【外科】錯角化性扁平上皮と非角化性扁平上皮の違い

116B-2  錯角化性扁平上皮と非角化性扁平上皮の違い

今回は、顎骨内嚢胞の病理組織像について解説していきますね。特に、錯角化性扁平上皮と非角化性扁平上皮の違いを中心にお話していきます。

まず、問題文と画像を見てみましょう。

116B-2 顎骨内に発生した養胞のH-E 染色病理組織像を別に示す。診断名はどれか。1つ選べ。
a. 歯根囊胞
b.  含歯性囊胞
c. 歯原性角化囊胞
d. 側方性歯周囊胞
e. 石灰化歯原性囊胞

出典:厚生労働省

正解は、d. 歯原性角化囊胞です。なぜこれが正解なのか、詳しく見ていきましょう。

歯原性角化囊胞の最大の特徴は、「錯角化性扁平上皮」です。

錯角化扁平上皮: 錯角化とは角質層の細胞内に本来存在しない核が見られる状態を指します。これは過角化部分における錯角化(錯過角化)として認識されます。
この特徴的な上皮が嚢胞壁を裏層しているのが、歯原性角化囊胞の決め手となります。

画像だと、濃いピンク色の部分は、本来は核が存在しませんよね。角化しているので。だけど、今回は角(濃い紫)が確認されます。だから錯覚化していると判断できます。

ここで、H-E染色について少し説明しておきましょう。

H-E染色とは、ヘマトキシリンとエオシンという2つの染色液を使用する方法です。ヘマトキシリンは細胞核を青紫色に、エオシンは細胞質やコラーゲン線維をピンク色に染め分けます。この染色法によって、組織の構造をはっきりと観察することができるのです。

これらの特徴を念頭に置きながら、各嚢胞の上皮の特徴を見ていきましょう。

a. 歯根囊胞→非角化性重層扁平上皮
b.  含歯性囊胞→非角化性重層扁平上皮
c. 歯原性角化囊胞→錯角化性重層扁平上皮
d. 側方性歯周囊胞→非角化性重層扁平上皮
e. 石灰化歯原性囊胞→非角化性重層扁平上皮

5つの選択肢ってつまり、
錯角化性扁平上皮と非角化性扁平上皮の見分け方が重要なことがわかりますよね?

では、病理組織像を見る上で非常に重要な、錯角化性扁平上皮と非角化性扁平上皮の見分け方について学んでいきましょう。

まず、錯角化性扁平上皮の特徴から見ていきます。

主に3つのポイントがあります:

  1. 角化層が剥がれている様子が観察できます。

  2. 錯角化、つまり角化層内に核が存在していることが確認できます。

  3. 基底層では、円柱形の細胞が一列にきれいに並んでいて、平坦な印象を受けます。

錯角化性扁平上皮

さらに、錯角化性扁平上皮の特徴的な所見として、「オカラ状物質」と呼ばれるものがあります。これは、剥がれた角化層が嚢胞腔内に充満している状態を指します。まるでオカラのような見た目から、このような名称がついているんですね。

一方、非角化性扁平上皮はどうでしょうか。

こちらは「薄く」「均一」という言葉がキーワードになります。具体的には以下のような特徴があります:

  1. 上皮層全体が薄く、均一な印象を受けます。

  2. 上皮の全層がほぼ同じような所見を示します。つまり、層による違いがあまり目立たないのです。

  3. 当然ですが、角化層は観察されません。

非角化性扁平上皮

これらの特徴を頭に入れて、実際の病理組織像を見ていくと、徐々に違いがわかるようになってきます。

ここで、一つアドバイスです。病理組織像を見る際は、まず全体的な印象を掴むことから始めましょう。「薄くて均一か、それとも層構造がはっきりしているか」といった点に注目します。その後で、角化層の有無や基底層の細胞の並び方など、細かい特徴を確認していくのがコツです。

なぜこの違いを理解することが重要なのか、考えてみましょう。錯角化性扁平上皮は歯原性角化嚢胞に特徴的な所見です。

一方、非角化性扁平上皮は歯根嚢胞や側方性歯周嚢胞などに見られます。つまり、この違いを正確に識別できれば、嚢胞の種類を特定することができるのです。

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