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「恋のかたち」② 恋愛小説

約束の8時を迎える頃。帰宅後のいつもの平然を装いながらもそうはいかず。携帯を握りしめて、部屋のランドリーに籠った。閉鎖的な空間にいたかったのかもしれない。

約束の時間通り電話が鳴った。

私は連絡先を知らないが彼は、関係上知っている、いや、知っていなければいけない。

少しプライベートに踏み込んだ瞬間に戸惑う。スマートフォンに表示される見知らぬ番号をしばらく見つめながらコールを聞き電話を取った。

私「もしもし、平田です。」

彼「あ、もしもし、平田さん、さっきはお忙しいところ すみませんでした」

冒頭の彼の声は明るく明瞭。

彼「平田さん、自分を責めないでください」

突飛押しもないこの言葉に私は、一瞬、時が止まりその場で座り尽くしてしまった。

しかし、彼がこの言葉を伝えた事に、今思えば、私には必要な言葉だったのかもしれない。

社会や地域で生きていれば、そのコミュニティは派生していく。もちろん「私」と「彼」の二人称では決してなく、人を思いやり、感謝し、時に助け合ったり共有すること。
そんな当たり前の事に私は自らからに籠りシャットダウンしようしていた。

「自分を責めないでください」

彼の端的なこの言葉は単純ではない。

自分を見つめ直し、そしてこれからも1人ではないような、なんだか少し小さな光を差してくれた。そんな感覚だった。

彼「何時でも大丈夫です。この電話に連絡してもらえればいつでも対応しますので。」

ありがとうございます。と返事をして電話を切った。

こんなにストレートに垣根を超えて、「言葉」を通じて自分の心の奥底にグッと衝撃を与えてくれたのは後にも先にも人生で初めての感覚だったのかもしれない。



ご拝読ありがとうございました。
続きは「恋のかたち」③へ。

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