見出し画像

【週刊プラグインレビュー】Destructive Lo-Fi特集

『攻めまくっちゃってください』
『このセクションはぶっ飛び系で』
『Remixの勢いで』

というリクエストをいただいた時、こんな感じでぶっ飛んでやるー!とは思うものの、「脳内で想像できている時点でそれってぶっ飛びじゃ無いじゃん。想像の範囲内の音じゃつまんなくね?」という自問自答の壁にぶち当たる時があります。

特に時間が限られている場合やパターンを出さないといけない場合は難題です。楽曲の主題じゃないんだけど、しっかり遊ぶとこは遊ばないと楽曲にメリハリが生まれなくてダサい。しかしアイデアが自分にない!!!みたいな。

そういう時に頼れるのが原音を破壊してくれるエフェクト群。
自分でゼロから構築するのではなく、プラグインが持つパワーに頼ってアイデアを模索するのも大事な一手だと思います。

今回は、自分がそんな場面で利用するエフェクトの中でもローファイ系に絞り、「Destructive Lo-Fi」と銘打って4つのプラグインを紹介していきます。


Yum Audio / Lo-Fi Playtime

その名の通り時間と遊ぶことができるプラグインです。
非常に良いネーミング。

簡単に言えば、スピード・ピッチ・経年劣化・周波数バランスをいじれる2つのテープディレイが搭載されたエフェクトです。

基本はインサートした音声がシリーズ接続された2つのテープヘッドによって加工されますが、右下のSpreadつまみを使用することによって、
1台目をL、2台目をRに使うDual Monoとして駆動させることも可能です。

機能

[Tape Speed]
Slow / Normal / Fast の3種類から選択できます。
Slowにすると入力音に対してオクターブ下の音が生成され、Fastにするとオクターブ上の音が生成されます。Normalは原音ママ。
ここで生成されたサウンドに対し、ディレイやテープサチュレーション等を加えていくのがこのエフェクトの柱になります。

[Feedback][Basetime]
通常のディレイユニットと同じようにBasetimeで指定した時間の周期でディレイが生成されるので、その回数をFeedbackで制御します。
左側のFreezeをONにすることで無限回リピートさせることも可能です。

[Reverse]
その名の通り逆再生したサウンドをテープヘッドに送り込むことができます。
逆再生の周期はBasetimeで決定します。

所感

個人的にこのプラグインの肝は[Reverse]と[Freeze]にあると思っています。
単体のディレイプラグインよりもナチュラルなテープディレイサウンドをしているので、生成されるディレイは悪目立ちしないし、Reverseしたサウンドも不協和音にならないように気をつけて使えば案外気持ち良くて、浮遊感を与えてくれます。

Mixフェーダーを使ってパラレル処理をしても、位相がシュワつかないのも評価できるポイントです。
Lo-Fi系やスピーカーエミュレート系は、ガッツリ歪むしコンプもかかるのでパラレルにすると位相が崩れるものが多いのですが、基礎設計がしっかりしているのかその辺の心配は無用です。
出せる音は気が狂っているが、そもそも根は大真面目で、アナログテープを研究しまくってデジタル世界に蘇らせてる感じ。

複数のシーケンスが重なってダンゴ状になって見えにくい時や、カオティックなセクションがあったときによく使用します。
Freezeを使ってボーカルやスネアを無限回繰り返しつつ、ディレイタイムを早めていくことで、ビルドアップみたいなフレーズも作れます。(BOSS Space Echoに代表されるアレ)

セクションに合わせてMixの%を上げていくオートメーションを書くのもオススメです。耳は連続的な変化に疎いので、ソロ前やリイントロに向けて仕掛けてくと効果大です。
もやもやっとさせておいて一気にミュートするとか。

ドラムに何かフレーバーを加えたい時に、キットマイク等にうっすらかけても結構うまい感じに混ざってくれるし、何が起きているか絶対にバレないのに浮遊感とキット全体の密着感が出てGoodです。


Aberrant DSP / Sketch CasetteⅡ

4トラックカセットレコーダーをモデルとして作られたプラグインです。
モデル元は12種類のカセットから選択出来て、先程のplaytime同様、経年劣化のシミュレートであるageを調整して、ローパスフィルターをかけることができます。

機能

[Age]
選択したカセットテープに合わせて、経年劣化した際の高域減衰(≒ローパスフィルタ)をシミュレートしています。
[Dropout]と組み合わせることで、音飛びが発生して、実機のカセットテープレコーダーにダビングしたかのようなリアルなカセットサウンドを得ることができます。

[Wow + Flutter]
再生速度が一定でないモーターのサウンドを再現して、ピッチの揺らぎを生み出します。
揺らぎはLFOでコントロール可能で、テンポシンクもできます。
[FM]=Flutter ModulationをONにすると、テープの粘着やバッテリー切れなど奇想天外なサウンドメイクも可能です。

[NR Comp]
テープヒスノイズを低減するために搭載されたエンコーダーとデコーダーを誤用してしまった際に発生する高域のブーストとコンプレッションを再現したスイッチ。ドルビーの誤用に近いです。
上下方向にマルチバンドコンプをかけたような質感が特徴です。

所感

ここから先は

4,283字

¥ 150

よろしければサポートお願いします。 いただいたサポートはnote運営や音楽機材の購入・研究に充てさせていただきます。