新しい出会い
「貴方は誰?」
「君の耳についてる星だよ。君が頑張ってるのをずっと見てたんだ。でも、アドバイスしたらきみひとりでできるようになったことにならない。だからずっと黙っていたんだ。これからは『雲さん来て』って願えば、そこに雲が現れるよ」
「本当に?」
「うん。海辺で試してみると良いよ」
私は雲さんが言った通り海辺で願ってみたの。すると、何もなかった場所から雲ができたわ。恐る恐る乗ってみるとこんどはすりぬけたりしないでちゃんと乗れたの!!
嬉しくて仕方なかったわ。
そして、私はそのまま海を渡って向こうの土地の港街まで行ったの。
そこは大きな街で、凄く賑やかだったわ。
私は人が行き交う広場でピアノを弾いたの。
街の人達は物珍しそうに私を見て、今までで一番たくさんの拍手とお金をくれたわ。
日も暮れてきて何処か泊まる所を探さなきゃと思った時、広場で一人浮かない顔をしている男の人を見かけたの。
「あの人朝からずっとあそこにいるわ。なにかあったのかしら?」
そう思って私は彼に近づいて行ったの。
「こんばんは。お兄さん。何かあったの?」
「あぁ、昼間楽しそうなピアノを弾いていた子馬さんか。お家に帰らなくていいのかい?」
「私は世界を見て回っているの。お家はないわ」
「そっか…一日中聴いていたのにお金を払わないのはいけないな。でも、今手持ちがなくてね。今夜家に来るかい?」
「いいの?」
「ああ、君が……君、名前は?」
「シャルロッテよ。みんな、ロティって呼ぶわ」
「じゃあ、ロティ。今夜家に招待されてくれるかい?」
「勿論よ」
お兄さんの家は小さかったけれど凄く珍しい物がたくさんあった。昔いたサーカスとまではいかないけど、綺麗だったり、可愛かったりする物がたくさんあったわ。
「ごめんね。変わった物ばかりで」
すまなそうにお兄さんはミルクを私に出してくれた。
「ううん。凄く素敵な物がたくさんね」
私が目を輝かせてそう言うとお兄さんは苦笑した。
「僕はね、こういう物をもっとみんなに見てもらいたくてお店を持ちたいくてね、お店を貸してくださって訊いてまわっているんだ。でも、今日も断られたところさ。これで12敗目」
「そうだったの。それであんなに沈んでいたのね」
「なんとか、実現できたら素敵なんだけどね。難しいかな」
ははっとお兄さんがから笑いをするのを見てわたしは、星をくれた絵描きさんの言葉を思い出したの。