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映画『それでも夜は明ける』

1800年代アメリカ、南部に住む自由黒人の主人公・ソロモンが、12年に渡って強いられていた奴隷生活を記録した自叙伝を映画化。

2013年当時、アカデミー賞授賞式をリアルタイムでWOWOWで視聴していたのを覚えている。作品賞を取ると、評論家たちは当然といわんばりに絶賛していた。あれから7年、私の中でどうしても重い作品になってしまっていたけど、やっと踏ん切りがついて観られた。めちゃくちゃ辛くてしょうがなくて、救いようがなくて、だけど観れて良かった。

同じ人間として、blackの方々が抱える歴史を直視しなきゃいけないと思って、そのためには最適な作品だったと思う。例えばナチスの人種差別とも異なる、中途半端で卑しい目線。同じ家で生きながら奴隷として命令して利用して飼い慣らし、自分の都合のままにする姿。様々な種類の差別があるんだと知って、人の卑しさを目の当たりにして、自分の中にもきっとある同じ卑しさの種を少しでも潰せたらーー

根拠のない楽観主義により希望を持って生きる人は、先の見えない絶望的な状況下に対応できず他より早く死んでしまうらしい。それよりも、無駄な期待を抱かず、今できることにだけ淡々と集中する人が生き残る力を持っているそう。その意味で、きっと彼は最後まで後者の人物像だった。手紙を送れず白人奴隷に裏切られたときはきっと危なかった。そのあとのブラッド・ピッド演じる大工のバスが、彼を窮地から救い上げた。勝つことではなくて負けないことが、彼を生かした。
反対に、前者の人物は、本作でアカデミー助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴ演じるパッツィーだったように思う。当初、目の奥に希望があったような彼女は、主人に目をつけられいじめられ続け、遂にはソロモンへ自分を殺してくれと懇願する。最後鞭打ちにあっていた彼女の状態はもぬけの殻、ソロモンが去る時に泣き崩れた彼女を見ながら、ああ彼女は生き続ける選択が出来たのだろうか、と心の底から暗い気持ちになった

何があっても死を選ばずに生き続けた彼が、結果的に後世に人類の負の歴史を、実体験を通して残してくれた。
だから受け取った私たちは2度と繰り返さない、小さな悲劇も生んではいけない。それがこの作品が存在する理由だと感じた

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