マザーランド【Ado】の歌詞の解釈

歌手のAdoが2022年1月に発表した「マザーランド」という歌について、その意味を考えていた。標準的な「スポーツ選手の苦悩」という解釈の他に、筆者は別の解釈を思いついてしまったので、ここに記しておこうと思う。

あらかじめ断っておくが、この考察は人によっては不謹慎だと感じたり、不快に思われる方もいらっしゃるかもしれない。

そして、筆者は、いかなる動機であっても戦争反対である。

また、Adoさんのこの歌を汚そうという意図もない。

そういう前提でこの文章を書いている。

なので、不快に感じられた場合、すぐにブラウザの戻るボタンを押して欲しい


まず結論から言おう。

マザーランドは「戦争」をテーマとした歌として解釈できるという提案である。仮にその2国をX国とY国と呼ぶことにしよう。X国が、主人公の住むY国に侵攻してきた、という状況として解釈できるという提案だ。


※引用箇所は全て「マザーランド」(作詞:煮ル果実)より

まずは冒頭から。

マザー マザー 許してくれますか
大いなる愛でも 消せないバツを

戦争はいかなる理由でも悪である。この「マザー」が母親という意味ではなく神という意味なら、敵国であるX国が侵攻してきたため、家族や祖国(Y国)を守るため戦うという「悪」を侵すことを神は許してくれるだろうか、という苦悩として解釈できるかもしれない。

はなから愛されないと知れるならば楽だったんだ
そんな後ろを向いた私はちゃんと地獄に堕ちましたか
ああ 私は世界中に疎まれ憎まれ生きていくと
割り切れたら本当にどれだけ良かったんだろうな

X国(侵攻側)の大統領の心情を綴ったものか。長年大統領の立場にいて、最近まで高い支持率を得ていたが、戦争開始とともに支持率が急落。世界中から憎まれるようになったが、そのことを受け入れられない。そんな解釈ができるかもしれない。

多種多様な物語(ストーリー)にも いずれはさ 飽きがあってさ
そのうちのひとつに収まる器にゃなりたかないけど
溢れんばかりの期待がそのフチからはみ出すときに
『こぼしたらきちんと拭けよ』と見下すような視線に

耐えきれず逃げ出した心臓

Y国の大統領は、元々は俳優として活動し、多種多様ななドラマに出演した。その中で大統領の役を演じたドラマが「はまり役」だった。そんな彼が本当に大統領になった。しかし思い通りに成果を上げられず、支持率は低迷していた。そしてそれを批判され続ける。

そんな中、Y国にX国が宣戦布告した。


楽園じゃない ここは楽園じゃない
誰かの顔をうかがうだけの未来
楽園じゃない ここは楽園じゃない
いま向かうよ 私の Motherland
劣勢らにラブを

Motherland は英語で「母国」「祖国」という意味の単語。

X国の侵攻を受け、自由が奪われ、権力者の顔を伺うような未来にはなって欲しくない。海外でY国の危機を知った人々も戦うために帰る決意をした人もいる。劣勢が噂されるY国の窮状を救うため。

生まれた場所なんて知らない知らぬまま歩いてきたんだ
いつの日か夜汽車に乗って何処にも帰れなくなった
あなたへの怒りや苦痛もさぞかし立派な燃料になると
前を向ければ私は天国にいけますか

戦争が始まるまでは、そこまで「国」を意識することはなかった。しかし戦火を逃れるために列車で隣国に逃げた友人は帰ってくることができない。ここの「あなた」とはX国の大統領のことだろうか。X国の大統領への怒りが燃えたぎるが、祖国を守るために戦って死んだのなら地獄ではなく天国に行けるだろうか。

情状酌量の余地無し
うっせえわじゃ済まない現実
若さ故の過ち 片付く哀しい道化師
ロンリーロンリーと鳴いて
ホームシック シック シックと泣いた
あの日の夜汽車も
相乗りできる人がいたら

X国大統領は侵攻を正当化するが、その理屈にとても情状酌量の余地はない。しかし、それを糾弾したとて、Y国にとって攻めてくるX国の軍隊の力が弱まることはない。孤立無援のY国にも、相乗りして戦ってくれる国があれば…。

ゲームオーバーなんて認めない
カンテラを灯す トンネルの先に
心臓尽きるその日までは
温もり失くした薄い毛布みたいな
希望と水でやり過ごすんだ

力ある限り絶対に最後まで諦めずに戦い抜く。まるで出口の見えないトンネルのようだが、勝利を掴むまでの道は厳しいがどんなに辛い戦いもやり抜こうという意思だろうか。

楽園だろう そこは楽園だろう
歌い踊る 液晶の檻の中
ああいつまでいれるの?
見つけたんだ 私の Motherland
劣勢らにマルを
優勢らにバツを

遠い国で戦争が起きているのを画面越しに見ている人は、自分たちからすれば楽園のような場所にいる。彼らは、劣勢が噂されるY国を応援し、優勢が噂されるX国に抗議している。

劣勢らに明日を

Y国は今のところ劣勢だが勝利を信じて最後まで戦い抜く。




勿論、これは「こういう解釈もできる」という1つの提案だ。「マザーランド」の歌詞はスポーツ選手の苦悩を綴った歌であると解釈する方が標準的だろう。戦争をテーマにした曲だと解釈することはひねくれたことだとは思う。この解釈を読者に押しつけるつもりはない。

また、冒頭でも断ったように、筆者はいかなる理由でも戦争には反対だ。

そしてもちろん、Adoさんのこの曲を汚そうとか、そういう意図はないので、そこはご理解頂きたい。

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