ロティの冒険

不思議な移動サーカス

 

 私が生まれたのは移動サーカス。

 そう、その移動サーカスはただの移動サーカスじゃなかったわ。団長が世界を巡って集めてきた不思議なものだけがいる不思議なサーカス。

 例えば自分の意志でしゃべってきれいな声で歌を歌うオウムや、けして笑わないけれど、お客様が見たがっている芸の世界へ間違いなく案内するのピエロ。継ぎ接ぎだらけの踊るビスクドール。

 団長の力で部屋のような感じで違う小さな世界に区切られてお互いの力が干渉しないようになってたの。

 私の母さんも父さんも団長に集められた白い馬だったわ。

 2人とも不思議な力があって母さんは時間を超える力が、父さんは空を飛ぶ力がそれぞれあったの。だからその力で移動サーカスを引っ張ったり、みんなに不思議な世界を見せたりしていたの。

 ……でも、私は何もできなかった。

 父さんと母さんの子供ってこともあって団長も期待していたみたいだけど、私に不思議な力はなかった。

 一生懸命いろんなことを練習して、前足でおもちゃのピアノを弾けるようにはなったけど、団長はそれじゃ気に入らなかったみたい。もっと不思議なことを出来る人や物がサーカスにはたくさんいたもの。当然よね。

 私は徐々に居場所をなくしていったわ。個性の強いみんなの中でわたしだけが普通だったから。

 最終的に私は入口に立つピエロさんの隣で客寄せのためにピアノを演奏することになったわ。

 街ゆく人たちは
「可愛い~」
 って言ってくれて足を止めてくれる人や頭を撫でてくれる人もいたけど、中から出てくると私の方は見向きもせずに
「すごかったね~」
 って、興奮気味に言って去っていった。

 それを見る度、私はしょんぼりそれを見送るしかなかった。

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