もっと素敵な提案
「やっぱり難しいかしら……」
私がそう言うとおにいさんは笑顔になって首を振ったの。
「ロティの考えは素晴らしいよ。ただ、お店でやるには大変だなぁってことさ、お店で、ならね」
「どういうこと?」
「お店でやるとどうしてもいつも品物がなくちゃいけない。でも、職人さんは工場じゃない。大量生産はできないんだよ。だから、市場、バザールを開いたらどうかな?」
「バザール?」
「そう、職人さん達に品物を持ち寄ってもらって売る。僕達はその場所を提供するんだ。定期的にやれば知名度も上がるだろうから、少し遠くのお客さんや職人さんも来てくれるかもしれないし、そういう所で作品を見て一回諦めちゃった人が、もう一回挑戦してみようって思ってくれるかもしれない。それに……」
「それに?」
「そういうのを見て始めようって思う人はたくさんいると思うんだよ」
私は素直に素敵だと思ったわ。
職人さんの作品を見て、新しい職人さんが生まれる。
そうやって職人さんが増えればもっと綺麗ですてきな物が世の中に溢れるんだもの。
でも……
私は気づいてしまった。
定期的にとは言ってもここでバザールを開催していたら、忙しい人や、体の不自由な人、凄く遠い人は来れない……
それは酷く残念なことに思えたの。
「ねぇ。バザールをずっとすることはできないの?」
「ずっと?それは難しいよ。第一、場所はどうするんだい?」
場所………どこにも行けてずっと使える場所………
心当たりがないわけじゃない。でも………出来るかしら………?
私は躊躇った。出来なかったらどうしようって思ったから。
でも………
「やって見なきゃわからないわよね」
そう呟いて、私はお兄さんの家を飛び出した。