初恋の瞬間
なさざきむつろ様から承った「初恋の瞬間」というお題から書いております。
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「スキだ」
と言われて、悪い人でもなさそうだし、顔も結構好みだったから、
「友達からでいいなら」
と言って始まった不思議な関係。手をつないで帰るし、日曜は2人ででかけたりもする。強いて言うなら、照れた表情で「スキだよ」と頭をポンポンとされるくらいで、それ以上は何もない。
学校でも彼氏だの彼女だのがいることは、ある種のステータスみたいになっていたから、きっと隣を少し緊張した面持ちであるくこの人も、そのステータスが欲しかったのだろう。
そんな事に気付いてしまって、この人は私じゃなくても良かったんだと思うようになってから、私は1人で帰るようになり、日曜も出かけなくなった。心配するメールも、『私はお飾りなんだ』と思うと返す気が失せて返信しなかったり、してもなおざりな言葉しか出て来なかった。
ある日の夕暮れ、1人で帰ると家の前に人が立っていた。
「何でオレのこと避けるのさ。オレなんか悪いことした?」
無視して家に入ろうとする。すると、腕を掴まれて引き留められた。
「痛い。私の言動が気に入らないなら、他の人のところにいけばいいじゃん」
本当は、『どうせ、お飾りなんでしょ』も付け加えたかったけれど、それを言う前に涙がこぼれた。
「・・・本当に他の人の所に行った方がいいの?」
彼の表情は視界がにじんで分からなかった。でも、その時ムネがズキリと痛くなるのが分かった。
こんなの知らない、でも涙は止まらなくて、首は横に勝手に振られていた。
「何・・・コレ・・・こんなの知らない・・・」
「じゃあ、分かるまで傍にいさせてよ。オレはそういう所もスキなんだ」
そう言って私の涙をぬぐった彼の顔はいつもの照れた表情ではなくて、決意したような穏やかな笑顔で私は初めて見るその表情にドキドキした。
本当に生まれて初めてのことで、何が何だか分からないけど、『今後この感情に名前がつくなら、初めてはこの人にあげることになるのか』と、『他の誰にもこういう感覚にはなりたくないなあ』と思ってしまった。
「・・・付き合ってくれる?」
散々頭の中で考えたけど、出たのはその一言だけで、自分の顔が真っ赤なのは夕焼けのせいだと自分に言い訳するので精一杯だった。
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お題小説第2弾「初恋の瞬間」です。
今まで恋愛に興味のなかった女の子がなんとなく気まぐれに付き合った男の子をいつの間にかスキになっている。というのは本当に青春という感じがして個人的に好きなので、ちょっと変化球かもしれませんがこういう形になりました。
さて、ここからは前回同様募集になります。
実験的に見切り発車で始めた企画ですが、お題募集しております。
単語・短文・絵・写真・音楽・動画等々お題はなんでも結構です。
単語や短文はそのままコメントに書いて頂き、その他はURLを貼っていただけば見に行きますので、もし、良かったらよろしくお願いします。
最後になりましたが、ならざきむつろ様お題提供ありがとうございました。