『錆び』
カラカラと乾燥した教室
さびた画鋲が落ちていた
「危ないなあ」
私はそれを拾い上げた
なにか小さな文字が書いてある
『あなたの負け』
時は50年前
この教室で画鋲パチンコが行われた
消しゴムに飽きて刺激を求めた
指先から出血しながらも
遊びに夢中だった
私は負けたのだ
今では動かなくなった私の指先が
まるで嘲笑っているかのよう
もう一度画鋲パチンコしたいな
でも今ではあの画鋲は使われていない
危ないからって
コルクボードから白板に変わったのだ
飾るときにはマグネットが使われる
昔の思い出物は時とともに変わっていく
消えていく
私の手だけは変わらない
今はひとつ動かなくなり4本の指になった
もう彼女とは結婚できないな
いや、誰ともお付き合いなんてしていないが
そんなことを考える