納豆
職場のTさん(上司と言うべきか先輩と言うべきかわからないのでこの表現とさせてもらう)が、納豆を10秒で食べ切ったらしい。
はじめこの情報を知ったとき、「納豆を10秒で食べ切るとはすごいな」と思って興味を持ったが、深くは考えなかった。
しかし…数日経ってもやけに気になるのだ。
Tさんの姿を見るたびに、そして自宅の冷蔵庫の中の納豆の姿を見るたびに、「Tさんは納豆を10秒で食べ切ったのか…」と考えてしまう状態が続いた。
もしかしたら多少誇張しているのかもしれない。
もしかしたら冗談かもしれない。
それは承知の上で、なぜかやけに気になった。
自分の中に判断材料がなさすぎて、本当なのか冗談なのか、なんとも判断しにくい。
Tさんは一体何グラムの納豆を食べたのだろう、とも思ったが(調べてみたところ、パックの納豆はだいたい40~50グラム、カップの納豆は30グラム前後)、もちろんそんなしょうもないことを本人に聞く勇気はなかった。
冗談が通じない人だと思われてもあれだし、細かいことを気にする人だと思われてもあれなので、本人には何も聞かないことにした。
いろいろ考えていたら、もはや、Tさんが、というよりも、早食いのプロではない一般人が、納豆を10秒で食べ切ることができるのか、という興味が湧いた。
あまりにも気になったので、おとといの仕事前に、自分で試してみることにした。
(家にあった1パック50グラムの納豆で試した)
その結果、最後の一口を口に入れるまでに40秒、全て飲み込むまでに60秒かかった。
まあまあ時間がかかったので、Tさんが10秒で食べ切ったというのは冗談だろう、という結論にひとまず至った。
しかし、自分を基準にして物事を考えるのはよくない。
とりあえず、その日の仕事終わりにもう一回試してみた。
かなり空腹だったので短縮できると思ったが、全て飲み込むまでに65秒かかってしまった。
しかも、短縮するための作戦としてかき込んでみたら、パックの角で唇が切れて血が出るという、しょうもないことが起きた。(血はすぐ止まった)
結論として、Tさんは一体何グラムの納豆を食べたのかわからないが、何グラムにしろ、もし本当に10秒で食べ切ったのだとしたらかなりすごいと思う。
冗談だとしても、人をここまで考えさせる冗談はもはや冗談の域を超えていてすごいと思う。
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