【生化】心筋梗塞のマーカーやその他の酵素
116A-1 心筋梗塞のマーカー。その他、酵素について。
心筋梗塞のマーカーについて。まず、覚えておきたいことがあります。
心筋梗塞のマーカーとして最も重要なのは「CK-MB」というアイソザイムです。この名前を聞いて「何それ?」と思った方もいるかもしれませんが、CK-MBは心筋由来の酵素で、心筋梗塞の早期診断に役立つ指標です。
そもそもですが、アイソザイムとは?
これは「同じ働きをするけど、ちょっと違う形をした酵素」のことです。
例えば、掃除をする道具を思い浮かべてみてください。
ほうき、掃除機、モップ、どれも部屋をきれいにするために使いますよね。でも、それぞれ形が違いますし、得意な掃除の場面も違います。
ほうきはゴミを集めるのが得意、掃除機は細かいゴミを吸い取るのが得意、モップは床を拭いてピカピカにするのが得意です。
アイソザイムもこれと同じようなものです。
ある特定の反応を助ける働きは同じだけど、体のどこで働くのかや、どんな状況で働くのかが違うって感じです。
具体例として、今回の話に出てきた「CK(クレアチンキナーゼ)」を見てみましょう。
CKには3つの種類(アイソザイム)があって、それぞれ得意な場所があります:
CK-MM: 骨や筋肉で働く
CK-BB: 脳や平滑筋で働く
CK-MB: 心臓の筋肉で働く
これらはみんな「エネルギーを作る手助けをする」という仕事をしますが、場所や状況が違うので診断に使うときに「どのCKが増えているか」を見ることで、どこが問題になっているかを特定できるんです。
さらにですが、そもそも酵素とはどのようなものでしょうか?
酵素とは、「体の中で起こる化学反応を手助けする特別なタンパク質」のことです。
簡単に言えば、体の中で物事を早く進めるための“手伝いロボット”のような存在です。
体の中では、食べ物を消化したり、エネルギーを作ったり、傷を治したりといったさまざまな化学反応が起きています。これらの反応は、酵素がいないと非常に時間がかかります。酵素は、それらを効率よく進めるために活躍します。
酵素を料理に例えるとわかりやすいです。料理をするとき、包丁や鍋があると材料を切ったり煮たりするのが早くなりますよね。酵素は、体の中の化学反応を早く進めるための包丁や鍋のようなものだと考えてください。
例えば、食べ物を消化する酵素に「アミラーゼ」があります。この酵素は、ご飯やパンの中に含まれるデンプンを分解して、体がエネルギーとして使える形(糖)に変えてくれます。アミラーゼが働いてくれるおかげで、私たちは食べ物をエネルギーに変えることができます。
酵素にはいくつかの特徴があります。
酵素は特定の仕事しかしません。アミラーゼはデンプンを分解することが得意ですが、ほかの仕事はできません。
酵素は何度でも使えます。包丁を何度も使えるように、酵素も同じ反応を繰り返し手助けします。
酵素があると化学反応が何百倍も速く進みます。
じゃあCK-MBが心筋梗塞のマーカーとして使われる理由は何でしょうか?
心筋梗塞が起きると、発症してから3~4時間後にCK-MBの値が上昇し始めます。このタイミングの早さが診断に役立つ理由です。特に心筋障害が原因でしか上昇しないという特性があるため、ほかの疾患による影響を受けにくいのが大きなポイントです。
さて、ここまで基本的なお話をしてきました。問題を見てみましょう。
今までの解説を聞いていると、すぐにa.CKって解っちゃいますよね。なので、まぁ正解はa.なんですけど、
他の検査項目はどうなのでしょう?
次に、他の選択肢についても確認しておきますね。
PT(プロトロンビン時間)
これは外因系凝固因子や共通系凝固因子の異常を示す指標です。つまり、血液の凝固に関する検査なので、心筋梗塞の診断には直接関係しません。ALP(アルカリホスファターゼ)
ALPは肝臓、骨、小腸、胎盤などから由来する酵素です。これも心筋には含まれていないため、心筋梗塞のマーカーにはなりません。ALP(アルカリホスファターゼ)は、体の中でリン酸を切り離す手伝いをする酵素です。骨や肝臓、小腸、胎盤で働いており、骨の成長や修復、肝臓の働きなどを支えています。ALT(アラニントランスアミナーゼ)
ALTはASTとともに肝機能の指標として使われる酵素です。心筋梗塞ではASTが上昇する場合がありますが、ALTは関係ありません。肝臓は、体の「工場」とも呼ばれる臓器で、さまざまな物質を処理したり、エネルギーを作ったりしています。ALTはこの工場で大活躍している酵素です。HbA1c
これは過去1~2か月間の血糖値を示す指標で、糖尿病の管理に用いられます。心筋梗塞のマーカーとは全く異なる検査です。血液中の「ヘモグロビン」と「糖」が結びついたものを測定します。