01. 本が売れなくなったというけれど……
グラフ:『出版指標2020年版』(www.ajpea.or.jp/statistics/)より
最近、あちこちで、
「本が売れなくなった」
といわれます。
で、少し調べてみると、書籍の売上額がピークに達したのは1996、7年のことで、その額は大体1兆1000億円ぐらいだったようです。
それが、ほぼ四半世紀後の2019年には7000億円足らず――およそ3分の2に減少したのだそうです。
で、最近の日本人の、とくに若者たちは、
「本を読まなくなり、知的水準が低下した」
などと言われます。
「なるほどなあ。そういえば『国権の最高機関』である国会を見ても、簡単な漢字すら読めない政治家が何人もいるのは、その結果なのかなあ」
などと考えたりもしました。
それが去年の10月ごろのことです。
ちょうどそんなときネット上に「note」というサイトを見つけたのです。で、折に触れてボク自身も、下手くそな文章を書いては noteに投稿したり、たくさんの人たちの投稿を読んだりするようになりました。
すると、どうでしょう。ぼくのような年寄りだけでなく、たくさんの若い人たちが興味深い話題をとらえて、上手な日本語の文章を寄稿しているではありませんか。
で、気づきました。
「たしかに書籍、つまり本は売れなくなったのだろう。でも、老若男女、日本人の多くが自ら文章を書いてネットにアップするようになっている。
で、読んでみると、それらの文章は、それぞれに興味深かったり、面白かったりするではないか。
本は売れなくなったのかも知れない。
が、ネット上の、それとは別の場面で、日本人の多くが楽しみながら文章を書いたり、それらを面白がりながら読んだりしているようだ」
こうしてみると、これまで本を書いてきた側の人たちは、
「本が売れないことで、日本人の文化の水準が低下している」
みたいなことを随所で主張してきたように見えてしまうのです。
が、それって、もしかすると、ちょっと偏った見方なのかも知れないなあ、などと考えたりするようになりました。
というわけで、これまで連載してきた「旅のエッセー」が100点近くになった時点で、マガジン「酔狂道中記」はお休みにして、こんな雑感を書いてみました。