患者紹介ビジネスの是非について
ゴルフ党(NHKから国民を守る党)の渡辺稔允です。参議院議員浜田聡先生の元で、週1回お手伝いをしています。
このところ、参議院調査室とやり取りをしていて、日々の生活・歯科医師としての業務を行いながら疑問に思ったことについて調査をお願いしておりました。
今回の内容は、マニアックというか、一件みなさんには関係がなく、みなさんの利益にはならなさそうに見えるのですが、その先には、「適切な医療が患者さんに届く」ことにつながり、質的な医療崩壊を防ぎ、結果、みなさんに質のよい医療が届き、利益になるのではと思い、調べてみましたのでお伝えします。
患者紹介ビジネスとは?
そもそも医療は一般的なビジネスとは別のカテゴリに存在します。常に金銭的な報酬を目指しているものではなく、患者さんの病気を取り除く、健康な生活のお手伝いという社会的ミッションのある仕事だと理解しています。
患者紹介ビジネスとは、簡単に言うと、業者が患者を紹介することによって、医療機関から報酬を受け取るビジネスのこと、です。
集客ならぬ、集患を行うことで報酬を得ることとも言えます。
実は数年前に全国の医療関係者がピリピリした改正がありました。
平成26年の診療報酬改定に伴い、同年4月に保険医療機関や保険医が保険診療を行う上で守らなければならない基本的な規則である「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(昭和三十二年厚生省令第十五号)の改正が行われました。この改正により、療担第2条の4の2第2項において「経済上の利益の提供による誘引の禁止」として次のような規定が設けられました。
このように、医療機関や薬局が医療機関以外の事業者から有償で患者の紹介を受ける行為は同規定で禁止されました。これがいわゆる患者紹介ビジネスと言われるものですが、厚生労働省は、「一部の保険医療機関等において、集合住宅等に入居する患者の紹介を受け、患者紹介料を支払った上で、訪問診療等を行っている事例があった。これらの事例については、特定の保険医療機関等への患者誘導につながる蓋然性が高く、患者が保険医療機関等を自
保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。
患者を経済上の取引の対象としており、保険医療機関等による過剰な診療 等につながり、保険診療そのものや保険財源の効果的・効率的な活用に対する国民の信頼を損なうおそれがあること等の問題がある」と患者紹介ビジネスの規制理由を説明しています(厚生労働省保険局医療課平成 26 年 7 月 10 日「疑義解釈資料の送付について(その8)」別添5)。
では、どのような行為が患者紹介ビジネスに該当するのか?
下記のような通知がありました。
まず主体となる「保険医療機関」ですが、これは厚生労働大臣が健康保険の利用対象として指定した病院・診療所・薬局を指します(健康保険法第63条第3項第1号)。
次に患者紹介ビジネスの該当基準ですが、上記厚生労働省の通達によれば、
① 保険医療機関が、事業者又はその従業員に対して、患者紹介の対価として、経済上の利益の提供を行うこと
② ①により患者が自己の保険医療機関において診療又は調剤を受けるように誘引すること
の両方に該当する場合としています。そのうえで「①については、患者紹介の対価として、経済上の利益が提供されているか否かで判断されるものである。……②については、①により、患者が自己の保険医療機関又は保険薬局において診療又は調剤を受けるように誘引しているか否かで判断されるが、保険医療機関又は保険薬局が、患者紹介を受けて、当該患者の診療又は調剤を行っている場合は、基本的には、②に該当するものと考えられる」とし、保険診療を行っている医療機関や薬局が、事業者またはその従業員に何らかの経済上の利益を与えて患者の紹介を受け診療や調剤を行っている場合は、原則として禁止行為に該当することを明らかにしました。
わかりやすくいうと、冒頭に述べた通りです。
患者紹介ビジネスとは、簡単に言うと、業者が患者を紹介することによって、医療機関から報酬を受け取るビジネスのことです。
この規制ができてから業者はどうなったか?
当時、患者紹介ビジネスに該当しそうな業者は数社いましたが、現在は、その規制に抵触しないように、うまーく表面上の形を変え、存在しております。
医師は、治療をし、業者は、治療が必要な患者を紹介する。
職人がマーケティングまでしなくてすむようなシステムであり、悪くないとは思うのですが、度を超すと、患者に不利益が生じる可能性があるようです。
で、大事なのは、この患者紹介ビジネスの規制に抵触すると、誰が悪いことになるのか?
調べた結果、患者紹介ビジネスを行った業者は全く罰せられません。注意や指導を受けるのは、業者ではなく、この規制の元法律である健康保険法に該当する「医療機関」なのです。
なので、患者さんにたくさんきてほしいから、といって、患者紹介ビジネスに抵触する可能性がある業者との付き合いをすると、自分たちに非があることになります。業者は、「先生たちのご判断でお願いします。」と言うのでしょう。
今回、具体的に患者紹介ビジネスに該当しそうな(あくまでその可能性がある)業者を2社、厚生労働省の担当部署に情報提供しましたが、患者紹介ビジネスに該当するかどうかは判断できないとの回答でした。
そのうち一社は、なんとかパークという業者です。利用している医療機関が多いビッグなサイトではありますが、私は利用していません。きちんと、ルールに則り、ビジネスを提供してほしいと思っているだけです。ルールに不満があるなら、ルールを変える努力をしよう、と思います。
以上、今回は、「患者紹介ビジネス」に関して調べてみました。ちょっと難しい内容だったかもしれません。すみません。
次回というか、もう一件調査しているのは、医療機関への集団的個別指導というこれまたマニアックなことについて、調べています。ぼちぼち報告できるときに報告させていただきます。
渡辺稔允