努力と願い
やり方なんて知らないわ。だから父さんが飛んでたのを見よう見まねで、練習したの。こんなことなら父さんにどうやったら飛べるのか聞けば良かった。
でもあの頃の私は羨ましがるばっかりで、自分しかできないことが欲しくて訊きもしなかった。
とにかく、わからないなり気に空を飛んでる所をイメージしながら丘の上から飛び降りたり、ジャンプしたり。
ちっともうまくできない。当然よね。始めからうまくできたら誰も苦労しないもの。
もう何度練習したかしら。土と埃と草で白い体は灰色になって、落ちた時に傷ついたのか赤い線がたくさんついてた。
でも私は諦めなかった。諦めたくなかった。
もっと高い所からなら飛べるかもしれない。そう思って、山へ向かったの。
山も凄く高い山。雲の上まであるような山へ登ったわ。その時の私には失敗したら死ぬとか、そんなことこれっぽちも考えてなかった。ただ、飛びたくて……それしかなかったの。
崖の上に立って、下をみおろすと雲が見えたわ。
「あれに乗るつもりでジャンプして見ましょう」
そう決意を固めて助走をつけてジャンプしたの。
でも、雲の中を私の体はすり抜けて行く。
そして、下に川がうっすら見えてきたの。
あぁ、やっぱり私はダメな子なんだわ。このまま死ぬのね。
そう思った瞬間、
「諦めないで!」
耳元で声がしたの。
「まだ君の旅は終わってない。諦めないで。きっとできるから!」
聴いたことのないこえだったけど私を勇気付けるには十分だったわ。
私は心から願ったの。
――死にたくない!空を自由に行き来出来るようになりたい!!
川は目の前だった。それでも私は最後まで希望を捨てずに願ったわ。
ぽふん――
川に落ちるはずだった私は何か柔らかい物の上に落ちたの。
辺りを見回すとそこはちいさな雲の上だった。
「雲?」
「そうだよ。君には雲に乗れる力があるんだ」
また声がした。