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ライナスの毛布

 デザインと距離感

 
コロナが流行してからの日本は、世界に比べて他人との距離を取るためのデザインが増えた。
受付や飲食店に置かれるパテーション、リモートワーク、マスク、非接触型検温機など人を介さず行えることが重要視されてきた。しかし、物理的距離を測りながら、同時に心理的にも他人と距離を取っていることに気づかず、「コロナ鬱」という言葉の誕生や不登校の生徒が増え、心の安定を損なっていると考える。

コロナとの付き合いが始まって3年が経過した今、離れてしまった「人との物理的距離感」に変わる、「モノとの物理的距離感」の必要性を提起したい。

『ライナスの毛布』を例として挙げる。
ライナスはスヌーピーに出てくるキャラクターであり、お気に入りの毛布を常に持ち歩いている。
お気に入りが常に近くにあることは彼にとってとても安心でき、不安になるとぎゅっと握ったり匂いを嗅いだりなど、不安からの回避の方法も熟知している。

一見、自立ができない子供そのものだが精神疾患患者にとっての薬であり、母親にとっての我が子であり、ファンにとっての推しに近いものだと考えている。しかし、人を『ライナスの毛布』に充てがうと、依存関係を作る可能性が発生し、人間関係の乱れとそれに伴う不安感情から悪循環を作る恐れがある。その点を踏まえても、デザイン分野で解消していく必要がある議題だと考える。

子供が1歳くらいになると少しずつ自立心が芽生え、それに伴い「ママがいない」という状況も理解できるようになる。自立と不安はセットなのである。
コロナ禍の中、ほとんどの大人が自立しているものとして考えた時、他との接触不可能な状況はやはり不安であり、他を感じる温度感、有機的質感(ふわふわやもこもこ等)アースカラーやパステルカラーなど視覚に負担のない色彩に触れることで安心感を取り戻すと考える。

他人との物理的距離感はコロナとの付き合いが長くなればなるほど解消されるが、とても緩やである。現代の大人の不安を和らげるには『ライナスの毛布』のように、お気に入りを見つけ(個人的に物が望ましい)、積極的に接触し、心理的距離を満たすことが必要だと考える。

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