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2月④ 紅殻と甍の赤に春浅し(岡山県高梁市・吹屋ふるさと村)

               写真:吹屋ふるさと村(Wikipediaより)

 最近あちこちでSDGsの文字を目にします。
 いうまでもなく2015年9月の国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。国連加盟193か国が2030年までに達成する目標として掲げたのです。

 17項目の表題だけを列挙すると、つぎのようになります。

  ①貧困をなくそう
  ②飢餓をゼロに
  ③すべての人に健康と福祉を
  ④質の高い教育をみんなに
  ⑤ジェンダー平等を実現しよう
  ⑥安全な水とトイレを世界中に
  ⑦エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  ⑧働きがいも経済成長も
  ⑨産業と技術革新の基盤をつくろう
  ⑩人や国の不平等をなくそう
  ⑪住み続けられるまちづくりを
  ⑫つくる責任、つかう責任
  ⑬気候変動に具体的な対策を
  ⑭海の豊かさを守ろう
  ⑮陸の豊かさを守ろう
  ⑯平和と公正をすべての人に
  ⑰パートナーシップで目標を達成しよう

 非常に結構なお題目ばかりで、ぜひ実現したいものです。

 ただ、いくつか決定的な弱点があります。

 まずは「核兵器の廃絶」が記されていないことです。世界の50か国が批准して今年2021年1月22日に「核兵器禁止条約」が発効したのですから、ぜひともSDGsに加えてほしいと考えるのは、ボクだけではないと思います。

 今ひとつは実に並列的だと思える点です。
 現代世界では超富裕層26人が世界人口の半分の総資産と同額の富を独占していると言われます。
 こうした異常な格差が国と個人の間にある間は、SDGsの①②③④⑥⑦⑧⑨⑩などが解消されるわけはありえないからです。

 さらに三つ目は「⑬気候変動に具体的な対策を」が今、非常に深刻だという点です。温室効果ガスとして大きな役割を果たす気体に水蒸気があります。その水蒸気を増やすのが二酸化炭素の増大です。

 そこで思い出すべきは、あらゆる植物は日夜、その二酸化炭素を光合成によって還元して取り込み、炭素として固定してくれているという事実です。
 そんな植物の働きを思い出しながら、こんなコラムを書いてみました。おひまなときに、ご覧ください。

 耕して天に至る。貧なるかな。

 平坦地の少ない瀬戸の島々や陸地の、段々畑のある風景を描写した言葉だ。その典型のひとつに岡山・広島両県にまたがる吉備高原地域がある。

 が、その随所に、自然の恵みに人知を働かせ、豊かな経済と文化を育てた場所がある。

 たとえば高梁川に合流して倉敷から海に流れこむ成羽川上流の高梁市成羽町吹屋地区だ。
 ここでは9世紀に銅の採掘が始まった。で、江戸期には六大銅山のひとつに数えられ、硫化鉄から紅殻(べんがら)を生産。最盛期には数千人の人口を擁して繁栄した。

 それが大正末期、銅山が衰微し、戦後は過疎化が進んで1972(昭和47)年、ついに閉山となる。

 あとに石州本焼き瓦紅殻(べんがら)格子の赤、塗り込めた純白の壁のコントラストも鮮やかな、時代を経て落ちついた町並みが残された。
 それを5年後、県がふるさと村に指定。いまでは「甍(いらか)の波」の美しい一種の野外博物館として人気を呼んでいる。

 不思議はない。
 いまどきの建物は、せいぜい百余年の歴史しか持たぬ近代技術で建てられる。その姿形が人の心や体に馴染む完成形からほど遠いのも無理はない。

 それに比べて縄文時代から数千年、日本の風土と知恵が生みだしたのが伝来の木造建築だ。その姿形は、人の目だけでなく、心身全体に馴染んでくつろがせる力をはらんでいる。

 ましてケヤキやサクラやクリなどの銘木に、名工が技の限りを込めて建てたのだ。百年余を経て寸分のすきもない堅牢な日本建築があやなす吹屋の町並みは美しくて迫力がある。その風景は、

 「振り返れば未来」

 という感慨をさえ訪れる人に感じさせてくれるようだ。

 じつは木造建築は、木を切ったあとに植林さえすれば、自然環境の保全にも適切なのだ。
 その建築が寿命をまっとうするまでの間、地球大気温暖化の原因になるとされる二酸化炭素をしっかり、みずからの内に留めておくことができるのだから……。

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