理想と現実
「ねえ……この作品達は職人さんが心を込めて作ったものなの」
「あぁ、そうだね。だから僕はこれを売りたいと思ったんだ」
「私はまだ世界の半分も見てないわ。でも、貴方がお店をやるならそれを買った人も作った人も笑顔になるようなお店にしてもらいたいわ」
「どういうことだい?」
私は今まで出会った絵描きさんや文章書きさん、写真家さんの話をしたの
それだけで生活している人は、皆、絵や文章や写真が好きで好きで仕方ないこと、本当はそれだけで生活して行きたいと思っている人がたくさんいる事、でも、現実はそのうちほんの一握りの職人さんしかそれができていないこと。
「私は、まだ、色んな職人さんに出会っていないと思うの。でも、私が出会った数少ない職人さん達ですら、現状はこうなの。世界にはもっと多くの職人さんがいるわ。例えば、職人としてやっていけなくてその道を諦めてしまった人もいるかもしれないの。でも、私は知ってるわ。いい出会いさえあれば、それまで頑張ってきた人は絶対に報われる。どうせお店をやるならそのきっかけになるようなお店にして欲しいの」
きがつくとわたしは熱く語っていたの。出会ったことも無い職人の道を諦めてしまった人を、サーカスの団員でいることを諦めてしまった私と重ねていたのかもしれない。
サーカスと出る前、私にはピアノしかなかった。それじゃダメだって思いながら、他のことに手を出すことを怖がって、サーカスを逃げ出した。でも、絵描きさんからもらったお星様が教えてくれた。
『頑張れば絶対出来る』
それは、サーカスにいた頃の私には無い考え方で、絵描きさんや色んな職人さんとの出会いが私を変えたって、今ならはっきり言える。
結局、いい人と巡り合って、それから自分がどれだけ努力出来るか、これが肝心なんだわって今は思うもの。
お兄さんにはその架け橋になって欲しいって思ったの。物を買ったお客さんが喜ぶだけじゃなくて職人さんが、「頑張ろう」って思えるようなそんな両方に笑顔になってもらえるお店。
「うーん。確かにそんなお店があったら素敵だね。でも、お店じゃ難しいなぁ」
お兄さんは困った顔をして考え込んでしまったわ。
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