見出し画像

ゴリゴリ超訳 JZ Microphones 「Music Recording & Production」

先日、JZ Microphonesからセールの情報がメールで届き、
HPを確認していたところ「Music Recording & Production」という電子書籍はもうダウンロードしたかい??とのポップアップが。
良さげなタイトルだし、無料ならもらっておくか〜程度で読み始めたのですが、予想に反して基礎的かつ不変的な価値をもった制作に関する情報の詰め合わせで、ガッチガチに硬派な内容でした。信頼できるやつです。

これから音楽制作を始める方にも、制作の中で壁にぶつかっている方にも、ベテランの方にも、共通して気づきを与えてくれる素晴らしい内容でした。
自分も新たな発見がありましたし、惰性で作業している部分を見直すきっかけになりました。

是非みなさんにも一読していただきたいので、前半部分をゴリゴリの超訳で紹介していきます。

原文は以下から手に入ります。
(HPを見ているとポップアップしてくるようです。直リンクは見つけられていません)

今回は文章量の関係から割愛していますが、
後半は具体的なレコーディング時の持ち物の紹介、楽器ごとの録音方法の紹介、ジャンルごとの制作におけるティップスなどが続きます。
こちらもかなり濃い内容になっているので、気になった方は是非。

毎度拙い英語力ですので、誤訳等ある場合はコメントで教えてください。

では、早速行ってみましょう。



まえがき

焦りや盲目的な欲望が、成功につながることはまずない。
特に音楽制作の過程ではそうだ。
クリエイティブなアイデアを形にしようと思ったら、確かな手腕と知識が必要になるでしょう。

本書では、10年以上にわたって業界をリードするプロフェッショナルたち、協力してきた私たちのベストパートナー、経験豊富で数々の賞を受賞しているサウンドエンジニアやプロデューサーからのアドバイスをまとめ、スタジオで望ましい結果を得るための試行錯誤の方法を明らかにしました。

マイクのセッティングからファイナルミックスの磨き上げまで、レコード制作のあらゆる段階を深く掘り下げ、その心理や人間模様についても触れています。
これからレコーディングを始める方には、わかりやすいアドバイスとインスピレーションの源となることでしょう。
また、ベテランのプロフェッショナルの方々も、一つや二つのコツを学ぶことができるはずです。

JZ Microphonesは、知識はできるだけ頻繁に共有されるべきだと考えています。音楽ビジネスで夢を追いかけるすべての人に、この本を捧げます。

『お金やコネ、運だけでは成功しないことを知っておいてください。私たちの最も貴重な財産は、好奇心と献身と冒険心です。』

JZ Microphones founder Juris Zarins (1952 - 2017)

1.はじめに


1.1  初心者が制作を始めるには

オーディオの制作や録音を始めたいけれど、何を買えばいいのか、どこから始めればいいのか、よくわからないというあなた。それで大丈夫です。



インターネットのフォーラムでは、あなたに特定の機器や特定のDAWが必要であると書き込まれているかもしれませんが、それはもちろん、すべて嘘偽りです。
以下にいくつかのポイントを挙げます。

・
DAWを選び、それに従う

DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)は、レコーディングの主なインターフェースであり、ほとんどの時間をそれと共に過ごすので、どのDAWを使用するのかは難しい選択になります。


インターネット上での議論がどうであれ、「究極」のDAWというものは存在しません。すべての主要なDAWは、どれもパワフルで機能豊富です。
どのDAWを選んでも、効果的な使い方を学べば、十分に役に立ちます。
Pro Tools、Cubase、Logic、Studio One、そしてReaperはすべて、信じられないほど機能豊富なシステムであり、どれも良い選択となることでしょう。



どのDAWが一番好きかを知るには、試用版をダウンロードしてチェックしてみてください。一番良さそうなものを選び、それをよく学びましょう。
どのDAWにも、あなたの基本的なニーズをすべてカバーするプラグインが搭載されているので、最初から高価なプラグインの束を手に入れる必要はありません。

・最高のインターフェイスを手に入れる

良質なコンバーターがあれば、録音されたオーディオはより高品質になり、ドライバーはより安定し、モニタリング時に便利な低レイテンシーが得られるので、作業が楽になります。


ハードウェアを選択する際は、現実的に考えてください。フルドラムキットを録音しないのであれば、一般的に2つ以上の入力は必要ありません。
この場合、同じ値段で8〜20チャンネルある粗悪なインターフェイスを買うより、本当に良いチャンネルを2つ持つインターフェイスを買う方が理にかなっています。
Universal Audio、Apogee、RME、Audientが優れた2チャンネルのハードウェアを作っているので、チェックしてみてください。

・オールマイティなマイクを手に入れる

ボーカルやアコースティック楽器、ギターキャビネット、場合によってはドラムまで、幅広い音源の録音に適したマイクロホンが、制作を始めたばかりのうちは必要でしょう。

低予算の場合は、Shure SM57のようなダイナミックマイクを選択することになると思います。

一方、エントリーレベルのラージダイアフラムコンデンサーマイクは、これらのタスクの全てを、より繊細かつ洗練された方法で処理することができます。

コンデンサーマイクは一般的に少し高価になりますが、それだけの価値があります。JZ MicrophonesのV11は、素晴らしい価格で優れたオールラウンダーですので、ぜひチェックしてみてください。

・部屋の調整をする

時間をかけて室内音響の基本原理を調べ、ロックウールやファイバーグラスのパネルを入手または作成し、主な反射ポイントに設置します。
 


これらのパネルは、自分で作れば非常に安く手に入ります。インターネットには、あらゆる予算でパネルを作るためのDIYガイドがたくさんあるので、それを参考にすればよいでしょう。
“DIY acoustic panels”でググると、たくさんのプラン、アイデア、設置方法などが見つかります。


※発泡スチロールは高音域だけを吸収してしまうので、デッドで響きが変な部屋になってしまい、録音やミキシングもしにくくなります。

いくつかのパネルをセットアップしたら、それらを動かして、どのような音が一番良いかを聞いてみましょう。
まずは、一次反射点と部屋の角から始めましょう。一次反射点は、鏡で簡単に見つけることができます。ミキシングポジションに座り、友人に鏡を持って壁際を移動してもらいましょう。鏡に映ったスピーカーが見える位置が、処理すべき 反射ポイントです。

・タダで仕事をする

基本的なセットアップが完了したら、自分が提供できるものを紹介するために、いくつかレコーディングをしてみましょう。



あなたが自分で音楽を演奏する場合は、いくつかのデモを録音し、あなたができる限り良い音でポートフォリオを構築し始めることができるようにしましょう。

他の人と仕事をする自信がついたら、無料または非常に安価でいくつかのトラックを提供してみましょう。
その際、良いミュージシャンを選びましょう。演奏者が素晴らしければ、レコーディングの音は格段に良くなります。できる限りのことをすれば、プロデューサーとしての名声を確立できるはずです。

・オンラインフォーラムや教育機関に参加する

インターネット上には、それほどお金をかけずに世界のトッププロデューサーから学べる、非常に優れた教育リソースがたくさんあります。これらのサービスのほとんどは、一般学校の費用と比較すると安価で、月20〜40ドルから始まるサブスクリプションを提供しています。


これらのサービスのほとんどは、あなたが質問をし、その答えを得ることができるフォーラムを提供しています。



献身的な努力によるあなたの進歩が、あなたが望むよりも遅く感じても落胆しないでください。
ただ、研削(身を削るような努力)を維持すれば、あなたは間違いなく成功するはずです。


1.2 初めてのスタジオ設立

「千里の道も一歩から」とはよく言ったもので、自分の未来に近道をすることはできません。これは基本的に人生の何にでも当てはまります。


すべてのスタジオは、地下室やベッドルームで始まり、すべてのプロデューサーは、大して良くない音と音楽から制作を始めるものです。

今日よりも音楽を作り始めるのに最適な時期はありません。
情報量は日に日に増え、機材は誰でも手に入るようになってきています。

ここでは、音楽業界で働くための第一歩を踏み出すために必要な、基本的な必需品をご紹介します。

・コンピュター

テープデッキ、ミキシングコンソール、ラックなどの機材に代わって、現代の制作ワークステーションの中核となるのがコンピューターです。

これを読んでいるあなたは、おそらくコンピュータを所有しており、それは少なくとも2、3のトラックとプラグインを使った軽いセッションを処理するのに十分な性能を持っていることでしょう。


コンピュータを買おうとしているのなら、自分のリソースを最大限に活用するために、優先順位をはっきりさせる必要があります。パソコンを購入する際に重要なのは、予算、携帯性、パワーです。人それぞれ、状況に応じた具体的なニーズがあるので、一概にこれという答えがあるわけではありません。ここでは、いくつかのアイデアを紹介します。



最小限の費用で最大のパワーが必要で、マシンを携帯する必要がない場合は、前世代のパーツを使用してしっかりカスタマイズされたPCを購入するか、単に中古のものを購入します。

Macも同様で、中古のクラシックアルミタワーMacを手に入れるのも悪くないでしょう。新品の頃は怪物級でしたし、オーディオソフトもそれ以降、それほどパワーアップしていません。

新しいものが欲しいなら、整備済のMacを見てください。良い整備済iMacは、素晴らしいディスプレイと合わせて十分なパワーを与えてくれます。



もし、パワフルなポータブルリグが必要なら、かなりの出費を覚悟してください。ハイエンドのラップトップに関しては、PCとMacの価格差はあまりありません。スペックの細かな違いは、高級機の分類に入っていれば、あまり重要ではなくなります。



安いノートPCをお探しなら、スペックの高い旧型の非Retina MacBook proを選ぶか、最新のPC用ノートPCを手に入れましょう。MacBook Airや12インチMacBookは、その価格に見合うだけの性能はありません。

過去5年間に発売されたほとんどのミドルレベルコンピュータは、一般的に仕事をするのに十分な性能を持っていると言わざるを得ません。
DAWにおいては、RAMを大量に消費するようなバーチャル・インストゥルメントを使用しなければ、それほど重い作業量にはなりません。

また、SSDドライブを導入すれば、ワークフローが劇的にスピードアップします。コンピュータの応答性を格段に向上させる最高の方法です。

・デジタル・オーディオ・ワークステーション

DAWを選び、それを学ぶことは、この音楽制作という旅全体において、避けて通れないステップです。それは言語のようなもので、知れば知るほど、さまざまな場面で生活がしやすくなります。
 


どのDAWも同じように聞こえますが、あなたは1つを選んで行く必要があります。コツは、操作方法に関する知識の欠如によって、音楽制作が制限されないよう、1つを選んで徹底的に学ぶことです。



もし、あなたがプレミアムDAWを手に入れるために多くのお金を払うことに興味が無いのであれば、Reaperを選ぶとよいでしょう。世界的なスタジオに行って、巨大なコンソールで作業できるようになりたいなら、ProToolsを学びましょう。大量のトラックを管理する必要がある大きなスタジオと緊密に統合されているので、今でも一種の業界標準となっています。

もしあなたがもっとモダンで洗練された「in the box」(制作をPC内で完結させること)アプローチを望むなら、Cubase、Logic(Macのみ)、Studio Oneをチェックしてみてください。これらは最も有能なDAWの一つで、大量の楽器、ループ、サウンドが含まれており、プロジェクトを開いてから数秒で制作を開始できるようになっています。

・オーディオインターフェイス

再生やレコーディングのたびに、この機器にオーディオを通すことになります。ドラムの録音を除けば、ほとんどの場合、一度に2つ以上のチャンネルを必要としません。ギター、ベース、ボーカル、パーカッションはすべてこのカテゴリーに属します。
この場合、同価格の8チャンネル・ユニットよりもはるかに優れたプリアンプとコンバーターを備えた、優れた2チャンネル・インターフェイスを購入することの方が理にかなっています。


通常、高級な小型インターフェイスで、ドラムをトラッキングする必要がある場合、コンバータを追加して入力数を少なくとも8つ拡張する必要があります。この場合、オーバーヘッドマイクは最高品質のインターフェイスに接続するようにしてください。



お金をかけないコツとしては、ADAT経由で安価なユニットで拡張するのがよいでしょう。メインのトラックを高性能のプリアンプに接続し、安価なものをユーティリティトラック(トリガー、追加のルームトラック、いずれはサンプルで置き換えたり補完したりするマイクなど)に使用します。


最新のUSBまたはThunderboltインターフェイスを購入すれば、必要なものはすべて揃いますし、ほとんどのメーカーが十分な製品を提供してくれます。もし、今後何年も使えるような高品質のインターフェイスをお探しなら、RME、Universal Audio、Audientをチェックしてみてください。
これらはすべて、輝かしい評判、素晴らしいビルドクオリティ・ドライバーを持っています。


・モニタリング

自分のしていることを正しく判断するためには、モニターやヘッドフォンのセットが必要です。

もちろん、可能な限りハイエンドな機材を手に入れるのがベストですが、常にその機会があるわけではありません。どんなモニターを持ったり購入したりしても、それらを適切にセットアップすることが成功への鍵となります。

スピーカーのセッティングには、昔からある正三角形のトリックが非常に有効です。リスニングポジションにある2つのスピーカーと自分の頭が正三角形(すべての辺の長さが等しい)になるように設置することです。こうすることで、推奨される位置に座ることができ、位置がある程度均等に近くなります。

スペースに余裕がある場合は、周波数特性を改善するた めに、スピーカーの背面と壁との間に少しスペースを空けてください(60cmほど)。

制作とミキシングにスピーカーを使用する選択肢がない場合、ヘッドフォンを使用することができます。ミキシングには、比較的フラットな周波数特性を 持つオープンバックのヘッドフォンが適しています。Sennheiser HD600、Beyerdynamic DT880、AKG K240などが一般的な選択肢です。


・ルームトリートメント

反射が激しく、ミックスが実世界に反映されないような鳴りをしている部屋は、本当に苦痛です。
少なくとも、最初の反射ポイントに音響処理を施せば、ルームアコースティックをきれいにするのに非常に役立ちます。あまり効果のない発泡スチロールのパックにかけるのと同じ金額で、既製のロックウールパネルを注文して壁に掛けることができます。
(なので、無意味なことにお金をかけるのはやめよう)

特に器用で道具があれば、ロックウールの大きさに合わせて木枠を作り、ロックウールを枠に投げ入れ、通気性の良い布で包めば、自分でパネルを作ることができます。この方法は、既製品のパネルと同じ効果を持ちながら、わずかなコストで実現することができます。

・マイクロフォン

音を出すための準備がすべて整ったら、あとひとつだけ足りないものがあります。それはマイクです。初めてマイクを購入する場合、できるだけ汎用性の高いものにしたいのであれば、ラージダイアフラムコンデンサーマイクを購入することを検討してみてください。


JZマイクロフォンV11は、アコースティック楽器、ボーカル、アンプなど、あらゆる場所で素晴らしいサウンドを発揮するため、最初のマイクとして最適です。ボーカルを録音する際には、Prossive(破裂音)がカプセルに当たって音が歪むのを防ぐために、ポップフィルターを使用することを忘れないでください。



オールラウンドに使えるマイクを購入したら、スタジオの定番であるShure SM57やSM7Bを1本購入しても決して損はありません。これらのダイナミックマイクは、あらゆるもの、特に楽器によく合い、レコーディングをより多様に聴かせる音色を提供することができます。
また、非常に信頼性と耐久性に優れており、「SM57で釘を打っても壊れない」という言い伝えがあるほどです。                                         

・アウトボードギア

プラグインが進化して、アウトボードギアを完全に置き換えることができるようになりましたが、ラックに収められた実機のようなセクシーな雰囲気やルックスはありません。アウトボード機材は、アナログの温かみをトラックに加えることができ、クライアントを喜ばせることができるのは言うまでもありません。

アウトボード機器を購入する際は、まず、様々なトラックで使用できるものを購入し、コストパフォーマンスを最大化するようにしましょう。良いプリアンプのペアなどは、文字通りあらゆるものを通してトラックすることができるので、トーンのオプションの選択肢に加えるには良いものでしょう。

優れたバスコンプレッサーは、全体のトーンにはあまり影響を及ぼさないかもしれませんが、ミックスに動きのある次元を追加することができます。



500 シリーズのランチボックスラックは、アウトボードユニットを揃えるのに最も費用対効果の高い方法と言える でしょう。これらのラックはコンパクトで、すべてのユニットに統一された電源を提供し、フルサイズの代替品よりもはるかに安価です。

もちろん、この形式(500シリーズのような単一電源に複数ユニットを接続する形式)は音が良くないと言う人もいますが、彼らの主張が正しいという証拠はありません。それぞれに電源がない分、いろいろな規制が無くなり、製造コストが安くなっているという話です。


・プラグイン

プラグインは非常に厄介なものです。プラグインは、あなたが"存在することさえ知らなかった問題"を解決することができると、あなたを説得しようとします。プラグインの開発者は非常に多いので、彼らの製品は、実は同じコンセプトの異なる解釈であることがほとんどです。
自分自身の見直しを行い、あなたが本当に必要なもののリストを作成することで、基本的に同じものを二度買ってしまうことは無くなるでしょう。


オンラインでお得な情報をチェックするのも手です。
お得な情報をチェックするためのウェブサイトがありますので、あなたがすぐに手にして使用する必要がある超重要なものでない限りは、お得な情報を待つのが賢明です。

プラグインのサブスクリプションも大金を費やすことなく、膨大な量のプラグインを取得できる素晴らしい方法と言えます。
多くのメーカーが月10ドルからサブスクリプションプランを提供しています。
また、 サブスクリプションの他の素晴らしい点は、いつでも好きなときにキャンセル・再契約をすることができる点です。

・中古機材購入

中古機材の購入は、楽器店の表示価格の何分の一かで良いものを取得する優れた方法ですが、まず第一に、あなたは良い取り引きのために、今探しているものについて知識を深める必要があります。

例えば、「安価な模造品を見分けるために何を探すべきかを知っておく」。
模造品はあなたに多くの悲しみを与えます。人気のあるマイクは、しばしば中国で "クローン "が生産され、非常に安価で販売されています。
Shure SM57は、この点で最も人気のあるマイクの1つです。

偽物のギアを見分けるポイントはあるので、できる限り知っておくようにしましょう。その商品の弱点(模造品と判断できるポイント)がどこにあるのか、売っている人に会ったらまずそこをチェックできるようにしましょう。やはり知っているに越したことはないですね。

機材を購入する際には、社交性が非常に重要です。
もちろん、技術的な知識は必要ですが、街で一番高い機材で買おうと思ったら、社交性を駆使して商品を勝ち取らなければなりません。

交渉するときは、売り手を低く評価してはいけません。
機材の状態・出品されてからの期間などに基づいて、公正な価格を提示しましょう。

売り手があなたのオファーを受け入れない場合もありますが、それも尊重すべきです。あなたが親切でオープンな人であれば、交渉のチャンスも増えるでしょう。


・ゴミを減らす

少し厳しく聞こえるかもしれませんが、これが現実です。私たちは、基本的に役に立たないゴミにあまりにも多くのお金を使いすぎています。チョコレートバー、ピザ、飲み物、タバコなどは氷山の一角にすぎません。

一ヶ月の間に、必要でないものにいくら使ったか、計算してみましょう。
一見安っぽく見える小さなものが、積み重なるとどれほどの金額になるか、驚くことでしょう。おそらく、1カ月で数万円に達します。
泣きたくなければ、それを1年で掛け算してはいけません。


あなたの「余裕」は、実はあなたが快適な生活を送る毎日の習慣によって、奪われているのです。
逆にこれに気づければ、あなたがより健康的な生活を送り、あなたのミックスをワクワクする音にするものをより多く買うことができるようになります。まさにWin-Winです!


1.3 The Recording Studio Toolbox 割愛
※ 録音するときは、替えの弦やドラムヘッド・ダクトテープを持っていくと便利だぜ!みたいな話


1.4 現代のオーディオ制作における神話

現代のオーディオ制作の世界は魔法のような場所です。オーディオ関連の情報源は無限にありますが、これは同時に、その情報の一部が実際には有効なアドバイスでない、あるいはまったく真実でない可能性があることを意味しています。

ここでは、一般的な知識として出回っている、よくある誤解をいくつか紹介します。

・いい音で音源を作るには、高価な機材が必要

高価な機材には魔法のようなサウンドがあり、洗練されたサウンドを得るために必要なものであるかのように思われます。


もちろん、コンピュータやモニターなどの基本的な機材は揃える必要がありますが、1176やディストレッサーなどの高級な機材がなくても大丈夫なのです。

「そのような機材がミックスに使われたら素敵でエキサイティングでしょうか?」 - もちろんです。
「平凡なミックスを完璧にすることができるでしょうか?」 - 絶対にあり得ません。

最も貴重な機材は、あなたが既に持っているもの、つまりあなたの耳なのです。もし、あなたのミックスが十分にプロフェッショナルなサウンドでないとしたら、それは恐らくあなた自身が原因でしょう。

・特定のDAWは、他社製品より音が良い

インターネット上では、あるDAWは他のものより優れている、さらには同じ音は出せないという議論に溢れています。すべてのDAWが同じように作られているわけではありませんが、一般的にDAWにはそれ自身の「音」がないので、あなたがReaper、Mixcraft、Pro Toolsなどを使っているかどうかは問題ではありません。

確かに、それぞれのシステムは異なるワークフローを持ち、最終的に異なるサウンドのミックスを生み出すかもしれませんが、それでDAW自体のサウンドが良いとか悪いとかいうことは、定義できません。


一番大事なことは、自分の好きなDAWを選んで、それを徹底的に学ぶことです。必要な機能を知り尽くし、使いこなすことで、最高のサウンドを手に入れることができるのです。

Reaperでうまくミックスされた曲は、下手なPro Toolsミックスに勝るとも劣らないでしょう。主要なワークステーション以外のものを使っていても、がっかりしないでください 。
DAWは、オーディオファイルを扱う為の単なるホストアプリケーションに過ぎません。

・ミックスでなんとかなる

テクノロジーがより強力になるにつれ、平凡な、あるいは弱いパフォーマンスを、許容できるテイクに仕上げるために編集することが、簡単で誘惑的になっています。
時には、演奏から魅力を引き出すのに有効な手段ですが、たいていの場合、修正作業は私たちを怠惰にし、より無知にしていきます。


ドラムを完璧にオンタイムに、ボーカルを完璧にチューニングすることはできても、演奏にパワーやエモーションを加えることはできません。
古いレコーディングに人々がより反応するのは、実際の人間的な要素、つまり素晴らしい演奏と素晴らしいレコーディングのテイクに、人間の小さな「欠点」があるからなのです。

オーディオファイルに対して行うあらゆる処理は、音色に影響を与えるということを心に留めておいてください。ピッチ補正ソフトには、訓練された耳で識別できる、ある種の音のキャラクターがあります。


古い録音には欠点がありますが、それでも彼らはできるだけきれいにテイクを録音しようとしました 。今日でも私たちは同じことを心がけるべきです。修正するためのツールは、数パーセントのプラスアルファを得るための最後の解決策と考えるべきで、アーティストが彼ららしい音を出すためのものなのです。
ソフトウェアはあなたに偉大な力を与えてくれますが、それを乱用してはいけません。

・ヘッドホンだけでもミキシングできる

ノートパソコンで仕事をする人が多いので、時々ヘッドホンでミキシングすることは避けられません。しかし、ヘッドフォンにはスピーカーシステムのような自然なクロストークがなく、ステレオイメージが非常に分離してしまうという限界があります。

ヘッドフォンで多くの作業をするエンジニアもいますが、スピーカーも使います。ミックスの参考になる聞き方は、多ければ多いほど良いです。

ミックスがヘッドフォンで行われている場合、実際の現場ではあまりうまくいかないことが多いです。また、どのミックスがヘッドホンだけでミキシングされてしまったかを見分けるのも非常に簡単です。(それだけ特異なサウンドになってしまうということ)

・パラレルプロセッシングが成功の鍵

これは、オンラインレコーディングコミュニティで今最も話題になっているトピックの1つです。パラレル・コンプレッションは、私たちが日々直面しているミキシングの問題に対する解決策であるように思われます。

「ドラムが良い音で鳴らないんだ。」
 - おそらくパラレルコンプレッションが必要だ。

「ボーカルトラックが弱々しく聞こえてしまう。」
 - それはパラレル・コンプレッションが無いからだよ。

このような会話は、ミキサーが具体的にどのような問題を抱えているのかわからないのに、ネット上で毎日のように繰り広げられています。



パラレルプロセッシングは、ドラムのパンチやサスティーンを増すことはできるかもしれませんが、悪いミックスを修正する魔法のソリューションと見なすべきではないでしょう。

ドラムの音が悪い場合、パラレル・コンプレッションを行うと、その悪い音色が潰され、元のドラムとミックスされたときに、よりはっきりした悪い音になるだけです。

決してパラレル・コンプレッションが悪いというわけではありません。
しかし、EQやボリューム、通常のコンプレッションと同様に、あくまでツールに過ぎません。ただ音がかっこいいから、今トレンドだからという理由で使うのではなく、なぜそのツールを使えば最高の結果が得られるのか、明確なビジョンを持って使うべきでしょう。


以上、超訳終了。
CHAPER2 Recording 以降割愛。




私的蛇足

内容いかがだったでしょうか。
個人的に共鳴する部分が多く、自分が普段制作始めたての方にアドバイスすような内容が簡潔にまとまっていたので、嬉しかったです。
英語というハードルはありますが、後半の内容も素晴らしいし無料なので、いろんな方に読んでもらいたいなと思いました。
こういった経験に基づく知識を公開してくれる企業に感謝。

ここから先はJZ Micropohonesは一切関係なく、個人的にこの本を読んで追記したい部分 a.k.a. 蛇足 があったので、つらつらっと書いていきます。

・DAW / インターフェイス の選び方

基本的に本書に賛成です。特にDAWは無料版が大抵存在しているので、まずはそれで作業してみて、操作性や見た目から選んでもいいと思います。
作業時のテンションに直結するので、見た目結構大事です。
好きなアーティストがどのDAWを使っているかで決めちゃっても良いと思います。

インターフェイスに関しても同意。
将来的にマルチで録音したいなら入力数が必要だし、人を家に呼んでボーカルレコーディングをしたいのであれば、2Mixに加えてボーカル・クリック等の単独モニタリングができるように多数のアウトプットを備えたインターフェイスが必要になります。
ソフトウェアアップデートで内部の性能が良くなっても、こういったハード面の改良は、本体を買い換える他ないので、迷っている方は「自分が何をやりたいのか」「それに必要な入出力数はいくつなのか」から考えると良いと思います。
生音の入力が必要なければ、インターフェイスじゃなくてDACでもいいですしね。

・タダで仕事を請け負うことの欠点

本書唯一同意できないのは「駆け出しの頃はタダで仕事請け負いましょう」という部分。
金銭・もしくはそれと同等の価値(お互いのスキルの提供など)のやり取りがない仕事って何が悪いかっていうと「お互いの緊張感がなくなる」ことに尽きます。
クライアントもタダだから強く出ることができず、リクエストやリテイクのお願いをしづらくなるし、エンジニアもタダだから時間をかけたり、こだわりを持つことに億劫になります。締め切りや最終的な目標もなぁなぁになりがち。
金銭という分かりやすいリスクの存在しない仕事は、緊張感がなくなって、プロダクトが最終的にクソになっちゃうんです。どうしても。

学生だからとか、まだ初心者だからとか、理由づけは色々できるんですけど、その甘さがクソプロダクトを作る原因になるし、将来的に自分のスキルを安売りすることがクセになってしまうので、1円でもいいから仕事は有料で請けましょう。

・オンラインフォーラムのススメ

私はMix With The Mastersを始めとして、複数のオンラインフォーラム、オンラインレクチャーのサービスに登録しています。
年間数万円のコストがかかりますが、正直一曲のギャラぶち込めば全然ペイはできますよね?
それだけのコストで海外のトップランナーのテクニックや考え方が学べ、同業者と意見交換ができるわけです。英語がわからなかったとしても動画見て、音聞けば分かります。自分の今の実力も俯瞰できます。

無料のYouTubeと違って有象無象の意見ではない、正しく信頼のおける情報が手に入るというのも大きなポイントです。
何事も独学には限界があります。悩んだときは先人の教えに従って守破離を行ってみてはどうでしょうか。

・特定のプラグインがなければミックスができないという幻想

先日、ネットの情報に踊らされて「Ozoneを手に入れなければプロのサウンドにはならないんだ」と強迫観念を抱き、バイト代をはたいてOzoneを購入した結果、生活費が足りなくなってしまった学生の話を聞きました。
最悪です。

本書にも書いてあるとおり、現代のDAWには一般的なプロダクトに必要とされるプラグインは一通り揃っています。OzoneもiZotopeの視点でそれらのベーシックなエフェクトを作成して、モジュールとして使えるようにした複合ツールなだけです。構造は変わらないです。それ自体は魔法でもなんでもありませんし、無いとプロのサウンドにならないというのは嘘です。

高価なプラグインを買い漁ったり、ウルトラCなプラグインテクニックに溺れる前に、まず考えましょう。
そもそもボリュームとパンだけでミックスをまとめる力があるかどうか、付属のプラグインのプリセットを全部試すほどちゃんと使い倒してあげたか。
ツールではなく自分自身に問題があると俯瞰できているか。

パソコンやインターフェイスと一緒でただのツールに過ぎないので、それを購入・使用することが目的になってしまってはダメだと思います。

・機材の値段と音楽のクオリティが比例する

これもよくある誤解だと思います。
本書でも述べられているとおり、これに関しては全くの間違いだと言い切ります。

高価な機材でしか得られないサウンドや効果があるのも事実ですが、それが必ずしも「音楽的に良い」と言えるかは疑問です。良いか悪いかなんて、ただの主観で、その時に制作している音楽によって求められるサウンドは千差万別のはずです。

仮に「必ず良いと思われるサウンド」が存在するなら、全てのジャンルの機材が一つに収束すると思いませんか? でも現実そんなことないですよね。
場面によって求められる音が違うからです。

「この機材を使うと必ず音が良くなる」というのは誤りで「この機材を使うと必ず音に変化がある」ということだけが事実です。
その変化を良いと受け取るか悪いと受け取るかは主観の問題です。

前項に引き続きですが、うまくいかなかったことを機材のせいにしないで、自分自身の考え方や作法に誤りがないか俯瞰してみて下さい。



「ミックスでなんとかなる」「エディットでレコーディング時の欠点を補う」等に関しては、めちゃくちゃに書かないといけないことが多いので今回は割愛しますが、どっかでまとめようと思います。ポストプロダクションで変えられるものと変えられないものの違いを正確に理解することが大事ですね。

私的蛇足の章に関してはあくまで個人的な経験に基づく考えなので、
意見や感想ありましたらコメント等でお知らせください。
求む、活発な意見交換。

以上、久々の超訳シリーズでした。
「この資料最高じゃん!翻訳しなきゃ!」と思ってタイトルと序文だけ書きかけのnoteが大量にあるので、隙を見て成仏させていこうと思います。

あと「この資料よかったよー」とか「訳してくれー」みたいな情報あったら教えてください。何卒。



お知らせ

レコーディングエンジニアやってます。

レコーディング・エディット・ミックス・オンラインレッスン等、
全て5000円 / 時で承っておりますので、メール・DM等でお気軽にご相談ください。
Gmail / Twitter

担当した音源のプレイリストはこちらから

ひとつよしなに。

執筆継続のため、noteのサポートもお願いします。

よろしければサポートお願いします。 いただいたサポートはnote運営や音楽機材の購入・研究に充てさせていただきます。