ったり、脳からの命令を筋肉に伝えたりするのに使われています。

つまり、神経細胞の興奮伝導は、私たちが考えたり動いたりする能力の基礎になっているんです。体の中で起こっている、目に見えない電気の波。それが私たちの生命活動を支えているんですね。


05. 跳躍伝導とは?ミエリンについて

次は、「有髄神経線維」という特殊な構造を持つ神経線維について説明します。

有髄神経線維って何?

有髄神経線維は、神経細胞の軸索(細長い突起)の周りに「ミエリン」という絶縁体のような物質が巻きついた構造を持つ神経線維です。このミエリンが、神経の信号伝達を劇的に改善するんです。

どうやって信号伝達を改善するの?

  1. 絶縁効果
    ミエリンは電気を通しにくい性質があります。これによって、神経の信号(電気)が外に漏れるのを防ぎます。まるで、電線の周りにビニールを巻いているようなものです。

  2. 跳躍伝導
    ミエリンは軸索全体を覆っているわけではありません。「ランビエの絞輪」という、ミエリンのない部分が定期的に存在します。面白いことに、信号はこの絞輪から絞輪へと「跳び跳び」に伝わっていくんです。これを「跳躍伝導」と呼びます。

なぜ跳躍伝導が速いの?

  1. 集中的な信号増幅
    ランビエの絞輪の部分には、ナトリウムチャネル(信号を作り出す装置)が集中しています。これによって、信号が効率よく作られます。

  2. 無駄な部分をスキップ
    ミエリンで覆われた部分を信号が飛び越えることで、伝達速度が大幅に上がります。まぁ高速道路のインターチェンジだけを通って目的地に向かうようなものです。そうなれば、めちゃくちゃ早いですよね。

  3. 高い安全率
    あまり聞きなれないと思いますが「安全率」という概念があります。これは、次の絞輪に信号を伝えるのに必要な最小限の電流の何倍の電流が実際に流れているかを示します。普通は5倍くらいあるので、確実に信号が伝わると言われています。

有髄神経線維のメリットは?

  1. 速い伝導速度
    跳躍伝導のおかげで、信号の伝達速度が大幅に上がります。これは、素早い反応が必要な場面で重要です。

  2. エネルギー効率
    信号が絞輪だけを通るので、エネルギーの無駄が少なくなります。

  3. 細い軸索でも効率的
    ミエリンのおかげで、軸索が細くても効率よく信号を伝えられます。これによって、たくさんの神経線維を小さな空間に詰め込むことができます。

なぜこれが大切なの?

この仕組みがあるからこそ、私たちは素早く考えたり、動いたりできるんです。例えば、熱いものに触れたときに反射的に手を引っ込めたり、複雑な運動をスムーズに行ったりできるのは、この高速な信号伝達のおかげなんです。

また、この仕組みが壊れると病気になることがあります。例えば、多発性硬化症はミエリンが攻撃される病気で、信号伝達に問題が起きます。


06. 神経線維の分類

かなりの長文になってしまい、ここまで読んでいただけたたげでも大変嬉しいのですが、ようやくこの辺から国試で問われる内容になります。

これまでの内容を理解していると、以下の内容はかなり覚えやすくなっているはずです。

神経線維は、その大きさや構造によってさまざまな種類があります。これらを分類することで、それぞれの役割や特性を理解しやすくなります。

  1. 大きな分類:

    • A群:最も太い有髄線維

    • B群:中程度の太さの有髄線維

    • C群:最も細い無髄線維

  2. A群の細かい分類:

    • Aα:最も太く、最も速い

    • Aβ:中程度の太さと速さ

    • Aγ:やや細めで、中程度の速さ

    • Aδ:A群の中で最も細く、遅い

これらの分類は、線維の太さや伝導速度、そしてその機能と関係しています。

例えば:

  • 太い線維(Aα, Aβ):筋肉の動きや触覚、圧覚などを担当

  • 細い線維(Aδ, C):痛みや温度感覚、自律神経系の働きを担当

面白いのは、私たちが感じる痛みにも種類があって、それぞれ異なる神経線維で伝わるんです。例えば、「チクッ」という鋭い痛みはAδ線維、じわじわと広がる鈍い痛みはC線維で伝わります。


07. 興奮伝導の3原則

次に、神経線維での信号伝達(興奮伝導)の基本的なルールについて説明します。これを「興奮伝導の3原則」と呼びます。

  1. 不減衰伝導
    信号は途中で弱くならない。つまり、神経線維の始まりで起こった信号は、終わりまで同じ強さで伝わります。これは、途中で信号が増幅されるからです。

  2. 両方向性伝導
    信号は、神経線維の両方向に伝わることができます。ただし、実際の体内では、シナプス(神経細胞同士のつなぎ目)が一方通行なので、普通は一方向にしか伝わりません。 これは、道路の一方通行のようなものですね。道自体は両方向に行けるけど、交通規則で一方向にしているようなイメージです。

  3. 絶縁伝導
    隣り合う神経線維同士で信号が混ざることはありません。それぞれの神経線維は独立して信号を伝えます。 これは、電話ケーブルの中の個々の線が他の線に影響を与えないようになっているのと似ています。

なぜこれが重要なの?

これらの原則があるからこそ、私たちの神経系は正確に情報を伝えることができるんです。例えば:

  • 不減衰伝導のおかげで、脳から足先まで信号が弱まらずに伝わります。

  • 両方向性伝導は、同じ神経を使って異なる種類の情報を送れることを意味します。

  • 絶縸伝導のおかげで、さまざまな信号が混ざり合うことなく、正確に伝わります。

つまり、これらの原則は、私たちの体が正確に情報を処理し、適切に反応するための基礎となっているんです。



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