現代日本の企業に生きる「からくり」の伝統
写真:田中久重(Wikipediaより)と2冊の書物の表紙
江戸時代に発達した「からくり」の伝統は、後世にも大きな影響を及ぼした。たとえば、現代日本の有名企業の創業者のなかに、何人かのからくり師がいる。
その典型は「からくり儀右衛門」というニックネームの田中久重さん(1799~1881)だ。彼は後に、万年時計や日本最初の機関車模型を製作する。のみならず1875(明治8)年には日本最初の民間機械工場を創設した。彼こそは、現在に続く東芝の創業者なのだ。
日本初の木製動力織機を発明し、トヨタ自動車の基礎を築いた豊田佐吉さん(1867~1930)も、もとはからくり師だったのだ。
なるほど、欧米ではキリスト教、中国や朝鮮半島では儒教の影響が強い。これらの思想には、手を動かして物をつくるよりも、観念の働きを重んじる傾向が著しい。
それに比べて日本では、職人さんや手先の器用な人への尊敬の念が強い。日本には「物づくりの価値を高く評価する文化」が、たしかに実在しているのだ。
そんな文化に支えられた「からくりの精神」が、ロボットの世界にも受け継がれているということであるらしい。