自動ドアの向こう側

 目の前におじいさんがいて、前方に向かって歩いている。両手は荷物で塞がっている。その先に自動ドアがある。自分は自動ドアの鍵を持っている。こんなとき、あなたならどうするだろうか。

 たとえば、おじいさんを華麗に追い越して鍵でドアを開け、「さあ、どうぞ。」と言うだろうか。いや、華麗に追い越してドアを開けるが、おじいさんには恩着せがましくないよう何も言わず、直進するだろうか。

 「あのー、荷物持ちましょうか。」と言うだろうか。いや、ひょっとしておじいさんは、トレーニングの一環として身体や脳を鍛えており、ドアを開けるのにも敢えて苦労して自分を追い込みたいと考えている。つまり、何も手助けしないほうがよいのだろうか。

 ひとまず、2番目の選択肢を実行しようと思い、おじいさんを追いこそうとした。そのとき、自動ドアが開いた。自動ドアの向こう側にいる人が親切にドアを開け、おじいさんを招き入れた。

 人に親切するのは難しい。