新たな住人

 あるところに小さな村があった。村では、みな田畑を耕し、慎ましくも穏やかな日々を過ごしていた。
 そんな村にある日、男がやってきた。
 男は口数も少なく自分のことを語らなかった。
 村人たちは、男を気味悪がって積極的に関わろうとしなかった。
 
 男が村に住むようになってから、夜な夜な田畑が荒らされるようになった。
 誰の仕業かは、はっきりしない。
 しかし、村人たちはみな男がやったに違いないと思っていた。
 今までと違うのは、男がいることだけだから。
 
 村人たちは男に詰め寄った。
 「あなたが来てからこの村は変になった。出ていってくれないか。」
 村人たちは余所者を追い出すのに躍起になった。
 男は何か言おうとしたが、この状態では誰も聞く耳を持たなかった。
 男は無念そうに村を去っていった。
 
 その晩、山の怪物である巨大な猪が、またもや村にやってきた。
 「あの邪魔をする男がいないではないか。今宵は、楽しめそうじゃのう…。」